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さあ、とことんレベルアップをしよう! ‐薬効チートから始める転生少女の迷宮譚‐  作者: えがおをみせて
第4章 冒険者と貴族編

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第102話 もしかして、本当は良い奴なのかも




「ほれほれ、甘いよ」


「くっ」


 ひゅん、ぱしんと、乾いた音が響く。

 ここは迷宮でも地下訓練場でもない。裏庭の芝生の上だ。俗に言うドッグラン。


 サーシェスタさんが、ドールアッシャさんに稽古をつけているところだ。レベル差が凄すぎて、全く相手になっていないけど、型は大切なんだそうな。

 ちょっと離れたところでは、イガニンジャとハイニンジャが交錯している。視認が難しい。


「跳んだ時に、両手両脚とシッポを使うんだぞ」


「おう」


 そこ、スキルも無しに空中で軌道を変えない。ターンが空中で蹴りを出したかと思えば、身体がブレる。どうやってるんだろ。



 緊急会議の2日後、わたしたちはお日様の下でのんびり訓練をやっている。

 わたしなんかは毎日迷宮でも平気なんだけど、他の人たちはそうでもないらしい。


 ワンニェとニャルーヤはソルジャーのレベル18、ドールアッシャさんはモンクのレベル15になっている。

 会長さんたちにやったみたいに、ハイパーレベリングはしていない。実戦経験をキッチリと積んでもらいながら、それでも常識を超えた速さでレベルを上げているんだ。これぞ『訳あり』流。


「昨日は会わなかったみたいね」


「ええ、本当に気が気じゃありません」


 わたしと言えば、ウィスキィさんと一緒に素振りをしているところだ。


 今日、迷宮に潜っているのは、わたしとターン以外の『ルナティックグリーン』と合流したワンニェとニャルーヤだけだ。

 ズィスラはついにウィザードになって、ヘリトゥラはファイター。前衛と後衛が入れ替わったね。そろそろ将来のメインジョブを見込んでも良い時期じゃないかな。


 そんな彼女たちも夕方には戻ってくる予定だ。



 今日は、育成施設で『訳あり』『世の漆黒』合同の夕食会なのだ。たまにはこういうのも良いかなって思う。



 ◇◇◇



 しかして夕方、迷宮組が戻ってきた。あれ?


「どしたの、リッタ」


「迷宮であいつに会ったわ」


「あちゃあ」


 あからさまに不機嫌なリッタだった。そりゃあねえ。


「それでね、夕食会を理由に急いでいるって話をしたら、これをって」


 リッタがインベントリから取り出したのは、一抱えもあるお肉だ。それって、ジャイアントカウのかな。10層から15層辺りに出てくる、ヴィットヴェーンの名物食材だ。


「どういうこと?」


「こういうことはあんまり言いたくないのだけど、あいつはね」


 何か嫌な予感がしてきたぞ。


「女性にだらしなくて、尊大で、自信過剰のチャラい男だけど……、気前は良いの」


 親分かよ。


「ついでに言えば、卑怯なことが嫌いで、貴族としてはちょっと考えられないくらい正義感があるのよ」


 良い奴だったー! いや、全面的に良い奴ってワケじゃないけど、それでもマシな部分あるんだね。何かむしろ、やりづらくないかこれ!?


「どうもね、サシュテューン伯が後ろ暗いやり方をしていたのが気に入らなくって、事ある毎に反発していたらしいの。それでわたくしとの婚約破棄を理由に廃嫡されたってわけ。あーあ、言わないつもりだったのに」


 どうしよう。苦手なのは相変わらずなのに、わたしが悪者になった気分だよ。


「サワ、だめよ。あいつがクズ野郎なのは本当なんだからね」


「う、うん」


 なんでわたしが遠距離精神攻撃を受けなきゃならないんだろ。



「へえ、妙なヤツなんだな」


「そうなんですよ」


 夕食会でわたしは、ダグランさんとガルヴィさんに愚痴っていた。

 育成施設のみんなは、普段より豪華な食事に大喜びだ。冒険者たちに迷宮の話なんかを聞いている。くくくっ、わたしの冒険者育成計画は順調だぜ。


「それがなあ、サワ嬢ちゃん」


「な、なんですか、ケインドさん」


「昨日の話なんだけどな、ウチの若いのが助けられたんだ。その『なんとかの薔薇』に」


「ぐぼあぁ!」


「10層でしくじったらしくてな。戦闘後に治療スキルが尽きてたらしい。そこに通りかかった例のパーティがわざわざ治療してくれたってわけだ。そっちに因縁はあるかもしれんが、俺としては感謝するしかない」


「そ、そうだったんですか。助けられたパーティに女性は?」


「そういう話だったか。だけどな」


 ああ、もう聞きたくない。


「『1年後にまたおいで』だそうだ」


「ぐっはぁ!」


 なんだこの不良が雨の中で猫を助けたみたいな話は。ダメだぞわたし、冷静になれ。騙されるな。いや、相手は別に騙してないんだろうけど、それでもダメだ。

 はっ、まさかこれは、サシュテューン伯爵の罠じゃないだろうな。わたしを混乱させるための鉄砲玉だとか。恐るべし貴族の策謀だ。


「なあ、サワさんはどうしたんだ?」


「気にしなくていいですよ」


 ガルヴィさん、ハーティさん、酷すぎない?



