ちーむあっぷ
「しぇ、リティア・ド・ラ・シェリバンです!」
少女はそう名乗った。
シェリバン、確かどっかの国の貴族の名前だったな。
なんで蒼華がこの娘を仲間に勧誘できたのかは知らないが、一応出る意思はある様だし良いだろう。
「おい、リティ。さっきの奴が何処にいるか探せ」
「た、多分、第3競技場にいますっ!」
蒼華にヴィルの居場所を聞かれ、相変わらず自信なさげに言う。
しかし、自信がなさそうなのは声音だけで目の前のリティアとかいう少女はまるでヴィルがそこにいると確信しているかの様だった。
蒼華もまたリティアの言葉を信じているようで、何の迷いもなく第3競技場へと向かっていった。
俺とリティアも蒼華の後を追っていった。
第3競技場とは体育祭当日に戦闘練習を行う会場である。
競技場とは名ばかりでフィールドの殆どが森と廃墟で構成されている。
だから、観客席からフィールド内は殆ど見えない為、試合中は空中に映像が映し出される。
「あっ、いたいた」
観客席から競技場を眺めるヴィルの姿が写る。
なんともまあ、物憂げな様子だ。
「お前、私のチームに入れ!」
さっきと殆ど同じ言葉で勧誘する蒼華。
そんな蒼華を横目に見ながら、ヴィルは問いかけた。
「お前ら何で出場しようと思った?」
その言葉は蒼華1人というより、俺やリティアを含む3人に聞いているようだった。
ヴィルの言葉を頭の中で反芻し数秒の後、3人ともほぼ同時に口を開いた。
「私の存在を知らしめるため」
「水着メイド喫茶の為」
「そ、蒼華ちゃんに脅されたから…」
自己顕示欲の塊の様な発言をする蒼華、男のロマンを求める響、脅迫により仕方なく出るリティア。
三者三様、試合前から目的意識バラバラのチームである。
そんなチームを見て、ヴィルはたかが学生の体育祭なのに自分が考え過ぎているのを馬鹿らしく思えてきて深く考えるのをやめた。
「仕方ねえ俺も出てやるよ」
やれやれと言わんばかりに気怠げに言った。
意外とあっさり承諾を得れた事を不思議に思いながらも響はヴィルの加入を歓迎した。
「と、ひとつ条件がある」
やはり、何か条件がある様だ。
何やら深い過去がありそうだったので、それ関係だろうか?さてどんな条件なんだろうか?
「お、俺に勉強を教えてくれ、それが条件だ」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯き呟くヴィル。
勉強を教えてくれ、その言葉を聞いて3人ともポカンとフリーズしたが、蒼華が真っ先に意識を取り戻し笑う。
「あははははは!学園レベルの勉強出来ないとか馬鹿かよぉお!!!」
蒼華の馬鹿にするような笑いと言動にヴィルは怒りを募らせ叫ぶ。
「やめだ!やめだ!もうお前らのチーム入ってやんねえ!」
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「ここ、分からないんだけど……」
ヴィルが教科書の上部を指差し、俺に聞いてくる。
「ああ、ここは刻印魔術式をこっちの焔魔術と掛け合わせて………って!何で俺がお前に勉強教えてんだよ!?!!!!」
「いや、お前以外まともに教えられそうになかったし、他2人はなんかムカつくし………」
「まあ、確かに」
蒼華は殆どの事が感覚で出来てしまうタイプなので教えるのに向いていない。
この前、魔術について教えてもらおうと軽く教鞭を受けたが貯めて貯めて解放!だとか、ビーンしてボーンだとか何を言っているのかさっぱり分からなかった。
それに心から馬鹿にしている訳ではないが、蒼華のノーマルコミュニケーションが煽りと喧嘩腰みたいな所があるから喧嘩っ早そうなヴィルとは根本的に合いそうになかった。
逆にリティアは小テストでも学年で50位以内に入っていたし、論理立てて説明できるタイプっぽかったけど、彼女本人の申し出でヴィルが苦手だというのだかは仕方ない。
あと、リティアは多分蒼華と似たようで異なり、割と真面目に相手を下に見る。
人間の性というか何というか、自分より下を作る事で自分が優れていると思いたいのだろう。
彼女の場合、3000人はいる一年生の中で2桁台なのだから別にわざわざ下を作る必要はないと思うのだが、まあ当人の意識の問題である。
