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試合終了

炸裂する澪の魔術。

凄まじい轟音を響かせながら、いくつもの建物を薙ぎ倒し蒼華を燃やし尽くした。

澪の魔術の威力は流石の蒼華でも耐え切れるものではなく直撃を喰らった場合、間違いなくリタイアとなる程だった。


澪と絵里は魔術の着弾地点が見えるところまで移動していた。


「蒼華は!!何処!!?」


「分からない…」


既に魔術を放ってから30秒の時が経過している。

効かなかったのならば、それ程の時間も待たずして再度、戦闘が始まっているはずだ。

逆に効いたのだとしたら、相手を焼き尽くす澪の魔術が今尚燃え盛っているのはおかしい。


今の攻撃で倒しきれていれば最高なのだが、下手に近づいて倒れかけの蒼華にカウンターを喰らったりしたら元も子もない。


現状、絵里達がとれる行動は傍観だけである。


観察から42秒。

澪の魔術が収縮し始める。

それの意味することとは対象の死滅。

魔術の攻撃対象に死に至らしめる傷を負わせた事を意味する。


「やった….?」


「澪の魔術が消えたって事はそうでしょう?あの魔術は対象が死ぬまで消えないじゃない?」


絵里と澪、勝利したと考えても良いにも関わらず、あまり喜ぶ様子がない。

戦闘中、うんざりする程までに蒼華との才格の差を見せつけられが故だろうか。

私が倒した!と言えるほどの自信がないのだろう。


しかし、断言する。

澪の魔術には蒼華を倒せる程の威力があった。

否、蒼華でも成す術ない程の威力があった。

避けられてしまえば元も子もないが、それは絵里の固有魔術によって真正面からブツける事に成功している。

絵里たちはもっと勝利の味に酔いしれても良い筈だ。


何故なら、それは()()()()()()()()()()()()()


「はは、やばい威力してんなァ」


声が聞こえた。

もちろん絵里でも澪でもない。

男の声ではない。

女性にしては少し低めのハスキーボイス。

絵里にはその声の主が誰であるか瞬時にわかった。

聞き慣れた、聞き慣れすぎた声だったからだ。


崩壊した建物から這い出てくる少女。

身体中が焼け焦げ、笑っていられる程の余裕がないのが見て取れる。

それでも笑うのは使い手への敬意か少女の狂気故か。

少女はイテテと傷を触り、顔を上げた。

少女と絵里の視線が合う。

砂や埃、煤に塗れながらも煌々と輝く綺麗な青い髪。

髪と同じ色をした瞳は、まるで青空をそのまま写しているかのようだ。


皆まで言わなくとも分かるだろう。


澪の魔術を喰らい、蒼華は生き残っていた。

その事実だけが絵里に深く突き刺さった。

「もしかして私程度じゃ何をしようと勝てないんじゃないか?」と。

そういう思考が頭の中をよぎったが、すぐさま切り替えた。

困惑する澪に再び指示を出す。


「これはチャンスよ!私はあんなに弱った蒼華を見た事ない!倒せる!倒せるわ!1度耐えれたからと言って2度目も耐えれるなんて事ないわ!」


絵里の言葉に澪も闘志を再度燃やす。


が、遅い。遅すぎる。


もう一度戦う選択肢を選ぶのならば、蒼華が出てきた瞬間に同じ魔術を放つべきだった。

追撃は追って行うからこそ意味があるのだ。

相手に休憩する間を与えて行う攻撃は追撃ではない。


魔女の蠱惑(まじょのこわく)(へん)』」


蒼華がそう言うと世界が瞬いた。

光は爆ぜ、空気が揺れる。

蒼華の放った魔術の射線上にあるのは絵里と澪。

澪の攻撃から回復しきっていなかったのか照準がズレ、絵里たちには直撃せず彼女らが立つ建物に当たった。

蒼華の魔術を受けた廃墟は自重に耐えれなくなり、絵里と澪を巻き込んで崩れていった。


『聖女の慟哭』

聖女の慟哭の発動時間は約15分。

この魔術は発動と同時に術者の総魔力の半分を吸収し、保存する。

その間、術者は自身の魔力量の半分以下でしか魔術を扱う事が出来ない。

魔術とは魔力量=効果量。

つまり、聖女の慟哭使用中、術者の魔術は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

つまり魔術の威力が半減する。

凄まじいデメリットである。

しかし、大きなデメリットには大きなメリットが存在する。

聖女の慟哭は術者の魔力を吸収、保管する代わりに術者が致命傷を負った時、一つに限りそれを回復させる。

詰まるところ、本来であれば死ぬ攻撃をひとつだけなかった事に出来るのだ。


ひとつ蒼華にとって嬉しい誤算だったのは、澪の魔術による傷がひとつとしてカウントされた事である。

聖女の慟哭はその性質上、致命傷を一度だけしか治す事が出来ない。

要するに一度の攻撃で致命傷を何度も与える魔術の場合、発動した所で結果が変わらない。

しかし、澪の魔術は一度の攻撃で()()()()()()()()()()という持続的にダメージを与える魔術だったが故に、致命傷はひとつだとカウントされ魔術の発動中に蒼華の怪我を治し続けた。


これにより、蒼華は澪の魔術を耐え切ったのだ。


そして耐え切った蒼華が行える切り札。

『魔女の蠱惑』

聖女の慟哭に対して実に簡単な能力をしている。

端的に言ってしまえば受けた魔術と同等レベルの威力を持った魔術を魔力の消費なしで放つ事が出来る。

今回蒼華が放った『返』は絵里達に当たりはしなかったが、直撃していれば絵里と澪を容易く屠っていただろう。


「澪!大丈夫!?」


「受け身はとったから大丈夫…」


「蒼華が回復しきる前に倒す────」


そう言い切る前に絵里の首が落ちる。


「は?」


これには思わず澪も声を漏らした。

首を落とされ絶命した絵里は光の粒となって消える。

リタイアだ。

煙が晴れ、絵里を葬った者の姿が澪の目に映る。


「響……」


そう、響である。

廃墟の崩壊によって生まれた隙に奇襲をかけて絵里を倒した。

柊チームのレオや先ほどの絵里といい、響はフィールド内を駆け回り浮いた駒を狙っていた。

本来、滅多に隙を見せない絵里なのだが蒼華の復活と魔術により冷静さを欠いていた。

そこを響に突かれたのだ。


澪は響を倒そうと魔術の発動準備を始める。

しかし戦闘が始まる事はない。


何故なら───────


『試合終了ゥゥウ!!!!試合時間40分を過ぎました!試合終了ですッ!』


試合が終わったからだ。


『双柳チーム生存者4名!柊チーム生存者1名!月見里チーム生存者1名!全滅したチームが居ないので勝敗は陣地の確保数で決まることとなります!』







聖女の慟哭概要

・発動時間は15分。

・使用中は総魔力の半分が使用出来なくなる。

 それに伴い使う魔術の効果が半減する。

・ひとつだけ致命傷を回復させる。



聖女の慟哭は格下相手かワンチャンスもない程の格上にしか実践レベルで使えないクソ魔術です。

同格相手だと、自身の魔術の効果を下げる原因になってしまうので致命傷を治すとか言われても使った時点で実力を半減すふので使って時点で負け確です。

ちなみに聖女の慟哭使用中は時間が経てば少しずつ回復する魔力が自動回復しません。

クソ魔術ですね。

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