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さあ、とことんレベルアップをしよう! ‐薬効チートから始める転生少女の迷宮譚‐  作者: えがおをみせて
第3章 変わるヴィットヴェーン編

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第65話 リッタは頑張り屋さん




「えい! やあ!」


『訳あり令嬢たちの集い』全員が、それぞれの武器を振り回してる。ここはクランハウス地下の秘密訓練場だ。いいよね秘密。


 その中には、ソルジャーになったばかりのリッタもいる。レベルを上げてもプレイヤースキルを磨かなければ意味が無い。

 基礎ステータスだって上がるし、ウチのクランは読み書き計算、そして体力作りと戦闘訓練を欠かさないことになっているんだ。


 得物を振り回すっていう意味では、リッタは一番の初心者だ。近くで真似をしている孤児たちを除くけどね。

 あれ? 孤児がここにいるのに秘密ってどうなるんだろう。後でお菓子を与えて口封じをしておこう。



 ◇◇◇



「や、やるわ!」


「カエルはデバフってあるから、大丈夫。モンスターを斬ることに慣れてね」


「リッタ様……」


 所変わって迷宮での実戦だ。

 ついでに、リッタにはバフも掛けてある。多分負けないだろうけど、レベル0ソルジャーにやらせることじゃないね。

 前に出たがっているイーサを力ずくで引き留めて、わたしはリッタの戦いを眺めていた。


「毒唾は避けて」


「あうっ」


 そう言った瞬間にリッタは毒唾の直撃を受けていた。


「『キュリウェス』」


 予測と言うか、どこかで食らうだろうなって思っていたから、即座に解毒魔法を飛ばす。敢えて回復は掛けない。


「サワさん?」


「いいですか、これが彼女の為になるんです」


 イーサさんが出す抗議の眼差しは黙殺だ。リッタが強くなるために、必要なことだから。



「やったわよ!」


 うん。たった一匹だけど、それでもリッタはカエルを倒した。返り血を浴びて、所々が青く染まっている。それが前衛だよ。


「じゃあ後はわたしとターン、イーサさんでやるから、一旦チェンジね」


 回復を掛けてあげながら、ポジションチェンジだ。ここから一気にレベルを上げる。


「リッタ、イーサさんの動きをよく見て。あれが前衛だよ」


「分かったわ!」


 わたしは我流だからねえ。

 それにしても、リッタは真摯で素直だ。口だけじゃない、絶対に強くなるって意思が行動から伝わってくる。

 どうしてこんなに良い娘が婚約破棄されるんだか。


 だからわたしは、絶対に彼女を一流の冒険者にしてみせる!



「『BF・AGI』。いい? 敵の動きはどうでもいいから、ターンを目で追って」


「わ、分かったわ」


 今度は7層でマーティーズゴーレムだ。ここはターンの独擅場。その動きを追いかけるだけでも一苦労だ。一応リッタには速度バフを掛けてあげたけど、ムリかなあ。


「何、あれ!?」


 4人のターンが同時にマーティーズゴーレムの両手両脚を叩き切った。


「ターン。『分身』は無しで」


「ん」


 ターンがちょっと不満げだ。どうせ、リッタとイーサさんに良いとこ見せたかったんだろうね。

 だけどそれじゃ、訓練にならないよ。


「次、行くぞ。今度はもっと分かり易く倒す」


「感謝するわ、ターン」


「任せろ」



 まあ確かに次のマーティーズゴーレムは時間をかけて、ゆっくりいたぶられて倒された。


「見えたか?」


「うーん、半分くらいかしら」


「がんばれ」


「頑張るわ!」


 ターンとリッタ、仲が良さそうで何より。



 最後は9層で憂さ晴らしをしてもらう。


「リッタ。魔法を撃ちまくっていいよ。ちゃんと効果範囲を把握してね。食べ残しはわたしたちがやるから」


「やるわ!」


 コンプリートレベルのウィザードが一人いれば、9層は虐殺現場と化す。もちろん倒されるのはモンスターだけだ。同じだけ魔法を撃てるターンは見物だよ。リッタの実戦経験だからね。



