表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/245

第181話 未来を見据えて




「ふんすふんすふーん」


 横ではターンがご機嫌だ。ターンだけじゃない、チャートもシローネも、キューンとポリンもだ。

 なんでかっていえば『ライブヴァーミリオン』は当面ヴィットヴェーンに居つくことになったからだね。ターナが王都に『訳あり』の秘密は奥深い、なあんて手紙を送ったんだ。


「そうね、帰るならまず『万象』の倍は強くなってからだわ」


 ターナがまた、えらく高い目標を掲げた。


「やりますわ!」


 それにコーラリアが乗っかる。キューンの耳をわしゃわしゃしながら言うことか。

 キツネ耳って、厚みがあっていいんだよねえ。うんうん。


「むふん?」


 ああ、ターン、ジットリした目で見ないで。どれどれ、わっしゃわっしゃ。タレ耳可愛いねえ。


「ふむ」


 どうやら合格点はもらえたみたいだ。彼女たちセリアンの評価は厳しいよ。



 さて、いつまでになるかわからないけど『ライブヴァーミリオン』の長逗留は決まった。ならやることはひとつだね。


「レベリングです」


 わたしは皆を前に高らかに宣言した。

『第3世代レベリング』。再確認になるけど、第1世代は旧来の冒険者の在り方、第2世代はわたしが提唱したコンプリートレベルからのジョブチェンジ。そしてトレンドは第3世代だ。


「結局いつもと同じで、レベルを50から60まで持っていってからのジョブチェンジね」


 リッタ、正解。まあ、もう実践してるから当たり前か。


「わたしたちにはそれができます。ターナとランデは幸運だよ。バリバリ強くなってもらうからね」


「わかったわ」


「わかったよー」


 ランデ、キャラがニャルーヤとカブってきてるんだけど。


「同時にそろそろ、本命を見据える時期が近づいています」


「どういうこと?」


 リッタが怪訝そうに聞いてくる。だから答えを返す。


「自分が何になりたいのか」


「何に……」


「そうよ、リッタ。わたしたちはなんでもできるように鍛えてきた。でもこの先はちょっと違うの」


「得意分野を作るってことかしら」


「おおむねそのとおりね。前衛、後衛。速い、硬い、力が強い。魔法スキルにしても、攻撃、エンチャント、回復」


 進むべき道だ。まあわたしは決まってる。



「100層に到達したら、超位ジョブへのアイテムが、多分出てきます」


「超位ジョブ……」


 シローネが唸るように言う。


「そう、前に言ったでしょ。例えばニンジャを極めし者、『マスターニンジャ』」


「むふん!」


 ターンの目の色が変わる。


「まったく、のせるのが上手いんだから」


 ウィスキィさんがやれやれっていう表情で言った。


「事実を言っただけですから。じゃあ、次の目標は100層。それと自分の将来の姿です」


 わかってるとは思うけど、美味しいところは最後に残しておくもんだよ。



 ◇◇◇



 正直言って『ヴィットヴェーン』なるゲームはバランスが微妙だ。

 適当にマルチジョブを組んで、レベルを上げれば100層くらいまではそう手間なくいける。問題はそこからなんだよね。レベルさえ上げれば、どうとでもなるけどさ。


「安全マージンがねえ」


「ん?」


「100層より下は、そう簡単じゃないってこと」


「ふむ」


 ターンはどこまでわかってるのかな。

 いや、やろうと思えばやれるよ。ストレートに超位ジョブを取って、バランスがしっかりしたパーティならやれる。わたしも最初はそうするつもりだったし。

 だけど現実をみれば、やっぱり怖い。事故っていうのはいつだって起きるんだ。じゃあそれをどうカバーするかって話だ。


「わたしはどんなときでも最強を目指すことにしてるんだけど、ターンは?」


「当然ターンもだ」


「そっか」


「おう」


『ルナティックグリーン』は55層でカエル狩りをやってる。

 ヴァンパイアエンプレス戦を終えて、わたしたちはジョブを一新した。わたしがガーディアン、ターンはシュゲンジャ、ズィスラとキューンがエルダーウィザードで、ヘリトゥラはロード=ヴァイだ。ポリンはラマをまだ上げている途中だね。

