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さあ、とことんレベルアップをしよう! ‐薬効チートから始める転生少女の迷宮譚‐  作者: えがおをみせて
第3章 変わるヴィットヴェーン編

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第79話 最強が流すは血の涙




 ヴィットヴェーン勢の魔法攻撃は遠慮なく続いていた。

 都合のいいことに、相手は35層から40層クラスがメインなので、ほぼ全員がぎゅんぎゅんとレベルを上げていく。前衛が後衛に、後衛が前衛にジョブチェンジして、同時に実戦経験を積んでいるというわけだ。


「パワーレベリングとオーバーレベリングの中間って感じだね。これは凄いや」


「そうなの?」


 戦い始めて6時間。あっという間にシーフをコンプリートして、今はメイジになっているズィスラが聞いてきた。


「だけどわたし、なにもやってないわ!」


「ここからだよ。ほら、メイジになったんだから魔法使って」


「わ、分かってるわ!」


 多分近くでは、ヘリトゥラも似たようなことをしてるんだろうね。



「『ゼ=ノゥ』が出たぞぉ!」


「っ! ターン、リッタ、イーサさん!」


 ズィスラとヘリトゥラは連れていけない。


「全員周辺を魔法攻撃! 『ゼ=ノゥ』には当てないで。後は『ルナティックグリーン』に任せて」


 わたしの言葉の直後に、周辺の敵が掃討された。ここで『ゼ=ノゥ』に当ててしまうと、戦闘判定が入ってしまう。だから。


「『ティル=トウェリア』!」


 ターンの攻撃が『ゼ=ノゥ』に刺さり、わたしたち4人がバトルフィールドに入ることになる。


 一瞬黒焦げになった『ゼ=ノゥ』が皮膚をバリバリと零しながら、再生を始める。やらせるか。


「『ティル=トウェリア』」


 次はリッタの攻撃だ。どうだ、二重爆撃は。


「『アームロック』!」


 イーサさんの腕が相手の触手に絡みついた。逆じゃないよ。

 なんだか分からないけど、触手を掴み取ることで相手の動きが阻害される。『ヴィットヴェーン』の不思議現象だ。まあ、ニンジャが在りもしないクリーピングシルバーの首を斬るくらいだ。これくらいは常識の範疇だよ。


「『ハイニンポー:轟雷斬』」


「『乱れ剣豪突き・八連』!」


 ターンとわたしのスキルが発動する。上位物理攻撃だ。受けてみろ。


 都合2体目の『ゼ=ノゥ』が消え去り、その場に宝箱が残った。

 あれ、こんなに宝箱出る仕様だったけか。まあ、有難くいただくけどさ。


「ターン」


「あいよ」


 周りは殲滅されているので、ターンが急いで宝箱を開けた。


「クナイ」


「おおっ。ターンの装備だね」


「違う」


 どうしたの?


「返す」


 ターンがポイっとクナイを放り投げた先には、『紫光』のニンジャさんがいた。ああ、ターンにシュリケンをくれた人だ。

 ターンは義理堅いねえ。


 だけどソレは放り返された。


「アレはターン嬢ちゃんにやったやつだ。返される謂れはねぇよ。そっちで好きに使いな」


「分かった。ありがと」


 なんかニンジャ同士で分かりあってるぞ。


「チャート!」


 ターンはそのクナイを、結構離れた場所にいたチャートに投げ渡した。凄いな50メートルくらいあったのに、ストライクだ。


「これって」


「チャート、今何!」


 流石にこの距離だと、大声を出さないと会話が通じない。


「ハイウィザード!!」


「なら、コンプリートしたらニンジャになって!!」


「……、わかったあ!!」


 めっちゃ嬉しそうだ。チャートはターンを目標にしてたからなあ。

 ああ、魔法を乱射してるよ。



 ◇◇◇



 さて、そろそろスキルが尽きてくる人も出る頃だ。特に後衛ジョブ。


「交代に入ってください。3時間で叩き起こしますからね!」


「了解だあ!」


 さあ、キッツいけど穴を埋めないとねぇ。



「サワさん、お待たせしました」


「待たせたのぉ」


 そんな時に都合よく来てくれたのは、ウェンシャーやドルントさんだ。

 各互助会所属やらなんやら、沢山の冒険者がやってきた。その中には『村の為に』や『世の漆黒』の世話になっている新人たち。こないだトラブルを起こした人たちまで混ざってる。

 パワーレベリングでマスターレベルにした人たちもいる。


「あはははっ。最高ですよ! 大手クランの皆さん、パーティ再編は任せます」


「まかせとけえ、『訳あり』たちは前線維持だ。できるのか?」


「できるに決まってるじゃないですか!」


 いったいどれだけの冒険者がいるんだろう。100? 200?

 ヴィットヴェーン総動員みたいな感じじゃないか。


「交戦判定だけは、気を付けてくださいよ!」


「あいよぉ。雑魚は任せとけ」



「よっしゃあ、ハイウィザードだぜ!」


「俺もだ!」


 ダグランさんとガルヴィさんだ。なにやってんだ、あの人たち。ついこないだまでバリバリの前衛だったくせに。

 でも正直助かる。流石は『名誉ルナティックグリーン』だけのことはあるね。


 他にも続々とジョブチェンジが為されていく。それは勿論『訳あり令嬢たちの集い』もそうだ。



 ◇◇◇



「止まった?」


 気付けば、津波のように押し寄せていたモンスターの密度が低くなっていた。


「ん? 28層のモンスターしか、いない?」


 まさか、これで『氾濫』終了?



