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『賭けの剣』
「天の宙に輝ける星々よ! ご照覧あれ!! 是なる者は、この時よりひとつの賭けに挑みまする! 我が刃、我が技。 天に座す星の数に至って見せましょうぞ! いざ、参る! 一、十、百、千、万、億……! 」
侍の一声ごとに空気が軋む。
刀は『まだ』鞘に納められている。 これからだ。
大妖の姫の美貌が恐怖に歪む。
「ものども、何をしておるか!やつを仕留めよ!妾の宮殿に踏み入った狼藉を贖わせよ!」
乙姫の命に逆らえない妖異たちが、群がり、一斉に突撃する。
ちっ、と百足丸が舌打ちをするのが聞こえた。そりゃあ、邪魔でしかないもんね。
百足丸にとっても。
なんの用事で来てたのかは、知らないけど。九姫の懐刀が、同盟関係にある乙姫の下僕を斬るわけにはいかない。
百足丸は攻めを諦めて、守りに転じた。
流石に賢い。
百足丸は見た目こそ攻撃一辺倒の荒くれ者だが、そうじゃない。そんな奴じゃ、陸伍と試合って足を切られるだけですむわけがない。
「阿頼耶識 九十九式 那由多!!」
刀身は抜かれ、斬線が走った。




