高価な買い物
「お兄と、お買い物って久しぶりだね」
俺たちは、街に出ていた。
宿屋に置いてあった、パンフレットを見ながら歩いて行く。
王都に訪れた人用に、各宿屋に無料で置かれているとか。
人が多く集まる王都らしい。
「グリーン通り…と、ゆかりの欲しいものが売ってそうな店はこの辺りか?」
王都は、道が整備されていて大通りなら迷うことは無い。
グリーン通りは、雑貨などの小物が売っている店が集まっているらしい。
他にも冒険者用の店が集まっているブルー通りや、魔法使い専門の店があるブラック通りなどがある。
正直、高価な宝石とかねだられなくて良かったとホッとしていた。
まあ、中学生だし大丈夫だろうとは思っていたのだが。
「あそこのお店行きたい!」
ゆかりが一軒のお店を指さした。
店の外に若い女子が群がっていたので、女性が好きそうなものがあるのかもしれないな。
女性ばかりで、少し店に入りずらい。
「ここに座ってるから、買いたいものが決まったら呼んでくれ」
俺は、近くにあった外のベンチで時間をつぶすことにした。
「ゆう、わたしも見てきていいかしら?実は、異世界のお店って入った事ないのよね」
「そうなんだ。行っておいで」
俺はしおりに手を振ると、彼女は嬉しそうに店の中に入っていく。
異世界の店に行った事が無かったのは意外だった。
聖女だったし、以前来た時は城にこもりっきりだったのかもしれないな。
*
「ゆかりさん、随分買ったね」
安良坂が、ゆかりの荷物持ちをしていた。
頼まれたとはいえ、安良坂も良い人過ぎるだろ。
両手に紙袋を抱えている。
「えへへへ…ごめんね。荷物持たせちゃって」
「お前、こんなに服買って…ここに住むつもりなのか?」
「良いじゃない。私も夏休みの間、居ても良いでしょ?あ…もしかして私、お邪魔だったりする?だったら遠慮するけど」
ゆかりはしおりと俺の顔を交互に見る。
「新婚さんだもんね」
「ゆかりちゃん?な、何言ってんの…そもそもあれは…」
しおりの顔が赤くなる。
「そうだぞ。せっかく二人きりになれると思ったのに…」
「ゆう!?」「上原くん?」
「あはは、冗談だ。しかしそうすると…」
俺はしおりと二人で生活する事を想定していたのだが。
宿屋代もばかにならないしな。
それに、安良坂もずっと付き合わせるわけにはいかない。
俺としおりは話し合って、王都内に家を買う事にした。
先の事を考えて、いずれ家を持った方が良いと思ったからだ。
不動産屋で中古の家を購入した。
最初は、不動産屋に全く相手にされなかったのだが(子供だったからだろうか?)冒険者ギルドカードを見せたら、ようやく信頼してもらったようだ。
登録しておいて良かったよ。
「上原くん…家を買うなんて随分思い切ったね」
「宿屋だと、気を遣うだろ。その点自分の家なら気兼ねしない。いつでも元の世界に戻れるしな」
値段も破格で百万円ほどだった。
王都の端っこの場所だから安かったのかもしれない。
小さい一軒家。
古い家なので、色々と手を加えないといけないの
だが。
*
元の世界は七月で暑いのだが、この世界は春の陽気で暖かい。
ゆかりはすっかりこちらの世界に居ついてしまった。
買った家のリビングで、宿題を持ち込んでやっている。
「お兄は宿題終わったの?」
「ん?全然」
「え…全然やってないの?」
しおりが口を開いて驚いている。
「呆れた。早めにやっておかないと後で苦労するんだから」
「俺はギリギリになってやるタイプだから」
「上原くんそれ自慢する事じゃないよ」
安良坂にも呆れられてしまった。
結局二人に言われて、しぶしぶ宿題をする事になってしまった。
何で異世界に来てまで、学校の宿題をせねばならんのだ。
しおりも安良坂も宿題は終わっているらしい。
こっちで何かあったら心配だから…との事のようだ。
「そういえば安良坂、家に帰らなくて大丈夫なのか?こっちだとスマホも使えないし」
連絡が取れないから、家の人が心配していないだろうか?
「そうだね。いったん戻った方が良いかもね」
「えー安良坂さん、帰っちゃうの?」
ゆかりは口を尖らせる。
「仕方ないだろ。家族が心配しているだろうし」
ゆかりは、安良坂と随分仲良くなっていた。
寂しいのは分かるけどな。
「ごめんね。ゆかりさん、また来れたら来るから」
気のせいか、安良坂が少し寂し気に見えるのだが。
俺は、安良坂を元の世界に送り届けた。




