ちょこれいとの日
とうとうこの日がやってきた。
この日のために何人の探索者がカカオの実を探し、何人の運び屋がそれを運び、何人の加工職人がそれを『ちょこれいと』に加工していったかは、定かではない。
かくいう私も、本業そっちのけでちょこれいと作りに駆り出された。
おかげで甘い匂いが身体中に染み付いてしまった。
味見もたくさんさせられた。
今年はとくにちょこれいとの職人たちは気合が入っていた。
それはいい。
同じ職人として、応援する。
だが、しかし!!
当分、甘いものは見たくないし、食べたくない。
辛いものやしょっぱいものが恋しい。
しかし。
「あの、これよかったら食べてください」
「わたしも」
職場に戻るやいなや、女性陣から大量のちょこれいとをいただいてしまった。
なんの罰だろう。
なにかしただろうか?
いや、好意なのはわかっているんだが。
正直、つらい。
しかし、そんなことは言えはしない。
断じて言うものか。
しかし、どうしよう。
弟に半分手伝ってもらおう。
喜んで食べるだろう。きっと。
しかし。
同じ考えの兄弟が末弟のところに集まって、大量多種のちょこれいとを滅食することになるとは、つゆほども想像していなかった。




