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銀月海老のアヒージョ
時は十二時を過ぎたころ。
白の都の伯爵家の台所で、アドニスは食材をまな板の上に広げていた。
静かに気づかれないように。
夜食を作っていた。
手にしているのは海老。
銀色の殻を持つ海老がくるりとまるまっているとまるで小さな月のように見えたことから、これは銀月海老と呼ばれている。
それの殻を剥いて、他の食材、マッシュルームとブロッコリーは、一口大に切っていく。
白と緑の野菜に銀の海老をニンニクの香りが漂うオリーブオイルの中に入れて、加熱する。
銀色の海老が、赤く色を変える。
尻尾の部分だけが変わらず銀色の輝きを放っていた。
「さて、もういいか」
火を止めて、静かにカラトリーを用意する。
音を立てないように。
海老の身を口に運ぶ。
至福のひととき。
「たまには、ひとりで食いたいからな」
食欲を誘うニンニクの香りに包まれながら、アドニスは胃袋を満たしていった。