アドニスの《コーヒー》
昼食の後は、コーヒーが飲みたくなる。
いつものカップの上にドリッパーを置いてフィルタをセット。缶のふたを開けて、あらかじめ挽いておいた豆をすくう。
濃いのが好きなので、さじ一杯大盛りだ。
少量の湯でまず全体を蒸らしてから、小さなコインの形を描くようにくるくると湯を注いでいく。湯気とともに、コーヒーの香りがたちのぼると。
「おいしくナーレ」
「おいしくナッテ」
「うまうまダゾ~」
小さな声がして振り向くと、色神たちが机の上に集まっていた。
さっきまで、腹いっぱい食ってころころ好き勝手に転がっていた連中もコーヒーが飲みたいらしい。
ちゃっかりと、マグカップを真ん中に持ってきて砂糖にミルク。マドラーも準備オッケーだった。
湯が切れる前にドリッパーを外す。こうすると雑味がなくて、うまい。
「どれくらいいる?」
「チョットでいいぞ!」
「チョットだけだぞ!」
苦いのが嫌いなチビ神たちのカップに本当にちょっとだけコーヒーを入れると、「そいやッ‼︎」と勇ましい掛け声とともにミルクと砂糖が大量にぶち込まれた。
カップの横に重ねられた本の上に立ったやつが「エイサ!ホイサ!」とかき混ぜる。
「できたー」
「イタダキ~」
できあがったその飲み物は、カフェオレ……っていうより『コーヒー味のミルク(砂糖大盛り)』ってかんじだ。
まあ、俺が飲むんじゃないから構わないが。
カップからさらに小さい専用のカップへ、コーヒーを分け合う色神たち。俺は冷めないうちに先にいただく。
うん。やはり、コーヒーは濃いブラックにかぎる。
机の上では「ほへー。やぱりコーヒーはあまあまにかぎル~」と色神たちが満足そうにしていた。




