花摘み
風船草が大量増殖した。
連日、医療院から探索者に医薬品の材料調達の依頼と広範囲の伐採依頼が殺到して、市場は屈強な運び屋たちで溢れていた。
それには、ラタトスクとグラトニーに他の兄弟達も駆り出され、珍しくチームを組んで仕事をすることになった。
薬の材料になる花摘みの仕事だ。
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グリードは空を見上げた。
「いい天気だねー」
全員、花粉防止のゴーグルとマスクを身につけている。
「ラタ、ゴーグルとマスクは絶対に外すな、風船草の花粉にやられたら厄介だぞ」
「わかってる」
喋りにくい。でも、風船草の花粉にやられたら怖いから絶対に外すもんか。
風船草の花粉による病気は一度かかると、医療院に通い続けて、薬を処方してもらわないといけなくなる。
探索者潰し、とも言われてる。
時々、全員の注目がグラトニーに集まる。
ゴーグルと一体化したごついマスクを、他の兄弟につけられていた。ふつうのより強力で外れにくい。
グラトニーが窮屈だからと、マスクとゴーグルをすぐに外そうとするから、いけない。
しゅこー、しゅこーと呼吸の音をもらしながら、花摘みをするのはなんか不気味だった。
だけど、今は俺もそんなに違わないか。
花摘みを再開する。
その時、グリードが花摘みに飽きたのか、集めた花を空に舞いた。
エンヴィがおもいきりグリードの頭をはたく音が、青空に響いた。




