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当たり前って何?

シャーネイドに向かう小型飛行挺内

「歓迎されるとは俺達も有名人になったなぁ。」

「ホントッ!やっとアイドルって感じがする!」

郷田達が騒いでいると中島先生達が気まずそうに話しかけた。

「あの、私達も新庄さん達と一緒に復興の手伝いをしないと・・・」

「新庄さんが俺達でやるって言ってましたよ。それに歓迎会ならなるべく多い方が楽しいですよ。」

心配する中島先生に日比野が明るく話した。エルシアナや皇凰院も残ろうかと考えていたけど日比野達が心配するなと励ました。

「そうね。夢宮君や新庄さんの分まで楽しみましょう!」

「これも怪獣の罠だったりして・・・」

「やめろ。マジでそうなりかねん。」

みんなが楽しみにしていると郷田がボソッと呟いた。

「一応、そっちも警戒しようと思う。」

「そうだな。」

怪獣を警戒はしているが歓迎会ということで和気藹々としていた日比野達を天谷はじっと見つめていた。

「どうしたの?」

近くにいた堀垣が聞くと天谷は小さな声で語り始めた。

「みんな、活躍してカッコよくて羨ましいなって。私、戦いなんて全然ダメで気も小さくて怖がりだからみんなの役に立てないなって。」

「そんなことないですよ。」

天谷が語ると前の座席にいたエメラナがひょっこりと出てきた。

「私も戦いしたことないです。でもみんなと一緒にいるのに資格なんていらないです。そんなの当たり前です。」

「エリー・・・」

天谷はエメラナの言葉に励まされ少し笑みをこぼした。


そして、一行を乗せた小型飛行挺はシャーネイドに着いた。小型飛行挺から降りると街の人達が大歓迎してくれた。

「ようこそ!シャーネイドへ!」

「お待ちしてました!」

歓迎してくれた街の人達に日比野達は少し恥ずかしそうに市長に案内されて豪華なお屋敷に入った。

「す、すげ~。」

「なんか超お金持ちになった気分・・・」

「私の別荘みたいですわ。」

「恵ちゃん・・・」

豪勢なシャンデリアや凝った作りの手摺が付いた階段に日比野達が見とれていると食堂に着いた。そこも純白のテーブルクロスにドラマでしか見たことないような燭台に銀色の皿など日比野達が舌を巻くような光景だった。

「さぁ、皆さん。こちらでディナーとしましょう。それまで寛ぎください。」

市長はそう言うとどこかへ行ってしまった。残った日比野達はお屋敷の散策だったり街を散歩し始めた。

佐古水も天谷と一緒にしばらく街中を散歩していると広場の噴水で一人座っている堀垣を見つけた。

「どうした?」

佐古水が聞くと堀垣は街の人達を見ながら話し始めた。

「この街の人達はみんななんで痩せ細っているんだろうと思って・・・」

堀垣の発言に佐古水と天谷が周りを見ると確かに街の人達はみんな頬が痩けたり中にはあばら骨が剥き出しになっていそうな人もいた。

「確かにおかしいな。」

佐古水が近くにいた男性に話を聞いた。

「すみません。1ついいですか?」

「え、はい。大丈夫ですけど。」

「痩せているように見えますが大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。最近、怪獣被害と干魃が続いて飢饉状態になってまして・・・」

「そんな時に俺達の歓迎会をして大丈夫なんですか?」

「は、はい。大丈夫です。皆さんにはその・・・良い気持ちになっていただきたいと思っていますので。すみません、失礼します。」

そう言って男性はそそくさと去っていった。

「いきなり歯切れが悪くなったな。なんかあるな。」

「うん・・・」

(そういえば子供も見ないね・・・)

佐古水達は何か隠しているのではないかと疑いつつも集合時間が迫っていたのでお屋敷の食堂に戻った。

食堂に戻ってしばらくすると市長達が日比野達に豪勢な食事を用意した。

「すげぇ。初めて見るぜ。こんな豪華な料理。」

「確かに・・・」

並べられた料理を見て郷田達は感激していた。それから日比野達はいただきますと挨拶して食事した。

「市長さん達も一緒に食べましょう。」

「いえ、私達は大丈夫です。」

「最近の不況で飢饉になったと聞いています。そんな中でもこんな美味しい料理を用意してくれてありがとうございます。皆さんにそのお礼がしたいです。」

「それに食事はみんなで食べた方がもっと美味しいですよ。」

日比野達は一緒に食事しようと誘ったが誰も誘いに応じることはなかった。すると、堀垣がフォークを置いて立ち上がった。

「ん?どうした?」

「ごめん。僕はちょっとトイレに行ってくるよ。」

堀垣はそう言って食堂を出て行った。すると、堀垣を心配した天谷が立った。

「私、堀垣君を見て来ます。」

「大丈夫だろ。堀垣のことだから大したことないって。」

「一応、俺も行こう。御馳走様でした。」

すると、食べ終わっていた佐古水も立ち上がって天谷と一緒に食堂を出て行った。


「堀垣ー!このトイレでもないのか。一体どこに行ったんだ・・・」

「堀垣君、大丈夫かなぁ?」

佐古水がトイレに行って確かめているのを待っていた天谷は窓の外で一人座っている堀垣を見つけた。

「?」

天谷は急いで外に出て堀垣のところに向かった。よく見ると彼は元気がなくため息をついて何か物思いに耽っていた。

「どうしたの?」

「ん?なんか食欲が湧かなくって・・・」

「?」

「僕は食べることが大好きで食べることができるのは当たり前だと思っていた。けどこの街の人達を見るとその当たり前がなくてなんか淋しい気持ちになったんだ。」

「そうなんだ・・・」

堀垣の隣に座った天谷は夜空を見た。

「私もみんなと一緒に学校生活が出来ることが当たり前と思ってたの。でも世界にはそんな当たり前が出来ない人達がたくさんいる。でもそんな人達を少しでも減らしたいと思って色んなボランティアに参加したことあるの。そんな少しずつから始めたらいつかみんなが当たり前にできると思うの。ど、どうかなぁ?」

「すごいね。僕は自分のことで精一杯だったから。友達付き合いも苦手だったし勇輝と快翔がいなかったら僕はずっとひとりぼっちだった。そんな僕でも変えれるのかな?」

「変えれるよ。きっと・・・」

そう言って天谷は堀垣の肩に寄り添った。

「天谷さん!?」

「・・・なんかごめんね。急に眠くなっちゃった。少しだけ眠らせて。」

「う、うん・・・」

天谷はそのまま堀垣の肩に寄り添って眠った。


一方、トイレでは佐古水が、食堂では日比野達が眠るように倒れていた。

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