未だ空は晴れず
ガチで誰だ?
全く分からん。記憶の片隅にすら存在してないぞ。
どっかで会った気がしなくもないけど、こんな美女のこと忘れる筈がないよなぁ。
ここは鈴木、佐藤の2択に賭けるか?
響が目の前の美女について考えているのを見て、謎の美女は内心喜んだ。
今、響の頭の中は自分のことばかりになっていると。
その思考が気持ち悪いと思ったのか、先程までアイスに夢中になっていた子供こと巳空は美女を威嚇した。
「シャッー!」
猫と言っても変わりない威嚇だ。
ひとしきり睨んだ後、巳空は響の腕を掴んで軽く噛んだ。
急に噛まれたことに響もギョッとしたが、自分ごととなると雑な響は、甘噛みだしこういうこともあるだろうと納得した。
が、納得できないのが常である。
謎の美女こと深緑は大いに苛立った。
普段の彼女ならば子供の気まぐれだと気にも留めなかっただろうが、響が絡んでいる場合は別である。
「死ねクソガキ」
「お姉さん、こわーい」
笑みを浮かべて思っていなさそうな事を宣う巳空。
「響、はこれから巳空と遊ぶからお姉さんの相手する暇…ない」
「遊ばないよ?俺門限15時だから、もう帰るわ!」
そう言って帰ろうとする響。
ヴィルも巳空も深緑も放って駆け出そうとした。
その瞬間、世界が暗転した。
夏の15時などまだまだ日は照っていて明るいはずだ。
6月は蒸し暑く夏の訪れを感じさせる月の筈だ。
が、今は違う。
日の光を遮る様に空が黒一色に染まった。
蒸し暑さなど最早感じない。
むしろ冷気があたりを漂い、寒くすら感じてくる。
何かが、何かが起きている。
響は足を止めて状況を確認しようとした。
こういう感覚は過去にもあった。
自分の身に危険が迫っている時のそれ。
俺如きじゃ計り知れない巨大な何か。
ふと駅の改札口を見た。
先ほどまでは通勤通学で人が溢れていたのに、今は誰一人いない。
改札を見つめて数秒。
電車の到着を知らせる電光掲示板が光った。
書かれているのはただ一つ。
『15:12 各停 梅ノ丘駅』
15時12分。
今は15時11分。
あと十数秒もすれば12分になるだろう。
12分になったところで何かが起きる根拠はない。
けれども駅構内から流れ出てくる空気は明らかに異質で今すぐこの場から離れるべきだと脳が警鐘を鳴らしていた。
「おい!なんかやばい!今すぐ────」
時計の針が刻まれる。
時刻は15時12分。
電車が梅ノ丘駅へと到着した。
と、同時に声が聞こえた。
「巳空、帰るよ」
老婆の様にしゃがれた声。
若い女性の様な少し甲高い声。
息が詰まった様なか細い声。
相反する声達が合わさった様な声がした。
響は慌てて振り返り、巳空の方を見た。
すると、そこには着物を着た、舞妓と思わしき女性が立っていた。
既に巳空と手を繋いでおり、その様子は側から見たら親子の様にさえ見える。
勘の鋭い響はこのまま巳空を放っておけば、この異質な空間から逃れられると直感していた。
このまま何もせずただじっとしていれば元に戻れると確信していた。
響はゆっくりと歩き出した巳空と舞妓を見たまま動かない。
ゆっくり、ゆっくりと進んでいく2人。
響達から5〜6m離れたあたりだろうか。
ふと、巳空がこちらを向いた。
体を震わせ、目尻に涙を留めていた。
その目は確かに助けを求めている様な目で────
「あの、貴方はその子の母親か何かですか?」
思わず声をかけた。
基本的に響は冷たい人間である。
世界のどこかで誰かが死のうと情報として頭に留めておくだけで何かを思ったり何かをしようとは思わない。
しかし、関わってしまった場合は別である。
例えば子供が攫われそうになった時、例えば誰かがひったくりに遭った時、目の前で何かが起きた時に自分が行動すれば良い方向へと進むかもしれない場合に動かないほど冷たい人間ではないのだ。
「そうです。私がこの子の母です。」
「の割にはその子は随分と怯えてるようですけど?」
「元々人見知りしやすい子なので、お気になさらず」
巳空と響はアイコンタクトをし、考えを伝える。
「お姉さんの事に気になっちゃったなぁ。どうですか?そこでお茶でも」
「貴方、何を………」
急な誘いに戸惑う舞妓。
その一瞬の隙を突いて、巳空は舞妓の手から抜け出し響の元へと駆け寄った。
響は巳空を抱き上げて、走り出した。
「お前ら逃げるぞ!」
その掛け声にヴィルと深緑は響の後を追って走った。
ただ1人残された舞妓は、その一瞬の出来事に惚けて逃げていく巳空達を眺めることしか出来なかった。
数秒の後、意識を戻した舞妓は酷く醜く顔を歪めた。
「食い殺したるぞ!童ァ!」
テストとかテストとかテストとかで全然続き出せてませんでした。
再来週とかから夏休み入るのでいっぱい書けると思います。




