le petit bonheur
閻土は地名です。
ヴィルへヴィアというキャラが出てきますが、愛称、呼び名として「ヴィル」と呼びます。書きます。
教室の窓から校庭が見える。
体育祭に向けて練習でもしているのだろうか?
ワイワイと騒がしい声が聞こえてくる。
幸いにも体育祭は全員強制参加ではなかった。
何か出なくちゃいけないならば、やったことのある戦闘練習に出ざるを得なかった。
他の競技に関しては退廃地区で育った俺には親しみのないものだ。
かといって、戦闘練習なんてなんていうスポーツの皮を被った戦なんてやりたくはなかった。
俺のいた閻土然り、ここ最近の名だたる武将は皆戦闘練習で圧倒的な戦績を残している。
将軍なんていう戦場にいながら逃げ回る仕事につく奴らにとっては戦闘練習は絶好の腕試しの場なのだろう。
それにしたって軍の士気を上げるため戦場の最前線に立ちながら、誰よりも生き残らなければいけないなんてのはどれだけ大変なのだろうか。
生きる為に目の前の奴らを殺してきただけの俺には想像がつかない。
自分の命が自分のものだけではないというのは嬉しくも苦しいだろう。
他者の命を踏み躙る代わりに部下達の夢を叶える義務が生じる。他者を踏み潰す代わりに自分の命に責任が生まれる。
最悪だな。戦の真似事だろうが、もう2度とやりたくない。
俺は窓の外で体育祭練習をしている同級生を見ながら、そんな事を考えていた。
最初から分かっていた。廊下の先から俺のいるこの教室へ向かってくる2つの魔力。
学園に入れば少なくとも3年間は何事もない安全な暮らしが出来ると聞いたから、なけなしの金をはたいて入学したのだが………
焔土の化物から逃げてきたのに、逃げてきた先の学園でまた別の化物に出くわすとか、どんだけ俺はついてないんだ。
いつの間にか教室へと入ってきた青髪の少女と黒髪の少年。どちらも見目麗しく、作り物のようだった。
青髪の化物は言った。
「お前、強いらしいな?私とチーム組んで体育祭出よう」
まるで力量を測るかのように、まるで獲物を前にした獣のように。
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文々によるとチーム集めはリーダーの勧誘により行われるらしく、蒼華直々に声をかけて集めていかなければならないそうだ。
上にも下にも人数制限はない為、別に2人で出る事も可能なのだが他のチームの殆どが4人以上のチームらしく、方舟のエリート生相手に2vs1をする気起きない。
だから、こうしてチームメンバーを集めている訳だ。
で、目の前にいる彼が文々に紹介された「ヴィルヘヴィア」くん。
メンバー候補第1号という訳なんだけど…………。
どういう訳か必要以上に警戒している。
こちらの呼吸を含めた全ての行動を観察している。
実力を測る為に軽く敵意を向けたが、おおよそクラスメイトに向けるものではないものが返ってきた。
「お前たちは何者なんだ?」
何者?
質問の意図が分からない。クラスメイトと答えればそれまでだし、わざわざ今ここで自己紹介しろという訳でもないだろう。
俺たちを見てから異常に怯えているというか、警戒しているのを見るに襲われるとでも思っているのだろうか。
「お前、私のチームに入れ」
そんな事を考えているうちに蒼華が返答した。
いや、正確に言えば返答ではないだろう。
どちらも全く会話する気がないと言った様子だ。
ここは俺が取り持つべきか。
「俺はT組の響。で、隣のが蒼華。今、体育祭でやる戦闘練習のチームメンバーを探してて君を勧誘した訳なんだけど………」
「悪いが出る気も予定も俺にはない。他を当たってくれ」
ヴィルはそう言って足早に教室から出て行った。
蒼華が追う様子もないので俺は去っていく彼の背中を眺めていた。
しばらくして、蒼華が口を開く。
「何か事情が有り気に誘いを断る謎の同級生。熱い展開だなァ!」
誘いを断られたのを悲しんでいるのかと思ったが、違かった様だ。
むしろ、振られて逆に熱くなっているといった様子だ。
「アイツが私のチームに入る事はメタ的に考えて決まったから、チームメンバー4人。全員決まったな!」
4人?全員決まった?
「お前、何言って────────」
そこまで言って俺は言葉を止めた。
何故なら俺の目に映ったからだ。
4人目の、いや、正確にはヴィルの前だから3人目のメンバーの姿が。
「あ、あのぉ、そ、存在感なくてすみませんですぅ」
蒼華の小脇に抱えられた長髪の少女。
自己肯定感が低そうな子だ。
「り、リティア・ド・ラ・シェリバンです!」
色素の薄い金色の髪を靡かせて少女は勇気を振り絞るように名を呟く。
綺麗な翠色の瞳が不安気に揺れていた。
シリアス匂わせ!?こんな序盤で?!
ヴィルは中々愉悦な人生歩んできてます。
過去は後々、というか数話後にやると思います。




