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想いに形を。
ぐつぐつと鍋の中味が煮えている。
焦げないようにかき混ぜながら、材料を注ぎ足される。
想いを形にするとは、どういうことか?
少女が尋ねると、祖母は「想像したらすぐに創造することだ」と答える。
うかんだのが言葉なら、口から声に出すか。文字にしちまうか。
音なら、歌か曲にして。
イメージなら、紙にとりあえず書いてみな。
すぐにやるのが肝心だよ。
想いはすぐにとけてどっかにまざっちまうからねえ。
祖母は、かき混ぜてドロドロになった鍋の中身をすくい上げて少女に渡す。
ちょうどこんな感じさ。
シチューを煮てたはずなんだがねえ?
なんか、よくわからなくなっちまったわさ。
ゴチャ鍋とでも言えるかねえ。
「さ。味は悪くないから。冷めないうちに召し上がれ」
シチューじゃなかった。けど、おいしかった。
再現するのは難しそうだが。