魔獣喰らい
魔獣──
それは、魔素を糧に進化を続ける異形の存在。
人間たちはそれを恐れ、
魔法と武器でなんとか対抗してきた。
だが──
今の俺にとって、
奴らは"狩る対象"でしかない。
──
廃墟の奥へと進んだ俺は、
さらに数匹の魔獣たちと遭遇した。
小型の蛇型魔獣。
爪の長い猿型魔獣。
翼を持つ小型ドラゴン。
どれも雑魚だが、今の俺にはちょうどいい。
(……試してやる)
俺は右手をかざした。
ズズズズズッ──!!
空間が捻じ曲がり、
魔獣たちが引き寄せられる。
抵抗する暇もなく、
体から魔素が吸い出されていく。
──
【スキル:爪強化】を獲得しました。
【スキル:跳躍強化】を獲得しました。
【スキル:飛行補助・初級】を獲得しました。
──
脳裏に、情報が流れ込む。
(……これが)
吸収した魔素から、
その魔獣が持っていたスキルを取り込む。
ただの魔力強化ではない。
存在そのものを、
俺の血肉に変える力。
(面白れぇ)
俺は笑った。
これが俺の力。
追放された俺に、神が与えた──いや、
俺自身で掴み取った力だ。
──
次々と魔獣を狩る。
右手を伸ばすたびに、
新たなスキルを獲得していく。
スキルリストが、どんどん埋まっていく。
「跳躍強化」
「爪強化」
「飛行補助」
どれも初級のものだが、
吸収すればするほど、俺自身が強化されていくのがわかる。
(……これなら)
いずれ、
この世界を支配する連中すら──
喰らい尽くせる。
──
気づけば、廃墟の地下全域は、
俺が狩り尽くした魔獣たちの死骸で埋まっていた。
そして、
俺の中には、確かな"力"が宿っていた。
(もう、ゼロじゃねぇ)
俺は、
無力な敗北者じゃない。
──
拳を握る。
体の奥底から、力が沸き上がる。
(──すべてを、喰らい尽くす)
それが、俺の運命だ。