雪の日に《缶コーヒー》で
しんしんと雪は降り続いた。
白く埋もれた景色を窓のむこうに捉えて、ため息をつく。明日も交通機関は大変混雑するだろう。
今朝方の電車の遅延とホームで待たされた苦労を思い出してしまった。
ポケットに突っ込んだままにしてた缶コーヒー2本を取り出す。
カイロがわりにと、自販機で買った缶コーヒーはまだ温かかった。
「飲む?」
ベッドの側で毛布を巻き込んで、不機嫌そうに転がっている留守番役に缶コーヒーを差し出すと素直に受け取った。
礼の言葉も文句も言わずに。
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だんまりを決め込んだ留守番役は両手を温めるように缶を握っている。
私はストーブの前に陣取って缶コーヒーを飲みながら、そんな様子をただ眺める。
むっつり、ご機嫌ナナメ。
召喚された理由が「荷物がくるから留守番してて」じゃ無理もない、とも思う。
でもしかたないじゃないか。私はおまえしか召喚できないんだから。
助けてやったろ? くたばりかけていたのを置いてやった恩を忘れたのか。
目線で静かに抗議の念を送ってみるが、まあ気付かないだろう。読心はできないし、そもそも周りのことを考えるタイプじゃない。
・・・・・・ちなみに雪の影響で荷物は届かなかった。召喚損の召喚ざれ損だ。
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腕時計を見る。
契約期間は終日まで。
現在時刻は午後を少し過ぎたばかり。
今日はもう仕事を受ける気も外出する気もない。
ならば寒さで不機嫌なもの同士、なかよく一緒にいるしかないらしい。
ああ、なんて最低な雪の日。
缶コーヒーを飲み干した私は熱いシャワーを浴びるべくバスルームに向かう。
ああでもひとつ、礼は言っておこうと思い至ったので、留守番役に「ストーブ、つけといてくれてありがとう」と言った。
特に反応はなかった。・・・・・・かわいくないやつ。




