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さあ、とことんレベルアップをしよう! ‐薬効チートから始める転生少女の迷宮譚‐  作者: えがおをみせて
第3章 変わるヴィットヴェーン編

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第80話 マルチジョブからメインジョブへ




「確認作業、かい?」


「はい。本当にアレが最後の『ゼ=ノゥ』だという保証はありません。第2、第3の『ゼ=ノゥ』が残されている可能性があります」


「本当のところは?」


「サムライの装備が出なくてツラいです」


「以前にも言ったけど、僕に止める権限は無いからね。好きにすればいいよ」


「ありがとうございます」


『氾濫』が一応終息したと見て、わたしは冒険者協会会長に求められ、経緯を説明した。


 あくまで一応なので、今後も調査は必要だ。そこに『ルナティックグリーン』を始めとする『訳あり令嬢たちの集い』が立候補したわけだよ。



 ◇◇◇



 例の『氾濫』騒動から3日。今のところ、31層は落ち着いたものだ。『ゼ=ノゥ』はもちろん、ゾンビもボーパルバニーも見かけない。

 目立ったことと言えば、ハーティさんに『黒の聖剣』をもたらしたガルヴィさんに、金一封どころか、相場の2倍のお金を支払い、ついでに『ハーティさんかサワさんとの1日デート券』を渡したくらいかな。いつ使うのやら。

 わたしを選ばなかった場合、分かってるね?


 大問題はドロップの内容だった。


「これを買い取れと?」


「一応、その、査定を」


「これをですか」


 冒険者協会の査定担当者さんが頭を抱えている。

 大量の『ゾンビの肉』がヴィットヴェーンを騒がしているんだ。誰が食べるか、こんなもの。お腹壊すし、ハートがぎゅんぎゅん減るわ。


 ところが、思わぬ価値が見い出された。面倒臭くなって放り出した冒険者がいたんだ。

 そしたらゾンビ肉が黒く固まり、要は石炭みたいな効果を発揮することが分かった。ゾンビ肉は乾燥するとよく燃えるぞ。


 そこで更に問題が発生する。インベントリから出したモノが『変質』したら、それはもう元には戻らない。インベントリに入らなくなるんだ。

 結局、冒険者たちは相変わらずドロップした木炭を携行して、ゾンビ肉改めゾンビ石炭は、家庭用に用いられることになった。


「木炭とゾンビ肉の相場が滅茶苦茶です」


 わたしには分からん。経済なんて知らないからね。

 どうやらカエル皮の時と違って、エネルギー革命を起こしかねないそうな。そういうのはわたしがどうこうする話じゃないので、上で検討してくださいな。



「これを買い取れと?」


「一応、その、査定を」


「これをですか」


 コピペミスじゃない。わたしが居るのはボータークリス商店だ。ゾンビからこれまた大量にドロップした、剣やら、スタッフやらを売りに来たのだ。

 いやぁ、濃紫色の刃が美しい。


「どう見ても呪われているのですが」


「……そうですか? 詳しくないので、分かりません」


「これだけ禍々しいのです。素人が見ても分かると思いますよ」


 見りゃ分かるよ。わたしにだって分かるよ。なんか変なオーラ纏ってるし。


「どうしましょう」


「どうしようも無いと思いますが、どうします?」


「タダで構わないので、引き取ってもらえませんか」


「王都の好事家に売れるかもしれませんが、この量ですと。希少価値が皆無ですね」


「じゃあ」


「深い穴でも掘って、埋めるくらいしか思いつきません」


 核廃棄物か何かかな。


 結局、処分料を払うことで、引き取ってもらえることになった。

 前世で聞いたことあるぞ。テレビとか冷蔵庫を引き取ってもらうアレだ。エコだかリサイクルだかそういうヤツだ。もう知らん。



 ◇◇◇



「ねえサワ。イーサのレベルを上げたいわ! ホーリーナイトよ!」


 ビキビキっ!