 その日、リッタとイーサのレベルは12というところで、帰宅の時間になった。惜しい。



 ◇◇◇



「いやあ、リッタは頑張り屋さんだね」


「ふむ」


「わたくしはいつでも全力なだけよ!」


「リッタ様は以前から頑張っておられましたよ」


 4人でお風呂に浸かり、今日の反省会だ。反省することないけど。


「で、カエルを斬ってみてどうだった?」


「最初は気持ち悪かったわ。だけど途中から、ああ前衛の人たちはこんな感じなんだって思ったら、頑張れたわ! イーサ、いつもありがとう」


「リッタ様……」


 涙ぐむイーサさん。ほんとなんでリッタって悪役令嬢なんだろう。元婚約者は何考えてたんだろ。



「じゃあ明日は31層行くからよく休んでね」


「ええ!」


 リッタとイーサさんは部屋に入っていった。実はこの二人、同室なんだよね。

 イーサさんの護衛根性と、それを受け入れるリッタの度量ってとこなのかな。



 ◇◇◇



「ハーティさん、31層行きませんか?」


「構いませんけど、私、レベル0ですよ?」


「基礎ステータスあるし、9層で一回パーティ分割してレベル上げましょうよ」


「はぁ、分かりました」



 どごんばがんと9層で物騒な音が響き渡る。自らINTにバフを掛けたハーティさんの魔法だ。しかもパーティを分割したから、1人で経験値を吸い上げてる。近づいてきた敵は、剣でバッサリだ。凄いな。

 まあ、わたしたちも他の敵と戦ってるけどね。


「レベル13ですね」


 4時間でこれだよ。


「じゃあ、31層行きますか」


 ターンはレベル18、リッタとイーサさんが14でハーティさんが13って感じだ。わたしは29のまんま。ここまで来ると、流石に上がらないね。

 ベルベスタさんは最近、子供たちと戯れていることが多くって、今回も不参加だ。エルダーウィザードを目指すっていうのはどうなったんだろう。


 5人パーティでしかもアベレージレベルを見れば、31層なんてとんでもないことになる。だけど、中身は違うからね。ずんずんと進軍するのだ。



「あれ?」


 21層で見慣れた人たちに会った。だけど、いつものメンバーと違うね。


「よう、サワさん」


「ダグランさん、ガルヴィさん、その恰好って」


「ああ、メイジになったんだよ。今は『暗闇』に引っ張ってもらってるとこだ」


 そうなんだよ。『暗闇の閃光』の男の人4人とダグランさんとガルヴィさんのパーティだ。

 しかも二人はローブとスタッフっていう、如何にもウィザード系の格好をしてた。


「俺たちもサワさんに感化されちまったのかなあ。ウィザードとプリーストとエンチャンター、どれかふたつコンプリートしてから、前衛に戻るさ」


 なんてこったい。『クリムゾンティアーズ』に続いて、この人たちもか。


「でもなんで21層なんですか?」


「ああ、ここは稼げるし、これ以上は流石に俺らがムリだからなあ」


 そうか。クランの話をしてから5日、ダグランさんとガルヴィさんは、多分まだマスターレベルくらいなのかな。

 それに21層と22層と言えば、ちょっと前までは流行の狩場だ。グラスラビット、チャコールウッドなんかが出てくる。お金になる階層なんだよね。流石は熟練冒険者。折り合いが分かってるって感じだよ。


「あれ、そういえば、例の新人パーティはどうしたんですか」


「あいつらは今日は読書と走り込みだ。サボったら絞める」


 怖い怖い。だけど、キッチリ考えてくれてるんだね。


「うおっ。フライングラビットだ。こいつはツイてやがる」


「じゃあ、わたしたちはこれで」


「おう、そっちも気を付けてな」


 わたしたちは先を急ぐ。



 今日の31層はわたしたちだけだった。


「剣で斬る感覚を掴みたいけど、ここじゃ無理よね?」


「ごめん、そういうことだったら、もっと上が良かったかな」


「いいわ。後ろから戦い方を見てる」


 リッタの向上心が眩しいよ。ソルジャーをコンプしてファイターあたりになったら、どんどん斬らせてあげよう。てか、リッタってベルベスタさん路線だね。

 そのためにも、今はレベル上げだ。わたしとターンにしても、ここまで来ないとそうそうレベルが上がらなくなってきたんだ。



 それから数時間後、ターンが3人を睡眠魔法で眠らせた。わたしとターンはバイタルポーションを飲んでおけば大丈夫。どうせ3時間の間だけだし、寝ずの番は二人で十分だ。


「リッタは凄い」


「そうだね。ほんとに頑張り屋さんだよ」


 やっていることはみんなと一緒なんだけど、リッタの場合はなんかこう、気合が違うんだよね。


「ターンも負けない」


「そりゃもう、わたしも負けないよ」


「最強コンビの座は渡さないぞ」


「おうともさ」


 ああ、ターンといる時間は癒されるねえ。



 明後日までには地上に戻らないとね。

 そうだよ、孤児院の完成が間近なんだ。『ヴィットヴェーン最強計画』がまた一歩前進するんだ。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒頭からの流れでハウス地下の秘密訓練場に カエルが居ると読んでしまい、混乱しました。 区切り記号があった方がいいかなと。
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