調査(前編)
満身創痍の勇輝に日比野は剣を向けていた。
「夢宮、お前は本当に怪獣になったのか?」
「え?」
「昼森達を殺したのはお前なのか!?」
「ち、違う!僕じゃない!」
「悪いがそんなものは信じない。お前と星雲寺、二人ともこの短期間のうちにさらに怪獣に近づいた。」
日比野の後ろにきたテレサが勇輝に詰め寄っていた。
「星雲寺は翼が生えた。お前はバリアを張り、怪獣を倒した光線も吐いた。お前達はもう怪獣だ。人を殺すことができる狂暴な怪獣だ。」
「そんな、違います!僕はただ無我夢中で!」
勇輝は必死に弁明するがテレサや日比野は聞いてくれなかった。
「夢宮、俺もお前が人殺しと思いたくない。けど、あの状況でどうしろと。」
「そ、それは・・・」
勇輝は言葉に詰まった。周りを見ると空咲が睨んでいた。
「最っ低。」
その一言に勇輝の目から光が消えた。日比野達も勇輝を捕まえようとした。
その時、勇輝と日比野の間に佐古水が割り込んだ。
「な、佐古水!」
「佐古水さん、どうしたんですか!?」
「悪いが俺は夢宮が最低な奴には見えない。」
「え?」
「何のつもりだ?」
テレサが詰め寄ってくるが佐古水は一切引かなかった。
「僕も夢宮さんは殺してないと思います!」
「俺だって勇輝が人殺しには見えないぜ。」
「僕もそう思う。」
「わ、私も夢宮さんは違うと思います。」
佐古水の言葉に感化されたのか溝霧、郷田、堀垣、天谷も勇輝を弁護した。
「あぁ!」
「い、いえ。何でもありません。」
しかし、飛鳥崎に睨まれ堀垣や天谷は萎縮してしまった。
「おい、佐古水。お前、夢宮が犯人じゃない証拠はあるのか?」
「ない。」
飛鳥崎の質問に佐古水ははっきり答えた。
「証拠も根拠も何もない。これは俺がそう思うからここに立っているだけだ。」
そう言って佐古水は日比野の剣を掴んだ。手が切れ、血が流れても佐古水は手を離さなかった。勇輝はその姿を見て目に少し光が灯った。
「佐古水君・・・」
「待ってくれ、佐古水!君も見ただろ!あの状況で二人以外に犯人がいるのか!?」
「それを今から調べたらいいだろ!」
「そうだよ!そもそも、どうやって夢宮さんはあの扉から出たの!?」
「それは多分、昼森達が開けたんじゃない?」
「確かにあいつらならあり得るな。」
溝霧の質問に空咲と姫樹が答えた。
「佐古水、お前の気持ちも分かるが今、一番怪しいのは夢宮なんだ!」
「だが、夢宮は自我を保ってる!俺達を守ろうとしただろ!」
「動くな、佐古水。」
日比野と佐古水はお互いに引かなかった。そこに、橘がライフルを佐古水に向けた。そして、ラッセル議長が勇輝を特殊なライフルで気絶させた。
「悪いが佐古水君、今は彼を第1級危険怪獣として収容する。犯人探しは後だ。」
「そういうことだ、佐古水。はっきり言って私は夢宮が昼森達を殺したと思っている。」
そのまま勇輝はラッセル議長達に連れていかれた。佐古水達はその姿を見てることしか出来なかった。
城の地下、そこには特殊なカプセルがあった。
そのカプセルは中に大量の液体が入っていて、そこに勇輝が入っていた。
「これは?」
「これは怪獣仮死保存カプセルだ。中の液体で彼を仮死状態にして収容する。開けるには私の指紋、網膜、パスワードが必要だ。」
「完全に悪者だな。」
「悪いが私はトゥルディス教信者ではない。怪獣は全て倒すべきと考えている。」
「もし、いい怪獣がいたらどうするんですか?」
「じゃあ、聞くが君はいい怪獣と悪い怪獣の区別がつくか?」
「え?そ、それは・・・」
「だろ。それに君達のクラスメートが自我を失ったのを忘れてないだろう。彼がいつ自我を失って暴れるのかわからない今、殺さないだけありがたいと思うべきだ。」
礼崎の質問にテレサが答え、礼崎に問いかけた。礼崎はテレサの問いかけに答えることができなかった。
他のクラスメート達も何も言わず、ラッセル議長達と一緒にこの場を後にした。
その日の深夜、クラスメート達が泊まっているホテルの一室
そこに手当てをした佐古水がベッドに横たわっていた。すると、ドアからノックの音がした。佐古水がドアを開けるとそこには郷田がいた。
「よう、佐古水。俺と一緒に勇輝の汚名返上、無実の証明をしないか?」
「今、それを考えてた。」
「よし、そうとくれば俺の部屋に集合だ。」
二人が郷田の部屋に着くと中には堀垣、天谷、溝霧、小石川、礼崎がいた。
「よぅし、これから夢宮勇輝無実調査隊結成だ!」
「よしきたー!」
「で、まずは何をする?」
「え、えーと、それは・・・」
「考えてないのか。」
「今から考えます。」
「じゃあ、まずは俺達のアリバイ調査だ。」
「え、佐古水。もしかして、俺達の中に犯人がいるといいたいのか!?」
「俺はまず、クラスメート全員を疑う。で、全員白なら他の人の調査をするってことだ。」
