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壁に耳あり

「どうして」

 ギルドの廊下の物陰で、ひとりの女性職員が唇を噛んでいた。

 目を向けているのは先輩職員。

 彼女の側には新しく入った異様な姿の職員たち。

 最初の頃はその見た目で忌避されていたが、今や真面目に仕事に取り組む彼らのギルド内での評判は悪くなかった。

 いや、むしろ優秀な職員として高い評価を得つつあった。

 指導役である先輩職員の評価もそれに伴い上がっていき、先日昇進が決まったばかりだった。


 談笑しながら部屋に入っていく彼女らを見送ってから物陰から出てきた女は苛立ちを隠せずにいた。

 本当なら、彼らを指導するのは自分のはずだった。

 今あそこにいるのは自分のはずだった。

 評価を得るのも信頼を得るのも自分のはずだったのだ。

 女は悔しさに涙をこぼしていた。

 ──しかしそれは、自分の行動を棚に上げた嫉妬だった。


 確かに、当初その役目は彼女に与えられたものだったが、あまりにも最初に見た彼らが恐ろしかったから、彼女はその役目を先輩職員に押し付けたのだ。


 先輩職員も彼らを怖がっていた。

 けれど、日が経つうちに新人たちと打ち解けていった。

 それぞれが才能を発揮していくと、ギルドの上役は先輩職員を高く評価した。

 指導役に戻してほしい、自分ならもっと彼らの才能をうまく使えると上役に掛け合ってみたが、却下された。

 そのことを思い出し、ギリギリと奥歯を噛む。


「私ならもっと彼らをうまく使えるのに」


 ◆◆◆


「私ならもっと彼らをうまく使えるのに、だってさ」

「使われてたまるか。あの女は気に入らない」

「同感だ。彼女とは合わない。・・・・・・いや、合わせる気もおきないな」

「時間の無駄だ。仕事に戻れ」


「何してるんですか? さっきからみんなで壁際に並んで」

「なんでもありません」

「うん。なんでもないない。仕事しよ」

「今日中に済ませるのはどれだ?」

「ああ。それならこっちの仕事を先に・・・・・・」

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