魔王と龍と教皇の特訓
日比野達が依頼でパネットに行く少し前
ウルトラレックス達はメレバスから北にあるラウマシティという街にいた。この街は1年前にギガヒュドラによって破壊され今は廃墟しかないところになっていた。
「ここは?」
「コロッセオ。ローマというところから来た人達が建てた場所で昔は奴隷同士を戦わせていたけど奴隷制度が撤廃されてからはトーナメントバトルや勇者の儀式なんてもんをする神聖な場所になってるらしい。」
ルギリナがメモ帳を見ながら説明した。そのままコロッセオの闘技場に入るとルージュがドラゴンに戻った。
「これから特訓を始めるのじゃ。」
「え、今からですか!?」
「当たり前だ。すぐ強くなりたいならすぐ鍛練だ。私の父はよく言っていた。」
そう言ってルギリナは周りに黒い球を浮かべた。
「えぇっとルギリナさん、それは?」
「今からこれをありったけ撃つから耐えろ。」
「「え?」」
「始めるぞ。」
ルギリナはそう言うと黒い球を二人に向かって放ち始めた。そして、ルージュは飛ぶと上から火の玉を二人目掛けて放ってきた。
「いやぁ!」
ウルトラレックスとキュアリアスは涙目て叫びながら攻撃を避け逃げ出した。
「逃げるなぁ!」
「これはお主らに耐性をつけさせる訓練じゃ!」
ルギリナは鬼のような表情で黒い球や炎を二人に向けて放ちまくっている。すると、観客席の方に一人の青年がいるのに気付いた。
彼は白い法衣に立派な冠をしていて手には本を持っていた。その彼に黒い球と火の玉がいくつも迫っていた。そして、青年に命中し爆発した。
「あ・・・」
黒い球が彼に命中するとウルトラレックスとキュアリアスたげではなくルギリナとルージュもヤバいという顔をしていた。
しかし、煙が晴れると無傷の青年がいた。青年が無事と分かるとウルトラレックス達はホッとした。
「び、びっくりした~!あの、そこで何しているんですか?」
「すみません、この街の聖徊していると大きな音がしましたので気になりました。」
「聖徊?聖徊ってなんですか?」
キュアリアスが青年に質問すると彼の後ろから彼と一緒に来たと思われる修道服を着た人達がやって来た。
「待ってください、教祖様!いきなり行かないでください!」
「教祖様!?」
「はい。申し遅れました。私、トゥルディス教教皇のフィディス・キリエロファントと申します。」
「え、えぇー!」
いきなり現れた青年がトゥルディス教教皇であると知ったウルトラレックス達は驚愕した。ウルトラレックスとキュアリアスはトゥルディス教のことは日比野達から聞いていたが実際に見たことがなくルージュはトゥルディス教すら知らなかった。しかし、ルギリナだけは冷静にフィディスを見ていた。
「なるほど。お前が人間と怪獣を仲良くさせようとしている愚か者か。」
「な、何を言っているんですか!?」
「いいんです。私はただ戦争が嫌いなだけです。人間と怪獣が争うことない世界を造りたいのです。」
「詭弁だな。」
ルギリナがフィディスを貶したため信者達はルギリナを睨みつけていたがフィディスは笑顔で信者達を宥めるとウルトラレックスとキュアリアスを見た。
「そういえば、何かお困りになっているようですが?」
「え、えぇ、実は・・・」
フィディスに言われてドキッとしたウルトラレックスは自分の悩みを打ち明けた。
自分は異世界から来た人間であること、怪獣にされてしまったこと。悩みを言っているとフィディスがウルトラレックス達に提案してきた。
「でしたら変身はどうでしょうか?」
「変身ですか?」
「えぇ、怪獣が人間に変身する方法は二つあります。まず、変身魔法で人間に変身するというものです。」
「変身魔法?」
「つまり、こういうことじゃ。」
キュアリアスが疑問に思っているとルージュがドラゴンから人間の姿に変身した。
「あ、それって魔法なんだ。」
「そうじゃ。変身魔法は変身したい者を想像した後に魔力で自分や他者を想像通りに形成させる魔法じゃ。慣れれば誰でも使えるぞ。」
「はい。それと怪獣の能力として人間に変身する方法です。こちらは変身魔法とは違って魔力を必要としないですが使える者は限られます。」
(それって溝霧君のことかな・・・)
フィディスの説明を聞いていたウルトラレックスは怪獣側についた溝霧ケイのことを思い出していた。
すると、地震と共にラウマシティの東の方で地割れが発生した。そして、そこから怪獣が現れた。
「な、何が起こったんですか!?」
「怪獣です!怪獣が現れました!」
「あの怪獣ってあの時僕が倒した怪獣だ。」
そう。その怪獣は以前、マークタウンでウルトラレックスが異世界に来て初めて倒した怪獣、グラドラスだった。
解説集
聖徊
怪獣によって被害を受けた街などに赴いて黙祷や祈りを捧げるトゥルディス教の活動の一つ。