戦術会議
あの三つ巴の宣戦布告から一夜明け、翌日。
体育祭まで残り1週間を切り、体育祭当日のプログラム、戦闘練習の出場チームなどが発表された。
「出場チームは9チーム。3チームずつでボックスに分けて総当たり戦を行い、各グループの1位チームが決勝へと進める…。決勝はグループから勝ち上がってきた3チーム、三つ巴で行う………」
概ね想像通りだったが、決勝戦が三つ巴なのは予想外だ。
恐らく決勝戦では柊チームと絵里チームと当たる事になる。
元々、両チームともと戦う想定はしていたのだが、決勝が三つ巴になった事である問題が発生した。
「こ、これって蒼華ちゃんが目の敵にされてるから相手側のチームが共闘しちゃうんじゃないですか?」
その通りだ。
うちの想定していた戦術は戦場の中心に蒼華を投下。
暴れている厄災に気を取られている隙に陣地を狙い、全滅させられそうであったら倒し切ってしまうというものだった。
これが三つ巴の場合、蒼華の暴れるタイミングを慎重に見計らなくちゃいけない。
初っ端から敵陣に突っ込んで倒せたとしても、もう一つのチームが漁夫の利を狙ってくる可能性があるからだ。
何もり問題なのが、今回決勝に上がって来そうなチームは2つとも蒼華に対して並々ならぬ感情を抱いている。確実に蒼華が狙われる確信があった。
まあ、蒼華の言う言葉を信じるなら敵チームに蒼華を止めれる奴はいないとの事だから、戦闘を始めるタイミングさえ上手い事見極めれれば、勝つ事もそこまで難しくないだろう。
「ひとつ、言わなくちゃいけない事があったわ」
授業中の学生の様に手を挙げて蒼華は言うべき事があると言った。
「この前、私を止めれる奴なんて殆どいないから大丈夫だよ!とか言ったんですけど……」
何やら雲行きが怪しい。
聞きたくない事を言う気がしてならない。
「絵里が出場するとは思わなくて」
蒼華はバツが悪そうに言った。
「多分、絵里は1人で私を止められるんだけど。どうしたらいいと思う?」
『私が全員ブチ倒せば戦略とか必要ないから』
『んな簡単にお前がハマる気がしねえな〜』
『私を止めれる奴なんて学園にも数人しかいないから大丈夫だよ。少なくとも柊とかいう奴のチームにはいないし』
『なら大丈夫か(能天気)!』
昨日の能天気な会話が思い出される。
蒼華は自分を止めれる奴なんて学園に数人しかいないと言っていた。
止めれる奴はいないじゃなくて、数人しかいないなのだ。
数人は単騎で蒼華を足止め出来る実力を持った奴がいるのだ。完全に失念していた。
切羽詰まった今、後悔する時間はない。
「じゃあ、真面目に戦略考えるとするか」
###
「要するにヒットアンドウェイで牽制しつつ、双柳で月見里を釣って時間を稼ぐ。その間、陣地を奪って保持出来る様なら陣地を取る。出来ない様なら試合終盤に双柳が月見里を連れてきて、乱戦にもつれ込ませる。そこで敵の全滅を狙うって事か」
ヴィルが纏まりがないまま進んでいた会議を上手くまとめてくれた。
月見里さんのチームは3人。
柊のチームは5人。
今回のゲームをコントロールするのは、恐らく1番人数が多い柊チームだ。
蒼華が月見里を釣るから、残った月見里チームは2人。
陣地攻略の際に奇襲を受けたとしても、襲ってくるのは最大で2人。柊チームもその場に会しているのならば対応する事は出来るだろう。
「細かい所は、当日の相手の動きによって臨機応変に変えて対応するのが無難か。柊チームはまだしも、月見里チームは未知数だし、変に型に嵌めすぎて普段通りの動きが出来ないってのもよくないからな」
ヴィルがそう言って会議を締め括った。
因みに、うちのチームは双柳チームとして登録しているがリーダーというか、司令塔はヴィルである。
蒼華は言わずもがな、リティアは周りを動かせるタイプではなかったし、俺も経験のない戦闘練習で司令塔が出来るほど余裕はなかった。
その点、ヴィルは戦闘練習をした事があったらしく、その時も司令塔をしていたらしい。
この前軽くやった練習試合でも指示は的確だったし、動きも悪くなかった。
まさに理想的なリーダーである。
が、しかし、
「ヴィル、お前大丈夫か?」
日に日に顔色が悪くなっていっている。
殆どの人が気がつかない程度のもの差異ではあるが、ほんの少しやつれている。気がする。
それは多分、肉体の問題ではなく精神的な問題だろう。
「大丈夫って何がだよ?それよりお前当日ヘマすんなよ!」
「ああ」
俺の背を叩き、軽く笑った。
教室を出ていくヴィルの背は酷く小さく見えた。
###
今は1人で食堂に昼食に来ている。
蒼華は図書館に行って、リティアは貴族の付き合いがあるのだとか、ヴィルは何処に行ったのか分からない。
右京はそもそも学園に来ているのかも分からないし、仕方なく1人で飯を食いに来ることになったのだ。
もう入学して2ヶ月経っているのだが、実は食堂で昼食をとるのは初めてである。
流石天下の方舟学園。メニューの種類が豊富である。
お金はあるけど、いきなりコース料理ってのもハードルが高いから、無難な生姜焼きとかにしておこう。
「お婆ちゃん!このモリモリ生姜焼き定食1つ!」
「あら!色男ね。特別に大盛りにしておいてあげるわ!」
「あざます!!」
なんて良い人なんだ。
あんな人が居るなら、これから積極的に使っていこう。
なんて、大盛りという言葉が過小表現だという程盛られた山の様な肉と米を見るまでは思っていた。
「やっぱり、お腹が空いてる時たまに来よう………」
「あれ?蒼華の飼い犬じゃない」
死んだ目で生姜焼きの山を見る俺に声を掛けてきたよは誰なのかと振り返ると、そこに居たのは蒼華の友人である月見里絵里。
そしてそのチームメイトであるニカと華月澪の姿があった。
あと2話くらい挟んで決勝戦の予定です