と、まあ、そんな訳で俺が教えることになった訳なんだが………。
俺、別にそこまで頭良くないんだよなぁ。
エリート校というのもあってか、周りのレベルは高いし、俺は授業についていくだけで精一杯である。
スラム街で生まれて最近まで勉強なんてしてこなかったとか言ってるヴィルも俺が教え始めてから1週間も経たぬ内に一般的な魔術師レベルまで伸びている。
最近ではヴィルに教える前に俺が予習しているくらいだ。
「そういえば今日の模擬戦見てて思ったんだけどさ」
ヴィルが口を開いた。
「お前、本番も徒手空拳で戦うつもり?」
どうやら今日の授業で行った模擬戦を見ていたらしい。ローテで蒼華と右京と当たったが、10分も持たずにボコされてしまった。
余談だが学園の生徒によって作られている『頭おかしいレベルで強い化物生徒』
通称「あたおか生」筆頭である蒼華と右京相手に数分持っている時点で響もおかしいと、最近になって響もあたおか生に加えられた。
その事実を知らないのは当の本人である響だけであった。
と、話を戻そう。
響はヴィルに本番も徒手空拳で戦うのか?と聞かれた。
その発言は、まるで戦闘練習で徒手空拳で戦うやつなんて居ないと言わんばかりであった。
「そのつもりだったけど、駄目なの?」
「ダメって訳じゃないが、あんまし見ねえなって」
どうやら、戦闘練習において徒手空拳は少数派らしい。
しかし、こないだやっていた世界大会を見たが無双していた筋肉マッチョの美女は拳ひとつで獣の様な戦い方をしていた。
ああいうのが割といると思っていたのだが違うのか。
「戦闘練習って基本、相手を倒すか陣地を取るかの2択しか選択肢がない訳よ。そこで相手を倒すを選ぶのもいいんだけど、大体は全員を倒しきれずにタイムアップして陣地の数で勝敗が決まる。案の定、フィールドがどデカいせいで隠れられたら、ほぼ見つかんねえ。だから、陣地を取るっていうのが現実的なんだけど……」
ヴィルは一呼吸置いて話した。
「己の体ひとつで陣地を取るとなると相当難易度が上がる。陣地取りの基本戦術は“相手チームに対して遠距離で嫌がらせしながら隙が出来たら制圧”ってのなんだけど、徒手空拳の場合、遠距離からの嫌がらせってのが出来ない。勿論、顕現魔術も刻印魔術も扱えて遠中近どこでも行けますって奴なら好きにすればいいんだけど、響、お前刻印魔術師だろ?」
『刻印魔術師』
主に刻印魔術を得意とする魔術師の事。
刻印魔術は基本的に自身の体に作用する魔術だ。
身体強化やら身体発火などが代表的な刻印魔術である。
刻印魔術が影響を及ぼせる範囲は、おおよそ手の届く範囲。要は近接戦が主なのである。
先程、響が話した世界大会で無双していた筋肉美女は
刻印魔術、顕現魔術のどちらの適性も有している為、まさにヴィルの言う遠中近全てに対応できる奴だ。
反して響は、
「確かに顕現魔術は気休め程度しか使えねえな」
つまり、対人戦闘は強い響であっても戦を想定している戦闘練習においては対軍戦闘が主になる為、得物を持たぬ刻印魔術師が活躍する余地がないのだ。
「けどさ、その話聞く限り、刀やら槍やら持ったところで刻印魔術師が活躍する余地はなくないか?」
「刻印魔術は手の届く範囲に影響を及ぼせるだろ?つまり、手で持っている武器も魔術の効果を受けさせる事が出来んだよ。だから、魔力の伝導率とか色々あるけど只の刀でも短い範囲なら斬撃を飛ばせるし、槍なら直線上にどデカい穴をぶち上げるどこだってできる。遠距離は駄目でも中距離戦がある程度出来るようになるだけで戦術の幅が一気に広がるからな」
刻印魔術師にとって武器は持ち得って訳か。
なら、俺も使うべきなんだろうけど。
「お前使える武器あるのか?」
「一応刀は使えるな。なんなら一振り持ってる」
「それ使えばいいじゃん」
「いやぁ、模擬戦闘で使えるタイプの奴じゃないからなぁ」
「?………じゃあ買いに行こうぜ!お前の武器!」
リティアは前髪が長い。
蒼華のヘアメイクは響が行っているので蒼華の髪型は結構コロコロ変わる。
身長 将来
蒼華168cm → 172cm
響176cm → 185cm
ヴィル174cm → 176cm
リティア158cm → 159.2cm




