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52 不穏な噂②

「ちょっと待ってくれ、まだ聞きたい話があるんだ」

「え、あ、はい、わかりました…」


 トコトコ戻ってきてまた椅子に座る雨笠さん。


「それで、私に聞きたい話と言うのは…」

「なんか先週の金曜くらいから俺に関する悪い噂が流れてるらしくて…何か知らないかなって思って」

「藍星先輩に関する噂、ですか…。これがそれなのかはわかりませんが、何股もしている人が先輩の学年にいると言うのは聞きました」


 …やはり噂は広がっているみたいだな…


「それ、俺に関するものでな…」

「え…まさか先輩、そういうことする人だとは…」

「話を聞け」


 今日一日、噂のことについて柊と一緒に話した内容をまとめて雨笠さんに説明した。


「…つまり、誰かが悪意を持ってその噂を流していて、それが誰なのか知りたい…と、そういうことですね?」

「そういうこと」


 雨笠さんとは先週初めて話した関係性ではあるが、それでも何か情報を持っている可能性があるなら縋りたいのだ。


「…先輩の言っていることが本当かどうかわかりません…ですが信用します」

「俺としてはありがたいけど…なぜ?」

「私は普段宵闇さんがクラスで話している様子をよく見ているんです…その時に、先輩のことを話している宵闇さんは本当に幸せそうなんです…だから、きっと大事にしてあげてるんだろうなって。そんな人が何股もするはずがないって、そう思ったんです」


 …あるまの教室にいる時の様子は、あるまの方から話すこともなければ、聞くこともなかった。だから俺自身、知る由がなかったわけなのだが、


「そっか、幸せそうにしてるんだ…良かった」

「それで、私もあんまり知ってる情報ってのはないですけど…それに私って陰キャですし…あんまり情報収集の面では力になれないと思いますよ」

「まぁ、なんかあったら教えてくれる程度で大丈夫よ」

「わかりました〜…それとあと…一つお願いと言ってはなんですが…」

「ん、何かある?」

「たまに、私の相談聞いてもらっても…いいですか?」


 なんだ、そんなことか、それくらいなら、


「それくらいなら全然大丈夫よ、あるまの用事があったらそっちの方を優先するけど」

「はい、それで大丈夫です。宵闇さんの方を優先してあげてください」

「じゃあ、今日はこれくらいで」

「あ!、あと…連絡先交換してもらえませんかね…?、ほ、ほら、相談聞いて欲しい時に連絡とか入れたいですし…」

「オッケー、LAINでいい?」

「はい、また聞いてもらいたくなったら連絡しますね」


 そうして図書館を出て家に帰ることにした、雨笠となんだかんだ一時間半も話していたらしい…宵闇は…流石にもう帰ってるかn…


「彼女を置いて女子とずっと話してましたね〜、これは浮気ってことでいいですかね〜???」


 いつものあるまらしからぬ丁寧な口調、いつもより低い声のトーン、そうして後ろからいきなり現れるその様子…そこから導き出される答えは…

 後ろを向いたら俺は死ぬ。


「誠に申し訳ありませんでした」

「口だけの謝罪の言葉で足りると思ってる?、これはキツいお仕置きが必要だよね〜、これは許されないよね〜」

「この俺の命を持って償います」

「待って!、死んじゃダメ!」


 最近なんとなくこういう時のあるまの扱いが分かってきたような、そんな気がするのだった。


 〜〜〜


「…さて、俺のことをよく思ってない人が噂を流しているのは想像がつく…」


 想像は付くのだが、俺自身が何かやったわけではないというのが正直なところである。


「となると…やっぱりあるま関連?」


 これまで何回か言ったことがあると思うのだが…、今のあるまは周りの目を、注目を集めるような優れた容姿を持ち、これまでたくさんの人に告白されている(と本人から聞いた)子なのだ…。もしかしたら自分は告白断られたのになぜあいつが…と逆恨みされて、それで事実無根な噂を流して…という可能性がある…まぁ実際のところどうなのかはわからない訳なのだが。


「でもその可能性が高いよなぁ…」


 この噂が出回っているままイブを迎えてデートをするのは…なんだか心残りを残したまま迎えるのは個人的に納得がいかない…。よし、金曜日までに絶対解決してみせる。そうすればきっと、デートも最大限楽しめるはずだから。

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