プロローグ
初めまして、烏月ルイと申します。
この作品『魔素ゼロの少年、全魔法を喰らい尽くして世界を制す』は、
不遇な少年が、世界を喰らい、すべてを覆す物語です。
王道ですが、王道だからこそ徹底的に熱く。
無双だけでなく、じっくりと成長していく姿も描いていきます。
初めての方も、ぜひ気軽に読んでいただければ嬉しいです!
それでは、よろしくお願いします!
アルセリア大陸。
それは、魔素を操る者たちが支配する世界。
魔素適性──
この世界において、それはすべてを決定づける。
生まれながらに強い魔素を持つ者は、貴族となり、
貧しい者は、蔑まれ、支配される。
──そして俺は、
その中でも最底辺、"魔素ゼロ"と判定された。
「……リュカ・アルウェイン。魔素適性値、ゼロ」
静かな声で、測定官が告げる。
測定会場が、ざわめきに包まれた。
「ゼロ……だと……?」
「そんな……貴族の家系で……あり得ない……!」
「穢れだ……!」
家族すら、言葉を失っていた。
父は顔をしかめ、
母は俺を直視しようともしなかった。
兄たちは露骨に軽蔑の視線を向けてくる。
「──アルウェイン家の恥だ」
父はそれだけを言い残し、背を向けた。
追放。
この瞬間、
俺は家族からも、世界からも見捨てられた。
──
雨が降っていた。
びしょ濡れのまま、街を彷徨う。
誰も助けてくれない。
貴族の子弟たちは笑い、
平民たちは道を開け、
誰もが"魔素ゼロ"の存在を忌避した。
(なにも……ないのか)
拳を握りしめる。
どれだけ努力しても、
どれだけ願っても、
この世界では、魔素適性がすべて。
ゼロの俺には、生きる価値すらない。
──
そんな時だった。
ふと、廃墟と化した教会の前を通りかかる。
古びた扉。
誰も寄り付かない場所。
(……どうせなら、ここで)
もはや行き場も、希望もなかった。
俺はふらふらと、廃教会の中へと足を踏み入れた。
──
中は、静まり返っていた。
苔むした石像。
崩れかけた祭壇。
そして──
地下へと続く、階段。
(……なんだ)
吸い寄せられるように、俺は階段を降りていった。
闇の中を進むと、
そこには、巨大な扉があった。
不気味な文様が刻まれた扉。
血のように赤い紋章が、中心に浮かび上がっている。
「──ここを、開けろ」
心の中に、誰かの声が響いた。
幻聴かもしれない。
だが、
それでも俺は、扉に手を伸ばした。
ギィィィ……
重い音を立てて、扉が開く。
──その瞬間。
俺の身体に、
凄まじい"何か"が流れ込んできた。
ズズズズズッ……!!
血が沸騰するような感覚。
骨が軋むような痛み。
世界が反転するような、圧倒的な異物感。
(──ッ!!)
耐えられない。
だが、止まらない。
すべてを、
俺の中へ。
すべてを、
俺のものに。
──
気づけば、
俺は立っていた。
燃えるような痛みと共に。
そして、はっきりと理解した。
(……これが)
俺が手に入れた力。
【完全魔素吸収──パーフェクトグリード】
──
この世界は、
魔素適性がすべてを決める。
ならば俺は、
すべての魔素を、喰らい尽くしてやる。
追放され、蔑まれたこの俺が。
この腐った世界を、
掌に収めるその日まで。