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流星イカのあたりめ
珍しく夜半に目が覚めてしまった。
寝床に戻るには少し飢えがある。
何か食べたい。
ギィンバルドゥは食堂へ降りていくと、棚や保冷庫を漁った。
その手が固い何かを掴んだ。
引き抜くと、それは干物だった。
流星イカのあたりめ。
海で泳ぐ様はまるで流星のようだが、いまはふつうの干しイカだった。
表面がラメでコーティングしたようにキラキラしている以外は。
「これくらいがちょうど良いか」
ギィンバルドゥは干しイカを魔石コンロで炙り始めた。
イカの足が熱でくるくると縮む。
足の一本をちぎり取って口にいれる。
弾力があり、かみこごちが良い。
もう一本、二本と足の数が減っていく。
とうとう胴体だけになった。
イカの胴は細く裂いて足同様、しっかり味わいながら噛みしめた。
「たまには、夜食も良いな」
ギィンバルドゥは満足して、寝床へと戻っていった。途中、歯磨きは忘れなかった。