 ◇◇◇



「ああ、彼はね、なんと言うか自分に素直なんだよ」


 会長が苦笑いをしている。ウォルートさんはいつも通りだけどね。

 今日は会長とウォルートさんのハイパーレベリングだ。メンバーはわたしとターンだけだね。


 会長はいよいよハイウィザードで、ウォルートさんはプリーストだ。ウォルートさんはこの後ヘビーナイトになる予定だけど、一応今回のレベリングで契約を満了することになった。

 曰く、最後のジョブだけは、自分の力でレベルを上げるだそうだ。男前。あ、あいつなんかとは違うねっ。


 いやいや、冗談。胸がドキドキしてるわけじゃないし、あいつのことを考えると、っていうのもない。

 正直、視界から排除できないのが、もどかしいんだ。


「家名詐称については見逃してやってもらえるかな。意外と良い男なんだよ」


「はあ、分かりました」


「分かったぞ」


 不敬という意味ならターンがぶっちぎりなので、それくらいなら見逃そう。

 会長の面白そうな笑顔が気になるくらいだ。


「サワ嬢にも苦手なモノはあったんだね」


「沢山ありますよ」



「やあ、奇遇だね」


 9層でターンがモンスターを焼き払っている時だった、ヤツが、ジュエルなんとかと『なんとかの薔薇』が現れたんだ。

 会長とウォルートさん? 背負子に乗ってるよ。


「やあ、ジュエルトリア」


「面白い格好だね、ジェルタード」


 そう言えば似てるね、この人たちの名前。貴族の流行りなのかな。

 ところでわたし越しに会話をするのは、止めてもらえないかな。しかも背中向けてる形なわけだし。あ、そうだ。


「先日は贈り物をありがとうございました。それと『世の漆黒』を助けてくれたんですよね。それもありがとうございます」


「ははっ、気にしないでおくれよ。孤児たちに贈り物をするのも、傷ついたパーティを助けるのも、俺たちが勝手にやったことさ。冒険者は見捨てない。そうだろう?」


「あははは、そうですね。本当にそうだと思います」


 ああ、こいつはリッタを振ったろくでもなしだけど、冒険者だったんだ。

 許すことはないだろうし、慣れ合うこともないだろうなあ。だけど、認めてあげるし、絶対に負けてなんかやらない。


「ちゃんと自己紹介をしておきますね。こちらはターン。『訳あり令嬢たちの集い』2番隊、『ルナティックグリーン』の隊長です。そしてわたしはサワ・サクス・サワノサキ。『訳あり』のクランリーダーです」


「ご紹介ありがとう。こちらも、もう一度名乗っておこう。俺はジュエルトリア・イル・サシュテューン。『咲き誇る薔薇』のリーダーで、ヴィットヴェーン最強を目指す男だ」


「ご丁寧にありがとうございます。しっかりと覚えておきますね」


 ははっ、誰が最強になるって? わたしとターンに決まってるだろうに。



「ジュエル、こんなチミっこい女に構ってないで、早く行こうよ」


「ああ、分かったよアリシャーヤ」


 ただしアリなんとか、おめーは別だ。



 ◇◇◇



 1週間後、ついに『世の漆黒』のクランハウスが完成した。

 育成施設にいる冒険者を希望する子たちにとって、新しい生活の場になるんだろうね。


 造りは『訳あり』のクランハウスと一緒で、H型になってる。繰り返しになるけど、地下秘密基地はオミットされてる。アレはわたしたちだけの秘密だ。バレてるんだけどね。


「おめでとうございます」


「おう、ありがとよ。こっからの返済が大変だぜ」


 クランリーダーのケインドさんがボヤくけど、顔はニヤけてる。

 そうだよね、一度は消えかけたクランが、基になった理念と一緒に大きくなるんだ。嬉しくないはずがない。それと、借金は催促無しの低金利だから大丈夫。



「やあ、お呼ばれに与り参上したよ」


 ジュエルトリアと『咲き誇る薔薇』が登場した。招待したのかよ。恩義があるから仕方ないか。



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