 まったく空気を読まないリッタの言葉が、わたしに突き刺さる。いいよね、専用装備って。羨ましいね。

 なんかイーサさんが青い顔をしているけど、羨ましいなあ。笑ったり泣いたりできないようにしたいなあ。


「サワ、落ち着け」


「ターン」


「ターンも妬ましくって、シッポがへにょん」


「そっか、ターンもか」


 ひしっ。わたしとターンは抱き合って、その上でイーサさんに視線を送った。


「まあ、大半が本音の冗談はここまでにして」


「羨ましいぞ」


「勘弁してください。カタナ探し手伝いますから」


「言質は取りましたよ」


 肩を落としつつも、イーサさんはちょっと嬉しそうだ。何と言っても『ホーリーナイト』だ。『ガーディアン』ほど特化はしていないが、リッタを始め誰かを守りたいという意識の強い彼女には、打ってつけのジョブだね。

 早くレベルを上げたくなるのも分かる。でもレベル40までって、結構大変なんだけどね。



 今回の『氾濫』で、急速にジョブチェンジとレベルアップが進んだ。

 例えば、リッタが9ジョブ、イーサさんも9ジョブだ。特にイーサさんは『ホーリーナイト』が確定してるので、達成すれば10ジョブ目になる。


 そろそろ下地はできた。これからはメインジョブを育てる方向にしてもいいんじゃないかな。

 わたしはサムライ、ターンはニンジャ、リッタはウィザード、イーサさんはナイト路線だ。

 それ以外だとベルベスタさんのウィザード、ハーティさんのロード、後はチャートのニンジャだね。

 ズィスラとヘリトゥラは、まだまだだよ。



 あれ、そう言えば。


「サーシェスタさんもモンクの上、目指してもいいんじゃないですか」


 何気なく言ってみたら、サーシェスタさんの目の色が変わった。


「……言ってませんでしたっけ」


「きいてないよ、サワ」


 やっべえ。ベルベスタさんの時と一緒だ。


「えっとですね、『錫杖』を使えば『シュゲンジャ』。『独鈷杵』からだと『ウラプリースト』ですね」


「ほほう」



 ◇◇◇



「普通通り、だね」


 さて、28層だ。ドロップは全て片付けられて、元の綺麗な迷宮のまんまだね。

 出てくるモンスターも、以前の通りだ。本当に終息したんだろうか。


 今日はちょっと編成を変えている。『ルナティックグリーン』はいつものメンバーからズィスラを外して5人。『ホワイトテーブル』は、サーシェスタさん、ベルベスタさん、ハーティさん、それにチャートとズィスラの5人だ。

 6人と4人を5人づつにしたわけだね。


 ヘリトゥラはウィザード、ズィスラはファイターと、ついに二人の道が分かれた。とは言え、二人をペアとして扱っていくのは、今後も一緒の予定だ。前衛と後衛をある程度鍛えてから、チェンジってワケだ。

 ちなみに二人とも5ジョブ目なので、十分戦力として勘定できる。


「わたしがレベル53でターンが51、サーシェスタさんに至っては56です。もう40層越えないとまともにレベルも上がらないでしょう。ってか、ジョブチェンジしたいので、アイテム探索がメインですね」


「あたしゃまだ14だから、とことんまで行くよ」


 エルダーウィザードになったベルベスタさんはノリノリだ。流石に2次上級職だけあって、レベルが上がりにくい。『ゼ・ダ=ノゥ』との闘いまで12だったそうな。


「ぼくはやるぜ!」


 ニンジャになったばっかりで、まだレベル7のチャートは鼻息が荒い。シッポがブンブンだ。


「頑張ります」


 そして本人の同意があるけど、勝手に行く先が決まったイーサさんのレベルは18。30までは遠いよー。



「とりあえず、今回の探索は35層を目指して、そこで2泊です。全員コンプリートが目標ですよ」


「おうさぁ!」


 ホントテンション高いね、ベルベスタさん。



 ◇◇◇



 久々の35層で1日。イーサさん、ズィスラとヘリトゥラはコンプリートしたけど、他の人たちはもうちょいだ。具体的にはリッタ、チャートだね。


「兎だ!」


「はいぃ!?」


 登場したのは、お馴染みになった2羽のボーパルバニーだった。

 35層に居るはずの無い。


「『ティル=トゥウェリア』」


 その2羽はターンが瞬殺してくれた。くれたんだけど、どういうことだ?



「たまたま? それとも『氾濫』が終わっていない?」


 どっちだ。


「予定変更だね」


 サーシェスタさんの意見はもっともだ。これは調べるしかない。


「そうですね。40層あたりまで行ってみましょう」


 今のメンバーなら、ボーパルバニーに十分対応できる。装備も万全だ。



 微妙な空気の中、わたしたちは下層に向けて進み始めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] >「はい。本当にアレが最後の『ゼ=ノゥ』だという保証はありません。第2、第3の『ゼ=ノゥ』が残されている可能性があります」 Gだな
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