世界を喰らうと誓った日
廃墟の地下。
魔獣たちを喰らい尽くし、力を得た俺は、
静かに天井を見上げていた。
崩れかけた石の隙間から、
ぼんやりと夜空が見える。
(……あの空の向こうに)
世界がある。
俺を追放した貴族たち。
適性がすべてと信じて疑わない民衆。
神の名のもとに支配を正当化する教会。
そして、
それらすべてを許している、この世界そのものが。
(全部……気に食わねぇ)
ギリッと奥歯を噛み締める。
何も持たなかった俺は、
たった今、
すべてを奪う力を手に入れた。
なら──
「──喰らい尽くしてやるよ」
低く、呟いた。
この世界のすべてを。
この腐った秩序を。
すべて、俺の手の中で──終わらせる。
──
ゆっくりと立ち上がる。
俺の中には、もう迷いはなかった。
魔素適性ゼロ?
穢れた存在?
上等だ。
ゼロだからこそ、
何にも縛られずに喰らい尽くせる。
(……リュカ・アルウェイン)
捨てられたその名前を、
今度は、
世界中に刻みつけてやる。
──
【スキル統合可能:跳躍強化+爪強化】
頭の奥に、システムメッセージのようなものが響く。
(スキル統合……?)
考えるよりも早く、
俺の中で力が結びつき、新たな能力へと進化した。
──【強化骨格・初級】を獲得しました。
骨格そのものを強化し、
跳躍力、打撃力、防御力を底上げするスキル。
(……どんどん進化できる)
笑いがこみ上げた。
これが──【完全魔素吸収】の本質か。
ただ奪うだけじゃない。
奪ったものを、
さらに進化させる力。
(こんな力……世界に知られたら、どうなるだろうな)
だが、
別に隠すつもりもない。
むしろ、知らしめてやる。
絶望と恐怖を刻み込んで、
俺の前に跪かせる。
──
拳を握る。
この拳が、
この世界のすべてを打ち砕く日まで。
俺は、進む。