「バケモノだあ!」


 また『ゼ=ノゥ』が出たかっ。


「デカいぞぉ!」


 デカい? まさかっ!


「パーティチェンジ! ターン、サーシェスタさん、ベルベスタさん。……リッタ、テルサー!」


「行くわっ!」


 イーサさんが渋い顔をしているが、ここは勘弁してほしい。リッタのウィザードとしての腕が欲しいんだ。大丈夫、前衛はわたしとターンとサーシェスタさんでやり遂げる。


「全員退避。『ルナティックグリーン』でやります!」


 お願いだから、戦闘判定取らないでね。



「『ゼ・ダ=ノゥ』……」


『ゼ=ノゥ』の大型種だ。性能は、普通種の全部上を行く。

 逆に、弱点も一緒ってことだ。火力で押し切れる。だからこその、このメンバーだ。



「やるよ。リッタ、バフ」


「『BF・INT』『BF・INT』!」


「『BF・INT』『BF・INT』『BFW・MAG』。最強魔法攻撃!」


 リッタとわたしが同時にINTバフを掛けまくる。


「『ティル=トウェリア』」


 速度に優れるターンが、まっさきにウィザード最強魔法を叩き込む。


「エルダーの魔法はまだ足りないねえ。『マル=ティル=トウェリア』」


 ベルベスタさんがハイウィザード最強魔法を撃つ。


「『マル=ティル=トウェリア』ぁ!」


 リッタがそれに続く。


「『マル=ティル=トウェリア』!!」


 最後にテルサーが、最強魔法を叩きこんだ。



「どうよ?」


 ああ、油断なんかしてないよ? こんなんで沈んでもらっちゃ、わたしの出番が無いから困るんだ。


「『BFW・SOR』!」


 リッタが前衛系バフを掛け始めた。分かってるじゃない。


「『活性化』『芳蕗』『ニンポー:パワー』『ハイニンポー:センス』」


「『活性化』『両拳に力を乗せて』」


「『活性化』『克己』『明鏡止水』『守破離』『剣豪の心得』」


 わたしを含めた前衛組3人が、ステータス上昇スキルを乗せまくる。



 ぴきっ、ぱきっと真っ黒になった『ゼ・ダ=ノゥ』の表皮が剥がれ落ちて、濃い紫色の下地が現れる。再生してやがるか。

 でもさっきより小さくなっている。再生が追い付いてないんだ。


 それでも触手が飛んできた。普通の『ゼ=ノゥ』より太くて速い。


「『ハイニンポー:スーパーカウンター』」


「『後の先』!」


「おぉぉ『バックブロウ』ぅ!」


 だけど、極限までステータスを高めた3人には通じない。

 全員がカウンターを取り、そして触手が切断された。


「見たか! これが今現在、『ヴィットヴェーン』最強の姿だ!!」


 まだ究極じゃないけどね。半分にも到達してないよ。



「おおおおお。『神撃』」


 まず、サーシェスタさんの拳が相手を抉り取った。


「『裡門頂肘』『鉄山靠』『ハイニンポー:轟雷撃』」


 ターンの近接攻撃が相手の内臓を揺さぶる。


「みんな離れて!」


 最後の苦し紛れに、毒霧と石霧を繰り出すモーションに入りやがった。


「『継ぎ足』『八艘』『大切断』『剣豪ザァン』!」


 毒を浴びながら、半ば石化しながら、飛び込んで十文字に切り捨てる。それで終わりだ。

『ゼ・ダ=ノゥ』は崩れ落ち、宝箱を残して消えていった。


「サーシェスタさん。状態異常回復ください」


「無茶するんじゃないよ。『ゲィ=オディス』」


「ありがとうございます」



 ◇◇◇



「おおお、やりやがった」


「凄え!」


「あれがマルチジョブってヤツなのか」


 感想と歓声をありがとう。だけど今はね。大切なのはね。


「ターン、宝箱」


「おう」


「こ、これは」


 ターンが開けた宝箱から出てきたのは、大振りの剣だった。


「これはまさか『白銀の剣』!?」


 って、サムライ装備じゃないじゃないか!!



「あの、イーサさん。これを」


 わたしは心の中で血の涙を流しながら、イーサさんにその剣を手渡した。


「『ホーリーナイト』へのアイテムです。レベル40が条件ですけど。壊れません。ずっと使えます。良かったですね。本当に良かった」


「サワさん、何か怖いですよ。ターンさんも目が、目が真っ黒ですっ!」


「やったわね! イーサ!!」


「リッタ様、あんまり嬉しくないというか。お二人が怖いんです!」



 こうして『第1次ヴィットヴェーン氾濫』は一応終息した。だけど、これは始まりに過ぎなかったんだ。



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[良い点] とりあえず氾濫終了 おかわりもあるのか
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