20 自分プロデュース
週末を迎えた土曜の昼、あるまとの待ち合わせの時間だ…と言うのも数日前…。
「なああるま、俺って頼りないと思う?」
「なんでそんな事聞くの?、みりは私の事をいつも助けてくれた、世界で一番信頼してる人なんだよ?」
「あぁ…いや、そういう意味じゃなくて…」
俺か学校でもあまり積極的に人と関わってこなかった人間だ、それゆえ印象も薄ければ信頼もない。そんな人間が学校の人気者と付き合ったとするなら…周りはいい顔をしないだろう…と言うことを話して、
「そりゃあまあ俺のことを頼ってくれるのはすごくありがたいし、これからも頼って欲しいと思ってる、ただ今のままの俺があるまの隣に立つのは、なんだか違う気がするんだよ」
「うーん、そんな気にすることないと思うけとな~」
「あるまは俺のことを好きって、そう言ってくれたよね」
「大好きだよ?、ずっと、ずーっとね」
「その大好きな人の為に自分を変えようと努力するのも、またいい事だと俺は思うんだ」
そう、俺は変わるんだ。あるまにも、周りの人にも、そして自分でも、自分という存在を、あるまの隣に立つ存在として認めてもらうために。
「だから…頼みがある」
「なんでも聞くよ」
「俺どう変わればいいと思う?」
「…あぁ、一緒に考えてってことね、分かった、みりが私のために頑張ろうって言ってくれるの、とっても嬉しいから。だからめいっぱい応援するし協力するよ!」
…という訳である。今日は事前に話したことを元に、"藍星みり"という存在を変えるための、そんな一日だ。
「まずねぇ、前髪が目元にかかってるとどうしても周りからの印象が悪くなっちゃう。自分じゃ知らないかもしれないけど、みりって顔カッコイイんだよ?」
「それは無い」
顔が良かったらとっくの前からモテてるに決まってるだろう、モテてないと言うことはそういうことだよ。
「いやね?、いくら顔が綺麗で整ってても、髪で隠れてたら一気に根暗な感じになっちゃうの、だからこう言うのは髪から変えなきゃ、他のところは後で見ればいいからね」
そうして美容院に連れていかれることとなったのだ。
店に入って受付するやいなや、あるまがスマホの画面を理髪師に見せて、
「こんな髪型でお願いします!」
「どんなやつなのか俺も教えて貰ってないんだけど」
「だいじょーぶ、結構考えるのに時間かかったけど、これがみりの顔を引き立てるのに一番の髪型だから」
「…信じるからね?」
自信満々なあるまを見て、なんだか、まぁ大丈夫だろうと思えた。
「それじゃ終わるまで他のお店ぶらついとくから~」
そうして店を出たあるま、さぁあるまが似合うと太鼓判を押したヘアデザイン、とくと見てやろうじゃないか。
…なんだかすごい恥ずかしいな…いや髪型自体が恥ずかしいとかそういう訳じゃない。ただ目元がばっちり出ちゃってるのがなんと言うか…慣れない。
「え、これが俺には似合ってるの!?、え、よくわかんない!」
「そろそろ終わったくらいかな…あ、居た!」
ちょうどあるまも来たようだ。
「あ、あるま!、ちょっと、なんというかこれ、ちょっと恥ずかしいんだけど!?」
「ふむふむ…似合うとは思ってたけど、思ったより顔の整い具合と相まって綺麗…これは…私の目利きが良かったってことだね!」
似合ってると言ってもらえるのはいいんだけど…やっぱり恥ずかしいよ!
「でもこれだけ顔が整ってるんだから…あとは化粧品類!」
「え、その辺って女性が使うものなんじゃ」
「メンズコスメって知らないの!?、今では男性もお肌に気を遣う時代だよ~、それに」
今はそんな時代なのか~、と思っていた所にあるまが、
「こんなイケメンで整った顔なのに、肌が荒れてたら意味ないじゃん!、ここは徹底的にやるんだよ!」
そうして手を引かれ化粧品の類いが売られてるコーナーへと駆け出すのであった。
「…この類いのやつは俺一切わかんないよ?」
「だも思った、から事前に全部調べてあります」
《悲報》あるまは有能なのに、俺は無能だった。
「みりの肌の感じだったら…これとこれと、あとこれ…お金は大丈夫?」
「あ、それは大丈夫、ここに来る過程で母さんに結構お金貰ったから」
「なら安心だね」
その後も色々な物を買い物かごに放り入れていく俺とあるま…あれ?、相当多いよ?、と彼女に聞いてみたら。
「男の人のはまだ少ない方だよ、女性の化粧用品の数はとっても多いんだからね?、これよりも」
確かにそういえば、あるまの家に行った時、ものすごい数の化粧品の山が部屋の一角に出来てたっけ。あの時も女性って大変なんだなって思った記憶があるのだが…
「この数あるものを使い分けるってかなり難しいのかなぁ…」
「慣れてくれば、そうでも無いと思うよ?」
「あらそう」
"慣れてくれば"か、絶対慣れるまで頭がこんがらがるんだろうなと思いつつ、早めに覚えるよう努力しようと決意した。




