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皇女は死の夢を視る
死を夢に視る皇女。死告皇女、ラグンエル。
離宮に閉じ込められていたある日、父である皇帝の死を視てしまった彼女は、
「私が死ぬのは、おまえのせいだ」と、罪を着せられ国から追放される。
そして、最低限の身なりと荷を手に、彼女は離宮から解き放たれた。
ああ、これが外の世界か。
ラグンエルは、離宮の外へと素足で踏み出した。
足の裏から伝わってくる石畳の冷たさと、ざらつきにふるえる。
立っている。いま、私は『世界』に立っている。
たまらない感動に。
ラグンエルは、うつむいて涙を零した。
ラグンエルが国の境を越えた頃。皇帝が崩御された──と、彼女は耳にした。
だが、肉親の死に、その瞳から涙は零れなかった。




