砂の海と魚の丸干し
砂海を越えるための砂舟を用意するのに、思ったよりも時間がかかっていた。
「何度来てもだめなものはだめだ。今は海が荒れてる。流砂の流れも複雑だ。渡れるようになるまで待っててくれ」
兄弟は足を止めるしかなかった。
「はやく収まんないかな」
「いざとなったら、歩きでいくか?」
「何日かかるかわからん。無謀だ」
砂魚の丸干しをおかずに、食事をしながら兄弟で話しあう。
砕いた丸干しをスープに浸して柔らかくしたものを食べていたエリスが「焦ってもしょうがないでしょ」と言った。
グラトニーは、丸干しのおかわりをバリバリと噛み砕いている。
「魚、おいしい」
「そだね。砂の中にいる魚なんて、不思議だね」
「昨夜頂いた、焼いたものも美味しかったですね」ラストは昨日手伝った調理の様子を思い出しながら言った。
たしかに、硬い鱗と皮を取って、バターで焼いた魚は柔らかく美味しかった。
「ああ。私もあちらの方が好みだな。これは些か硬い」
プライドは二匹目の丸干しを二つにへし折ってから、口に入れた。
「兄貴、無理すんなよ」
「大丈夫だ、なんとか食える」
しっぽの先からしゃぶりながらちまちま食べていたからだろう。
他も面々も心配そうにこっちを見ていた。
「こうして食うのが楽しいだけだから、心配しないでくれ」
スロウスはやや恥ずかしそうに言った。




