MONOTONOS
一応、一定値を超えると痛覚を感じなくなる様に設定されています。
「レオ!ヴィル君は俺が相手する!お前は森の陣地の確保に行ってこい!」
その指示を受け、レオは蒼華達の戦闘区域を避ける様に森へと向かっていた。
レオは気配を隠して廃墟街を抜ける。
遠くで響く2つの戦闘音。
一方は拳と拳がぶつかり合う打撃音。
もう一方は打撃と魔術の炸裂音、建物の崩壊音、遠くにいるにも関わらず戦闘がどれだけ大きなものなのか想像に容易い。
あんなレベルの戦闘になど参加出来るものかと、レオは自分の役割を果たそうとした。
廃墟を抜け、森に入った。
その直後、レオの首が落ちる。
突然の出来事にレオは何がなんだか分からなかっただろう。
生い茂る草木の影に紛れ、姿を隠しレオを奇襲した。
この状況ならば誰かが陣地を取りに来るだろう、と姿を隠して張っていた。
レオの意識が途切れ、戦線離脱するまでの数秒。
レオの瞳に映ったのは見覚えのある黒髪の少年。
双柳チームの響。
試合終盤、細かな動きが戦況を左右するこのタイミングでコイツが動かない筈がなかったとレオは歯噛みした。
「ちっくしょうッ!」
頭ひとつになり、地に転がる直前までレオの視界に映るのは響ただ1人であった。
###
「先ほどまでとは様子が違うようだけど、何かあったのかな?」
時間稼ぎでもしようとしているのか柊が聞いてくる。
大方、陣地を取りに行ったレオとかいうやつの為に俺を足止めしてるつもりなんだろう。
別にそんなことしなくても逃げやしねえのに。
「お前に寝かせてもらったお陰で頭がすっきりしてさ」
ヴィルは頭をトントンと叩いて話す。
その姿はまるで寝起きで回りきっていない頭を起こすかの様な仕草だ。
「よく考えたら大事なもんは亡くなったし、ガキの頃からの不安の素は全員亡くした。何も悩む必要なかったんだよ」
そうだ。子供達は死んだし、ボス達は俺が殺した。
過去を振り返って足を止めている暇はない。
俺というキャラクターの背景なんて勝ち負けに関係ないだろ。
ヴィルは、ふぅーと息を吐き呼吸を整える。
髪をかきあげた事で視界が広がる。
顔を上げ、柊と視線を合わせた。
頭の中を駆け巡る15年の月日。
色鮮やかな今が次の瞬間には白黒な記憶へと変わっていく。
楽しかった事も辛い過去も今や色褪せていっている。
その事実に少し哀しさを感じながら今と向き直った。
気にするな
今はただ───────
ヴィルは走り出す。
目の前の相手をただ打ち倒す為に。
戦え!
迫り来る閻土の化身。
柊は振り放たれた拳を両の手で受けて流す。
流さなければ次の動きに支障が出るほどの力がある。
受け流されたヴィルは崩れたままの体勢を整えずに蹴りを放った。
武道を近接戦の主軸としている柊からしたら、ヴィルの型にはまらない戦い方は目新しかった。
喧嘩や殺し合いで磨き上げた拳と脈々と受け継がれてきた武道によって作られた拳。
対照的な2人である。
ゲームに例えるならばターン制バトルをしようとしている柊に対してヴィルは格闘ゲームをしかけている。
ヴィルの戦い方は良い意味でも悪い意味でも捨て身である。
自分の体がどれだけ傷つこうとも死ななければ問題ない。致命傷を喰らおうとも相手が自身より先に死ねば勝ちだと言わんばかりの戦い方なのだ。
そんな特攻とも言えるヴィルの戦い方に柊は受けに回るしかなく、ただただ避けて受け流す戦いが続いた。
ヴィルの乱打に初めの内は柊も焦りを感じだが、戦っていくにつれて武の染みついた体が観察を続けてきた目が無意識で対応し始めていた。
あいも変わらず、攻撃に乗っけられた力は驚異的だが数多の達人を師事していた柊からすればヴィルの攻撃は分かりやすい。端的に言ってしまえば単調だ。
反撃する余裕も生まれてくる。
顔めがけて向かってくる拳を首を傾げて躱して、ゔぃるの懐へと侵入する。
ヴィルは攻撃に比重を傾けている分、守りが疎かだ。
柊は、その隙を突いて瞬く間に3度の打撃を入れる。
左胸、溝打ち、脇腹、の3箇所に入れた打撃。
これは効いただろうと距離を離さぬまま、顔を上げてヴィルの様子を見た。
すると、目が合った。
誰と?
