《書く》ってこたぁ…
・・・・・・どうやら調子が悪いようだ。
がりがりと頭をかきむしる。
空っぽの頭の中にはなんのアイデアも浮かばない。
机の上のノートは白紙の頁ページを晒していた。
・・・・・・まいった。お手上げだ。
そうは思っても、諦め悪くペンを握りつづけるのはなぜだろうか。
プライドもある。
諦めることでなにかを失くすと思ってしまう。
焦り、恐れ。
・・・・・・。
書くということは、かくも難しい。
だが、あの喜びを知ってしまうと、離れがたいのだ。
頭の中身のそのもっと奥の奥。上の上からするすると文が降りてくるあの快感を知っていると、離れがたい。手が流れるように動くと楽しい。夢中で、なにを思わずともただペンが走るのはとても不思議だ。
完成したものを読み返すと、本当に不可思議奇天烈。
我が内のどこにこれがあったのか?
これは誠に己の作か??と、疑いたくなる。
・・・・・・しかし、今はダメなようだ。
書こうと思うものと頭の中が繋がっていない。
これでは書けん。
こんな時にはどうするか?
・・・・・・ただ待つしかないだろうな。
食って寝て、起きて、歩いて、また食べて、寝て。
何かを見たり、何かを読んだり、誰かに会ったり、どこかに行ったり。
できない自分を嘆いたり、焦りを募らせて、不安になって、なんか抜け毛が増えたりして生え際を気にしだしたり。
もうやめよう。諦めようと、決めたつもりで決心しきれず。ズルズルダラダラと過ごしたり。
とまあ、なんかそうかしているうちに、ふと、書きたくなる瞬間ってもんがあって、その時にうまくいけばよし。うまくいかんならまた、悶々とする。
そんなことを繰り返し繰り返し。
──なんどやめようとおもったか、己に才はない。才あるやつは周りにごまんと居る。
己が書かずとも周りが書く。もっと面白いものを、もっと素晴らしいものを。
・・・・・・だけどもなあ。
己には己にしかかけぬものがある。いや、己がかいたものこそ己だけのものと。
大事に抱えてきたからなあ。捨てにくいなあ。諦めも悪くならあな。
んん?
頭の中のこんなもんなをずらずらと書きなぐってみたら、こりゃ。なかなかいいじゃあないか。
己の中身だ。己の書き方でかいたこれは。己の作品だ。
己以外にかけるもんじゃあねえな。
ああ〜・・・・・・やっぱたまんねえ。やめらんねえ。やっぱ己はこの生き方をかえらんねえなあ。
ずるずるダラダラ悶々と、楽しく可笑しく、不思議奇天烈。
書きもの人生よ。
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さてと、あともういっちょ書けりゃあ、〆切に間に合うぜ。
鬼の如き──いやまんま鬼の鬼担当がとんがった角を震わせて、この宿にのりこんでくるのも時間の問題。
筆が先か、鬼が先か。
金棒担いだ重たい足音が宿の側まで迫ってきたなあ。
夜食くらいは食わせて欲しいなあ。