最新の魔術と最古の魔術
キャスは柊チームのメスガキです。
レオは柊チームのヤンキーです。
強えな!おい!
『まさに乱戦!魔術がまるで嵐の様です!3チームが入り乱れています!』
柊チームは遠近どちらもイケる万能型。
ヴィルや蒼華と同じタイプだ。
柊はどちらかと言うと遠距離主体、ヤンキー君の方は反対。近接主体で格闘戦で出来た隙に魔術を入れてくるタイプだ。意外と抜け目がない。
が、今最も驚くべき、警戒すべき相手はアイツらじゃない。
絵里を除けば、柊が最大の敵かと思っていたが違かった。
柊は指揮や分析能力に優れている軍師型。
単純な戦闘能力で言えば、まだ常識の範囲内だ。
蒼華と絵里。
この2人だけが常識を逸脱する魔術師だと思っていた。
しかし、もう1人!このフィールドに居た!
理外の存在『華月澪』
やはり仲間のサポートのない1人の澪が狙われるのは当然であった。
俺らは柊チームの気が少しでも割かれるように澪を利用して戦っている。
対する柊達は俺達の動きを煩わしく思って澪を排除し
ようと攻撃の比重を澪へと傾けている。
しかし、澪は迫り来る数多の魔術を涼しい顔で対応する。
常人なら、というか俺やヴィルでも無傷で受け切るのは不可能な攻撃の嵐を無傷で受け切り反撃までしてくる。
意味が分からない。
澪は2チームから距離を取り、少し本気を出すとばかりに服の袖をまくって悠然と構えた。
「はは、やべえ」
澪から立ち昇るその魔力は普段の模擬戦で相対する右京や蒼華と比べても遜色なかった。
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まさか、ここまで実力差があると思わなかった!
別に勝てるとは思っていなかったが、ここまで一方的になるとは思ってもいなかった。
双柳蒼華は避けるまでもないと言わんばかりに、こちらの攻撃は全て受けて反撃してくる。
その一撃一撃が洒落にならない程重い。
多分、耐久に特化した私じゃなければ数発で戦線離脱していただろう。
「終わりか?仲間が居るんだろ?2人がかりで来なよ」
((バレてる!?))
蒼華の発言に隠れていた清水、そして隙を作ろうと戦い続けている仁坂の2人は想定外だと歯噛みした。
顔にこそ出さなかったものの驚きが冷めやらなかった。
ふぅ、どうする?
清水が隠れているのは分かってるけど、何処にいるか分からないって感じか?
けど、奇襲かけた所で倒せる気がしない。
倒すのは諦めて時間稼ぎに徹するか?
まとまらない思考を晴らす様に状況が展開していく。
『まさか!まさか!このタイミングで登場か!?』
「前菜のお味はどう?」
「中々楽しめたよ」
『化物に対抗出来るのは化物だけ!相対するはこの女ァ!』
奇襲などする必要がないとばかりに姿を見せたその少女の名は神葬の令嬢『月見里絵里』
学生の中では上澄みである仁坂を前菜と評し、まるで自身こそがメインディッシュだと言わんばかりの佇まいだ。
「今日のコースは楽しめて貰えそうかしら?」
「そりゃ、メインディッシュの出来によるね」
今日の戦闘は楽しめるか?と、今日の魔術は心躍るか?と、そう聞く絵里に蒼華はお前の実力次第だと言い放った。
その返答に絵里は蒼華の視線を自身が独占していると笑みを浮かべた。
「なら満足して貰えそうね。蒼華、貴方に教えてあげる敗北の味を」
「楽しみだ。私はまだその味を知らないからね」
間に割って入る事を許さないほどの魔力の押し合い。
魔力の押し合い。通称『魔力戦』
魔力を放ち相手を威圧させる事は魔術師同士の戦闘において無駄ではない。
低位の魔術師は「自らを大きく見せる為にする雑魚の行動だ」と言うが全く違う。
魔術の元となるのは想像力である。
どれだけ具体的な想像が出来るかで魔術の練度が変わってくる。
それは魔術師の戦闘においても例外ではなく、勝つイメージを持たないと勝率は多少下がる。
特に実力の近い者どうしならば気持ちの持ち方は勝敗を分ける大事な要素となる。
