禁断の覚醒
燃えるような痛みと共に、
俺の身体に流れ込んできた"何か"。
それは、ただの魔力ではなかった。
異質なもの。
この世界に存在しない、もっと原初的な──
「……ッ!」
膝をつき、必死に呼吸を整える。
体の内側から、
何かが蠢いているのを感じた。
──
ふと、目の前に、
一匹の魔獣が現れた。
黒い毛並みを持つ狼型の魔獣。
下層の廃墟に巣食う雑魚だ。
だが、
今の俺には十分すぎる相手だった。
魔獣は低く唸り、
鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくる。
(……怖い?)
そんな感情は、なかった。
俺は自然に、右手をかざした。
──瞬間。
ズズズズズッ……!
空間が歪み、
魔獣の体が引き寄せられる。
「ガァッ──!」
魔獣が叫び声を上げる暇もなく、
その体から、光る粒子が流れ出した。
俺の手の中へと吸い込まれていく。
──
【スキル:魔素吸収・初級】を獲得しました。
脳裏に、淡い声が響く。
(……スキル……?)
理解する前に、
本能的に悟った。
これが──
俺が手に入れた力。
ただの魔法ではない。
ただの適性でもない。
あらゆる存在から、
魔素ごと、能力ごと、喰らい尽くす力。
【完全魔素吸収】
「……ハッ」
俺は小さく笑った。
この世界は、
魔素適性がすべてだ。
ならば──
すべてを奪えばいい。
力も、技も、命すらも。
──
俺は拳を握りしめた。
脈打つ体内の力が、
熱く、確かに滾っている。
(ここからだ)
追放され、絶望の底に沈んだ俺が、
世界を喰らい尽くす物語は。
ここから──始まる。