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楽しい昼食

 ──ああ。


 僕はその瞬間、すべてを察した。

 廊下の先、食堂前で上司の『灰護(はいのもり)』が穏やかな笑顔をこっちに向けている時点で。

 なんか、厄介ごとを頼む気で、僕はそれを断ることができないって。

 いい上司なんだけど。

 こういう時ばっかりはやな上司だと思う。


 僕が近づくと、さも偶然と言わんばかりに自然に挨拶をくれた。


「やあ、奇遇だね。ちょうど食事にしようと思っていたんだ。君も一緒にどうだい?」


 僕は考えるフリをして聞いた。


「・・・・・・奢ってくれる?」

「いいとも。好きなものを頼みなさい」


 さすが、太っ腹。どんな厄介ごとを持ってきたのか。しっかり食べながら聞くとしよう。


 ふたりはにこやかに笑みを交わしながら食堂の一番奥の席に座った。


 ◯◯◯


 うん。程よく辛くて美味しい。

 食堂で人気の中辛カレーライスをかきこみながら、『灰護(はいのもり)』の話を聞いていた。


 東地区の管理番号、三十五番の扉が、未界(未調査世界)と繋がっちゃって、わりかし危ないらしい。

 調査がてら可能なら要をぶち壊して、それを滅ぼしてこいとのことだった。


「資源の回収とかは、いいの?」

「危険度の方を重視することになったよ。下手をしたらこっちに来る」


 来る──つまり、ヤバいものが。


「あの辺りには居住区がある。君の弟の家もあるからわかるよね」

「うん。まあね」


 うわあ。軽く脅してきた。これはそうとう早く片をつけたいんだね。


 豚肉の角煮を頬張る。

 うん。辛いものの後に甘いものって美味しい。


「ちなみにさ。見積もりは?」

「中規模。危険度はA+くらいかな。君なら一週間もかからないよ」


 あっさり言うなあ。

 僕らの上司はやっぱり格が違う。肝とか。

 口にオロオロ鶏の卵スープを流し込む。

 うん。甘いものの後に塩気のあるものっておいしい。


「装備はこっちで準備するから、すぐに行けるよ」


 準備万端ときたかあ。

 ガガ芋のフライをかじる。うん。揚げ物おいしい。

 都守はガガ芋の冷製スープだけ食べて、そのあとずっと手を組んでニコニコしてる。


 『灰護』の笑みははじめっから終わりまで変わらない。しかも終始、眼は笑っていないときてる。

 怖い。『灰護』のこういうとこ、ほんとに怖い。(普段はすんごい頼りになる良いヒトだけど)


「デザート頼んでもいい?」

「もちろん」


 メニューを広げて、デザートの項目の上から下まで全部注文すると、ウェイトレスさんが困った顔をしてたけど都守が注文通りにって、一言いったら頭を下げてそそくさと厨房に向かっていった。


「ここのメニュー、どれもおいしいね」

「それは良かった」


 デザートが運ばれてくるまで、『灰護』から書類を渡されて色々と注意事項を説明された。

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