「まじか。」
こうして、夢宮勇輝無実調査隊のメンバーはクラスメートのアリバイ探しを始めた。
翌日の夜、郷田の部屋
「それで、アリバイは分かった?」
郷田の質問に佐古水が最初に手を挙げた。
「まず、昼森達の殺害時刻は17時半から18時の間だ。」
「その間は俺達、資料室にいたよな。」
「あぁ、16時からいたが一回解散したのが17時過ぎ。最終的に解散したのが18時頃だ。つまり、この時点で俺と中島先生、委員長、朝比奈の四人のアリバイが証明された。」
「佐古水と解散した後、俺は城を出てすぐに溝霧と別れ買い物をしてた。」
「僕は、そのままホテルに向かいました。」
「ということは二人はアリバイ無しか。」
「まじかあぁ、こんなことなら解散するんじゃなかった。」
「次、私いくね!」
次は礼崎が手を挙げた。
「私は昼過ぎから食事に呼ばれるまで部屋でアイドルの練習をしてました!」
「ここでもアイドルかよ。」
「この世界だからこそ、私のようなアイドルが必要なの!」
「おい、話が脱線してる。」
「あ、すみません。それで、流衣ちゃんに手伝ってもらって調査したら私の他には山瀬ちゃんと飛鳥崎君と麗奈ちゃんが昼の食事が終わってから18時過ぎまでホテルにずっといたって。でも、みんな誰にも会ってないって言ってたよ。それと、流衣ちゃんはGパワードスーツの開発が終わったらすぐに街に探索に行ったって。」
「なるほど、分かった。」
「では、次はわたくしが。」
次は小石川が手を挙げた。
「わたくしが解散した後はすぐにGパワードスーツの開発に行きましたわ。」
「時間は?」
「終わったのが18時ですわ。それと、わたくしがきた時には既に姫樹さんがいらっしゃいましたわ。」
「あの、私はエリー(エメラナ)と一緒にオペレーションルームでオペレーターの練習をしてました。昼過ぎからずっとです。」
小石川に続いて天谷が話した。そして、最後に堀垣がアリバイ調査の結果を報告した。
「僕は昼過ぎからずっと食べ歩きしていたよ。」
「まだ食うのか!」
「うん。異世界の料理が食べたくてつい。それと、街の本屋で舞沢さんを見つけたんだ。時間はわからないけど。」
「確か、舞沢も17時まで俺達と一緒に資料室にいたな。」
「あれ、橘は?」
「それがわからないの。本人に聞いても答えてくれなかったし。」
「とりあえず、アリバイがないのは郷田、溝霧、礼崎、山瀬、飛鳥崎、空咲、南、舞沢、それと橘か。」
佐古水達がアリバイ確認しているとドアからノックの音がした。郷田がドアを開けると中島先生がいた。
「今、時間いいかしら?」
「え、大丈夫ですけど。」
郷田は中島先生を部屋に入れた。
「凄いわね。これ、あなた達が調べたの?」
「その通り、俺達が頑張って集めた情報だ。」
「ところで、先生は何しにここへ?」
「南さんから聞いたの。あなた達が夢宮君の無実を証明しようとしているって。私にできることはないかなと思って来てみたけど、教師失格ね。生徒がこんなに頑張っているのに何もできなかった。今さら来たってもう遅いかな。」
中島先生は自分の思いを佐古水に伝え、泣いていた。
「だったら先生も一緒に勇輝の無実を証明しようぜ。」
「え?」
「今からでも遅くないって!」
「えぇ、分かったわ。私も仲間に入れていいかしら?」
「あぁ、問題無い。」
中島先生も加わって調査が再開された。
事件が起こった日の夜
星雲寺友子は森の上を飛んでいた。疲れたのか降りて休んでいると友子の前にグランドファングが現れた。
「どうした、星雲寺?」
「あなたはあの時の怪獣。なんでもない。」
「なんでもないならそんな顔はしないぞ。」
「ほっといて!」
「話してみろ。少しは気分が和らぐと思うぞ。」
「・・・」
友子は少し迷ったけど今まであったことを全てグランドファングに話した。
「なるほど。これで分かっただろ。人間と怪獣は相容れないということが。どうだ、お前も俺達のところに来ないか?もちろん、夢宮も救出しよう。」
「気持ちだけもらっておくわ。」
友子は起き上がってそのままどこかへ歩いていった。グランドファングはその後ろ姿をじっと見ていた。
すると、後ろから蜘蛛型の怪獣が現れた。
「あいつは予想以上の結果をもたらしてくれた。もうすぐだ。もうすぐであの街に侵攻する。グランドファングはこの国にいる全ての同士に通達しろ。」
「了解。」
設定
この世界は基本的に地球と同じように24時間365日、四季が存在しますが閏年は存在しません。
また、今まで日本人だけではなくアメリカ、イギリス、ドイツなどいろんな国の人達もこの世界に召喚されているため日本語だけではなく英語やドイツ語なども公用語としている。
ちなみに、一番召喚されているのは日本人です。
それと、勇輝達が召喚されたのは四季でいうと初夏にあたります。