今し方打撃を喰らわしたヴィルへヴィアと。
「効かねえよ」と目を剥き、笑みを浮かべた。
直後、柊の額に大きな衝撃が走る。
その衝撃に柊は飛び退き、ヴィルと距離を置いた。
恐らく、というか頭突きだろう。
互いの額から血が流れている。
流れ出る血は眉間を伝い、唇まで流れた。
柊は服の袖でその血を拭い、ヴィルは舌を出して血を舐めた。
その様子を見て柊は自分の攻撃が効いていないのかと不安を覚えた。
実力が開いていた場合効きにくくなる顕現魔術と異なり刻印魔術、特に身体強化による肉弾戦、格闘戦は確実に着実にダメージが入る。
にも関わらず、大したダメージが入った様には見えない。
否、効いてはいるのだろう。
HPは確実に削っているのだが如何せん耐久値が高すぎて攻撃が通った気がしないだけだ。
閻土で鍛え上げられた頑強さと15年の経験が精神と肉体を闘争専用のものへと変化させた。
ヴィルの体は変わらず痛みを訴えているだろう。
しかし、それが脳に通じる前に何処かの細胞で切っている。
まさに痛いと感じなければ痛くないを地で行っているのだ。
柊は隙を狙って攻撃を喰らわすが、必ずと言っていいほどヴィルもカウンターを成功させる。
互いに与えた攻撃の数は同程度だが一発一発の威力が高い分ヴィルが有利だ。
このままでは負けると距離を離し顕現魔術を放つが、その身ひとつで戦場と変わりない地で生まれ育った野生児に当たるはずもなかった。
柊の魔術の着弾地点を肌感覚で感じ取り避けていく。
瞬く間に距離を詰めて拳を振りかぶった。
戦闘中にそこまで振りかぶると隙が生まれるのだが、今の今まで顕現魔術に集中していた柊にその隙を突く余裕はない。
最小限の威力にして受け切り、カウンターで倒そうと考え、柊は防御体勢をとった。
が、しかし
この一撃はこれまでの打撃とは比べ物にならないほどの力が込められている。
つまるところ、柊は受けきれなかったのだ。
ヴィルの拳は柊の頬にめり込み、そのまま地面に殴りつけた。
ドドン!と地が響き、柊の半身が地面へと埋まってしまった。
既に柊は意識を失っている。
しかし、戦線離脱になっていなかった。
意識を失っても尚、フィールドにしがみつく様に身体強化の魔術を解かなかったからだ。
意識を失っていようとも、フィールドに居さえすれば陣地の確保数が同じ場合、引き分けに持ち込める。
そういう魂胆があるのだろう。
とどめを刺さなければとヴィルは歩を進めるが、どうも足取りがおぼつかない。
それもそのはず、柊の打撃の殆どを躱さずに受けて対応したのだ。
体が限界を迎えるのも無理はない。
次第に歩幅が狭まり、ヴィルは柊のすぐ隣にうつ伏せになって倒れた。
これはヴィルの勝ちなのだろうか?
側から見れば引き分けとも言えそうであるが、ヴィルにとって過去を振り切り、自身と同等かそれ以上の相手を倒した事は歩き出すきっかけとして充分なものだったのだろう。
その証拠にヴィルは笑みを浮かべて眠っていた。
体育祭の競技が終わるまで、あと1〜3話
後夜祭的なのがあと2〜3話
次章までの軽い話を数話
以降、京都旅行?違うのやるかも
あと今後文章の書き方を変えるかも知れません。
それに伴って文章量が多くなったりするかもなので、今まで程テンポ良く進まないかもです。




