過剰戦力の暴走(前編)
デモンストレーション当日
デモンストレーションが行われるメレバスアリーナには多くの観客達が訪れていた。中には各国のお偉いさんや科学者達もいた。
ウルトラレックス達が特別席を歩いているとシグマが座っていた。その隣にはイスルギとレーテリウスもいた。
「あれ、シグマさん!皆さんも!」
「ん。レックス達じゃないか。久しぶりだね。」
「シグマさんも来ていたんですか?」
「えぇ。」
「メカギルザのデモンストレーションに呼ばれてな。メレバスもエリアルシティと同じくストレイザーやGパワードスーツの開発に力を入れているところだ。そこが新しい兵器の紹介するっていうからな。」
シグマの代わりにイスルギが答えた。現在、シグナルベースはかなり復旧が進みほとんどの機能は元通りになっていた。
「それでこのデモンストレーションに参加したと。」
新庄はそう言いながら演習場に並んでいるヘブンとヘブンリーを見た。
「まぁな。デモンストレーションの手伝いに量産型ストレイザーのヘブンとヘブンリーを貸して欲しいということだとよ。」
ウルトラレックス達が話しているとアナウンスが流れてきた。
『え~、これから対大型怪獣決戦兵器用次世代ストレイザー、”ストレイドモンス“メカギルザのデモンストレーションを行います。今回は特別ゲストとしてトゥルディス教教皇、フィディス・キリエロファント様がお見えになられました!』
アナウンスが流れるとフィディスが大型モニターに映し出された。その瞬間、観客席から歓声が聞こえてきた。
「さすがの人気だな。」
「この世界唯一の宗教教祖様は違うね。」
モニターで手を振っているフィディスをルギリナは黙って見ていた。すると、大きな影ができ、上を見るとメカギルザが通り過ぎ演習場の真ん中に着地した。
『さぁ、ご覧下さい。メカギルザは3年前に倒したギルザラスの死骸をベースに作られました。そのためメインフレームおよび魔導コンピューターによる制御でストレイザーより生物的な細やかで素早い動きが可能となります。また、背中には大型飛行戦艦に使われるマジックバーニアを2基搭載しています。そのため、約マッハ10での飛行が可能となります。コックピットには操縦する際に発生するGに耐えられるように魔法で覆いパイロットは常に平衡状態で操縦することができます。』
アナウンスと共にメカギルザは飛び上がるとものすごいスピードで空中を縦横無尽に飛んだり回転しながら低空飛行を続けたりした。
『お次は武装です。メカギルザには右肩のマジカルレールキャノン、左肩のプラズマショットキャノン、背中のバックパックには追尾式ミサイルが主な遠距離用武装となります。また、右腕は伸縮自在なギルザクロー、左腕には水魔法により収納可能なスパイラルブレードを装備、これにより打撃、斬撃による接近戦もできます。その他にも口から光魔法を放つマキシマムストライク、目から雷魔法を放つサンダーメーサー、尻尾に風魔法を纏って放つネオストームテール、右腕に闇魔法を纏って殴るダークブローを使用することができます。』
メカギルザは今度はヘブンが出した的を各武装で撃ち落とした後、ギルザクローとスパイラルブレードを使って高速移動しているヘブンリーが持っている的や放ったミサイルなどをを攻撃して落とした。
「確かに凄い技術だ。」
「ここまで進化していたとはな。」
その様子を見ていたイスルギ達も感嘆の声をあげた。そして、デモンストレーションが終盤になるとコスモスが現れた。
「先生、いないと思ったらあんなところに・・・」
ウルトラレックス達が見守る中、コスモスはメカギルザに向かってヴァリアブルランチャーを発射した。すると、メカギルザは胸を開けてグラドラスを倒した巨大なレーザーを発射した。両者の攻撃がぶつかった瞬間、メカギルザのレーザーが押し勝ち、コスモスの上を通過した。
『そして、最大の武装はご覧の通り、胸から放たれるポジトロン・ハイパー・プロミネンス・ゼロになります。炎魔法を最大限まで濃縮して放つことで約1兆度の火力で相手を蒸発させます。また、火力を抑えることによって連射も可能となります。』
「1兆度は言い過ぎじゃないか?」
「っていうか、あんな危険なのを先生に撃ったの!?」
「ひでぇ・・・」
『そして、”ストレイドモンス“メカギルザの最大の特長はなんと、外部から魔力を供給することで半永久的に活動が可能という点です!メレバスフォースセンターのアンテナからメカギルザの背中にある鰭へ魔力を無線で繋ぐことによりストレイザーとは違って魔力切れを起こすことはありません。』
「それは確かに画期的だ。」
「凄い。でも防衛目的にしてはちょっと過剰過ぎない。」
「そうだな。一歩間違えれば戦争の兵器になる。そこは扱う人間次第だな。」
デモンストレーションもそろそろ終わろうとし、観客達も盛り上がっていた。その時、メカギルザがいきなり止まってしまったのだ。
「えっ?」
「なんだ?」
観客達が不思議に思った瞬間、メカギルザは観客席に向かってマキシマムストライクを放ってきたのだ。
「!」
「なにぃ!」
いきなりのことで慌てる観客達、ウルトラレックス達も行動が遅れてしまい間に合わなかった。その時、観客席の前に大きな光の盾が現れ、観客達を守った。
ウルトラレックス達が驚いていると観客席の前にフィディスが現れた。すかさず、ウルトラレックス達もフィディスのところに移動した。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。それより早く皆さんの避難を。」
「それは新庄さんやシグマさん達がやってくれるみたいです。」
「それより、あれはどうなってんだ?まさか、あの女の反乱か?」
「それは私にも分かりません。今は一刻も早く止め彼女を助けることに専念しましょう。」
「はい!」
ウルトラレックス達はこっちに向かって来るメカギルザに対して臨戦態勢をとるのだった。