魔力の押し合い。簡単に言うと威嚇だ。
戦闘前に威圧する事で相手に自らは劣っているという意識を持たせる事が先の勝利へと繋がっていくのだ。
蒼華と絵里の魔力戦は蒼華に軍配が上がった。
それにより蒼華と絵里にあった小さな差が少し広がる。
「『迦具夜比売赫映姫』」
絵里が固有魔術を発動する。
それに対して、蒼華も真面目にやらなきゃ失礼だと身体強化以外の魔術を使う。
「『聖女の慟哭』『魔女の蠱惑』」
蒼華の使った魔術は2つとも一般化されていない独自に作り出した過去に無かった新魔術である。
対して絵里の発動した魔術は固有魔術。
千年以上の歴史を持つ月見里家相伝の魔術。
古き時代の魔術を背負う者と新しき時代の魔術を牽引する者。
その2人が今ぶつかろうとしていた。
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想定していた試合の流れと随分違うな。
僕の想定していた流れだと蒼華さんが僕たちの陣地を襲撃してきて、そこに月見里さんが漁夫の利を狙ってやってくる。
それを阻止する為に仁坂を蒼華さんの方へやったのだが………。
双柳蒼華、そして月見里絵里を抑えてしまえば、どうにかなると考えていたのだが僕の見立ては随分甘かった様だ。
今、この場は辛うじて拮抗状態が保たれているが、何かの拍子にころっと戦況が傾きかねない。
その原因は彼女。華月澪。
完全にノーマークだった。
しかし、考えてみれば当然だ。
彼女の肌、まず間違いなく赤化病だ。
赤化病の魔術師が弱い訳ないのだ。小さい頃から魔術に親しみ、年齢に見合わない強大な魔力を持っている証拠なのだ。
彼女は蒼華さん、月見里さんに並ぶ変革者。
故に、ここで倒さなければならない。
蒼華さんが襲ってきた時用の奇襲要員だったのが……
響君達に対する警戒度を下げて、俺とレオで華月さんを集中的に攻撃する。
彼女は単騎でこの場にいる僕らを倒し切れる実力があるはずなのに、何故かそうしない。
しないのか、出来ないのか。
彼女が本気を出す前に倒し切らなければならないのだ。
遠距離主体の顕現魔術をいくら喰らわせた所で大したダメージは入らないだろうし、隙も殆ど出来ないだろう。
だから、倒すなら近接戦。
自分より小さな女の人を殴るのは気が引けるが、そうは言ってられない。
僕とレオで怒涛のラッシュを叩き込み、華月さんの動きを封じる。
華月さんを倒されると拮抗状態が崩れる事を悟ったのか響君とヴィル君が割り込んでくる。
流石に2人がかりで来られたら面倒臭いけど、ヴィル君は無視しても何の問題もないから、響君だけを警戒しておけば良い。
1人ならば大した脅威にもならない。
レオが華月さんの足を払い、転ばせる。
流石にそれだけで隙は出来ずに一瞬床に倒れ込んだが、腕を床についてバク転で立ち上がった。
澪は絶え間ない攻撃に態勢を整えようと柊達から距離を取った。
今だ!隙が出来た!
柊のそんな心の叫びに隠れていたキャスも反応して隠れていた建物から飛び出して、澪へと迫った。
手に持つは刃渡り30cm程の短刀。
手入れの行き届いたその刀ならば、澪の首を切断するのも容易いだろう。
澪からしたら、まさに絶対絶命。
ではなかった。
「!?!?」
キャスは澪に首を掴まれて奇襲を封じられた。
死角から飛びかかったから見えていなかった筈なのに澪は反応して無力化してきた。
「コッ、こりゃバケモンだわぁ」
『おっーと!ここでキャス選手が退場だァ!』
キャスは澪に片手で首を絞められて戦線を離脱した。
澪は柊やレオ、響とヴィルを見て少し考えてから言った。
「時間稼ぎ必要ない…、全員倒せそう……」
響や柊達の実力が分かっていなかった為、澪は様子見に徹していたが実力を測れた今、絵里が来るまでに倒せると判断し攻勢に出ようとしていた。
澪の強さを何処まで盛るか……
赤肌の無口系美少女ってかっこいいな
澪はエヴァン◯リオンの赤いプラグスーツ着た状態って考えて貰えばイメージしやすいと思います。




