戦乙女
「なに?なに?知り合い?全く絵里ちゃんも隅に置けないなぁ〜!」
「ばっ!友達の友達だからっ!そういうのじゃないから!」
ニカがニヤニヤと笑いながら冗談混じりに揶揄うと、絵里は真面目に受け取り、顔を真っ赤に染めて否定した。
そんな姿を見て響は、名前から想像していたけど本当に女の子だけのチームなんだと分かり、戦乙女みたいだと、少数精鋭みたいだとテンションを上げていた。
蒼華とヴィルに会う機会があったら出来るだけ情報を引きだせって言われんだよなぁ。
これから先に話す機会もないだろうし、多分今回が最初で最後のチャンスだろう。
未だ言い合いを続ける月見里達が息継ぎに静まったタイミングで声をかけた。
「この生姜焼き、俺だけじゃ食べれなさそうなんだけど良かったら一緒に食べない?」
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「絵里以外は刻印魔術師だし、1対1専門だから広範囲牽制できる顕現魔術師をチームに入れようって言ったのに、絵里が頑なに3人がいいって言うからさぁ」
「それは大変だねー」
アイスティーを飲みながら、ウルフカットの少女。ニカがチームについてベラベラ話している。
他の2人はそれを止めるでもなく、ただただ黙々と肉を口に運んでいた。
絵里に関しては、ニカの話にツッコミを入れたりするのだが、もう1人。
華月澪はほぼ一言も話してすらいない。
クールビューティーって感じだ。
灰色の髪に赤い瞳。
顔から下、というか顔以外の肌が赤い色をしている。
確か赤化病とかいう病気の一種だ。
赤化病を患う人は皆、血中に含まれる魔力の量が一般的な人より多い、らしい。
その為、魔力の馴染んでいない幼少期に魔術を使うと血の色が肌に滲み出て赤下病を発症してしまうのだ。
病気とは言っているものの、実害は特にないので目に見えて変わるのは皮膚の色くらいだ。
が、赤化病を穢れた血だと蔑む者も地域によってはいる。
澪さんがどうかは知らないが、そういった事はないように心に誓っておこう。
「刻印魔術師だけで陣地守るのキツ過ぎるから、ほんと体育祭当日は大変そうだわぁー」
「そんなに話しちゃっていいの?一応、俺も出るんだけど」
情報を聞いてこいとは言われたものの、当日の作戦から使う魔術など、あまりにベラベラ話すものだから少し申し訳なくなってきてしまった。
それ故に話を止めて本当にそこまで話していいのか確認してしまったのだ。
「別にいいよ。絵里に敵う奴いないし」
不敵な笑みを浮かべて挑発する様に言った。
「因みに、響のとこの蒼華は私より強いわよ」
「え?まじ?」
先程までは絵里が強いから問題ないと考えていたのだが、頼りにしていた本人が相手に自分より強い奴がいると言ってきたものだからニカは大いに困惑していた。
「やば、これで負けたら私戦犯?」
「そうね」
「失敗したぁぁぁああ」
うなだれるニカと呆れた様子の絵里、2人は席を立ち響に別れを告げて食堂を出て行った。
えっ?
「えーと、澪さんは行かなくていいの?」
依然残ったままの生姜焼きを頬張っている。
口をモグモグと動かしながら、こちらを見てくる澪さん。
滅茶苦茶目が合ってる。なんだ?なんかしたか?気を損ねる様な事は言ってないはずだぞ?というか、まだ一言も会話を交わしてないから、こんなに見つめられる理由が分からない。
「あ、あのー」
俺が話始めようとしたと同時に澪さんも口を開いた。
「澪でいい」
その一言を残して澪さんもまた食堂を出て行った。
タッパーに俺の生姜焼きを全部入れて食堂を出て行った。
「いや!図々しいな!」
生姜焼きを奪われた俺に残されたものは、おかずのない大皿と白米の入った御茶碗一杯だけであった。
響と、ニカと絵里は話しているうちに打ち解け、互いに下の名前で呼ぶ程度にはなってます。