 なんか気に入ったみたいで、レベル70までもってくみたいだ。



 そう、これが答えだ。極限のマルチジョブでスキルと基礎ステータスを武器にする。その上で超位ジョブに就いて、迷宮を突き進むってわけさ。

 なんか生前のノリと変わってるけど、こっちの方が時間はかかるぶん強い。だからやるんだ。


「そろそろ、わたしも、ミヤモトかヤギュウに、なりたいねっ」


「負けないわ!」


 カエル汁を浴びながら、ズィスラも頑張ってる。粘液解除にも慣れたもんだ。

 彼女も30ジョブ超えたんだよね。多分前衛だろうけど、何処へ向かうのかな。楽しみだよ。


「4周したし、そろそろ帰ろっか」


 55層で狩りを終えれば、帰り道は59層だ。


「『セーフリームニル』」


 ポリンの一撃でエルダー・リッチが消えた。ここの戦いも、もう慣れちゃったね。


『マピマハロ・ディマ・ロマト』


 おなじみ『ガル・ハスター』の呪文で、わたしたちは地上に戻った。そんな日常だよ。



 ◇◇◇



「80層、いけそうですか?」


「ウチはまだだねえ」


 うーん、いけると思うんだけどアンタンジュさんは良い顔をしなかった。『クリムゾンティアーズ』はまだ55層で粘るらしい。


「いける」


「やれるわ」


 逆にシローネとリッタは自信満々だ。70層を拝んでからまだ1週間だけど、『ブラウンシュガー』と『ブルーオーシャン』はやる気に満ち溢れてる。


「『ライブヴァーミリオン』は当面、王女殿下たちの育成ね」


 クリュトーマさんが優雅に言うけど、育成って表現マズくない?


「やるわ」


「頑張りますよー」


 ほら、二人に火を付けてるし。



「じゃあどうしよう。3パーティでいってみる?」


「むふん」


「いけるぞ」


「当然やるわ」


 だそうな。


「んじゃ、レベル60の後半までいったらアタックってことで」


「おう!」


 そんな『ブラウンシュガー』と『ブルーオーシャン』といえばだ。

 チャートがガーディアン、シローネはツカハラ、リィスタがロード、シュエルカがナイチンゲール、ジャリットはユーグ、テルサーがエルダーウィザードだ。

『ブルーオーシャン』はリッタがシュゲンジャ、イーサさんがウラプリースト、ワンニェがヴァハグン、ニャルーヤはシュゲンジャ、ワルシャンはウラプリースト、そしてシーシャはなんとヴァルキリーだ。



「シーシャとワルシャンって超位ジョブの条件、レベルとアイテムだけになっちゃったね」


 そうなんだよね。超位ジョブへのアイテムとレベル100があればいけるんだよ。


「まだまだです」


「これからですぅ」


 謙虚っぽいけど、後発組の二人がここまで来たかあ。感慨深いね。

 実はヴァルキリーって、性別縛りだ。男性冒険者なら、ホワイトロードとロード=ヴァイのふたつで上にいけるけど、女性の場合ヴァルキリーが追加される。

 まあその上のジョブが違って、しかも女性の方がパラメーター上位なのが面白いんだけどね。


「それに、ナイトとビショップ系は結構アイテム出ますし、モンクも」


 確かにシーシャの言う通りだ。

 取る取らないはどうとして、硬くしておくことに越したことない。やるぞお。


「ワルシャンはどうするの?」


「他のジョブを経由してから、モンクの頂点って考えてますぅ」


 ネタバレになるからモンクの頂点はおいといて、たしかに『ブルーオーシャン』で、ワルシャンがモンク系なのは悪くないよね。

 リッタはウィザードで行くだろうし、イーサさんはナイトかロード、シーシャはもしかしたらビショップ系かな。ワンニェとニャルーヤは絶対アタッカーになりそうだよ。


「でもさ」


「なに? サワ」


「こういうのを考えてる時間って、楽しいよね」


「まったくもう」


 リッタがため息を吐くけど、これってワクワクする状況じゃない?

 未来を見据えてどういう役割を担っていくのかってみんなと相談するの、すっごい楽しいよ。



「ウチもやるわ!」


「まあまあ、ズィスラ。『ルナティックグリーン』はここからが本番だよ」


「うん!」


『ルナティックグリーン』はちょっと凄いことになってる。ジョブが一番少ないヘリトゥラでさえ、26だ。これからを考えると強いよ、ウチはさ。



 ◇◇◇



 こういうのを『好事魔多し』って表現するんだっけ。そいつらがやってきた。

 ベースキュルト・レディア・ブルフファント。例の侯爵令息と、ポリュダリオス・スワスノヴィヤ・ランド・キールランティア。すなわち第5王子だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >『ライブヴァーミリオン』は当面、王女殿下たちの育成ね」 プリンセスメーカー?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