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悩み事?

 *** 黒田しおり視点


 ドキドキドキ…。

 

 わたし何だか変だわ。

 上原くんが変な事を言うんだもの。


 昨夜、空を飛んだ時

「月が…きれいだな」なんて言うんだもん。

 愛の告白だと思ったじゃないの。

 今時、そんな事を言う人なんて居ないわよね。


 そもそも、上原くんが意味を知っているはずがないわよね。

 本を読んでいないみたいだし。


「はぁ〜」


 わたしは自室のベッドでゴロンと横になった。


 最初に彼に会った時は、体が小さくて気の弱そうな人程度にしか思っていなかったのだけれど。

 いつも虐められてて、可哀想だと思って見てたけどわたしは手を出せなかった。

 

 わたしは、異世界で手に入れた魔法で下手な大人よりも強いから。

 かばったら学校で目立ってしまう。

 まさかコッソリ『回復魔法ヒール』をかけるわけにもいかなかったしね。


「はぁ〜」


 わたし、彼の事好きになっちゃったのだろうか。

 さっき絶対、変に思われたわよね?



 コンコンコン。

 

 ガラス窓に物が当たった音がした。

 小石が当たったのかな?

 ノックみたい。

 あれ?でもここ二階よ?


 起き上がって、窓を見ると上原くんが見えた。

 外のベランダに彼が立っている。


「え?ええ?」


 カラカラカラ…。

 わたしは窓のカギを開けて彼を招き入れた。


「そんなに驚くことないだろ?」


「驚くわよ。何で居るの?そもそも家教えてないわよね?」


「落し物、届けに来た。住所はここに書いてあったから」


「え?ありがとう。でも、普通に玄関から来れば良かったのに」


わたしは生徒手帳を受け取った。


「あ、あれ?そうか。そうだよな…」


 変な上原くん。

 別に、明日にでも渡してくれれば良かったのに。

 まだ異世界の生活が抜けきっていないのかな?

 最近帰ってきたって言ってたっけ。


「ふふっ」

 何だか、少し嬉しくなった。


「あと、何か悩みがあるんだったら聞くけど…」


 え?何?上原くんがメッチャ優しいのだけど。

 どうしたんだろ…ヤバわたし泣きそう。


「気を悪くしたら、ごめんな」


 そう言って彼はわたしの頭に手を伸ばした。

 頭を優しく撫でられている。

 わたしは顔が熱くなった。


「大丈夫、大丈夫だから」

 

 親以外の人に、撫でられたのは初めて。

 しばらくわたしは撫でられていて。

 それがとても心地よくて。

 何でそんなに優しいの?


「少しは楽になった?」


「うん」


 ドキドキドキ…。

 胸の鼓動が気持ち良くて、しばらくこのままでいたいな。




 ***




「ただいま」


「お兄、遅い!」


 家に帰ったらゆかりに怒られてしまった。

 しばらく黒田さんの家に居たからな。

 彼女と何気ない話をしていた。


 普段、気の強そうな彼女が少し弱々しくて放っておけなくて。

 

 彼女は普段ずっと一人で家にいたのだろうか。

 本人は慣れてしまったと言っていたけれど。

 話し込んでいたら、楽しくていつの間にか時間が過ぎてしまっていたんだ。


 壁時計を見ると19時を回っていた。

 確かに帰りが遅くなったな。


「ちょっと友達の家に行ってて…」


「黒田さん家?」


 友達としか言っていないのにバレてしまっている。

 何でだ?


「別にいいけどさー遅くなる時は連絡してよね。ご飯作って待っているんだから」


「分かったよ」


 ダイニングにはすでに夕飯が用意してあった。

 今日は鮭のムニエルとほうれん草のお浸しにみそ汁。


 制服を脱いでジャージに着替える。

 黒田さんは、何を悩んでいるのかは話してくれなかったけど、帰る時には笑顔になっていた。

 言いたくなったら言うのだろう。


 彼女の笑顔を見て、ほっこりした自分がいた。



      *



「あれ?あいつら今日来てないの?」


 翌日、学校に行くと麻木と真崎が学校を休んでいた。


「ちょっと、やりすぎたかな」


「でも、怪我してないのでしょう?あいつらメンタル弱すぎじゃないの?」


 黒田さん結構きつい事言うなぁ。

 優しいかと思ったらそうでもない?のかな。

 昨夜は可愛かったのに。

 気のせいだろうか、クラスの雰囲気がいつもより穏やかになっていた。


「麻木くんたち、他の人にも態度悪いからね。来なくてみんなホッとしてるみたい」


 虐められてたの、俺だけじゃなかったんだな。

 これで彼らも、少しは反省してくれると良いのだけど。



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