青い髪の魔王
魔界に向けて出発してからしばらく経った。タイタンホークの中ではジャギュラに再戦するためにウルトラレックス達がシミュレーションルームで鍛練していた。
「もっと強くならないと。」
シミュレーション怪獣と戦っているウルトラレックスを見たキュアリアスは何やら物思いに耽ていた。
「どうした、星雲寺?」
「え、いや何でもない!」
橘が心配して聞くがキュアリアスは手と首を振ってそのままシミュレーションルームを出て行った。
(私は強くなれるのかなぁ?)
別の部屋では皇凰院とルージュがジャギュラの資料を見たり中島先生達からジャギュラとの初対決の時を聞いたりしていた。
「厄介じゃのぉ。そのジャギュラという怪獣はお主らと同じ異世界から来た人間なのか?」
「可能性があるってだけだが十分あり得る。」
ルージュの下にいる郷田がルージュに説明していた。
しばらくすると新庄から連絡が入ってきた。
「もうすぐ、魔界の領空だ。ここでは決まった発着場しか停めれないからそこからは向こうが用意してくれた車で行くぞ。」
「了解!」
そのままタイタンホークは例の発着場に着いた。すると、そこに一人の魔族が立っていた。日比野達が降りると魔族の男は礼儀正しく自己紹介を始めた。
「はじめまして。私、メシュラと申します。今回、WISHの皆様の案内を担当させて頂きます。」
メシュラはお辞儀をすると日比野達もお辞儀した。
「それではこちらの馬車で魔王城に案内します。」
メシュラは馬のようなモンスターが2体引いているバスぐらいの大きな車両に案内した。
日比野達は堀垣、エメラナ、天谷、新庄、風間、ラフィ、アリス、エルシアナをタイタンホークに残して馬車に乗った。馬車はそのまま走り出した。城に向かう途中、キュアリアスは100mを超えそうな大きな樹を目にした。
(なんだろう、あれ?)
しばらく走っていると日比野がメシュラに質問をした。
「メシュラさん。魔王ってどんな方ですか?」
「そうですねぇ。私が支える魔王様はルギリナ・ベリアート様。少し気難しくて怪獣が大嫌いな魔王様です。」
「ん?魔王って一人じゃないのか?」
「はい。魔王様は現在、5人いらっしゃいます。」
「魔王が5人!?」
メシュラの発言に日比野達は驚いた。メシュラはそのまま話を続けた。
「昔は12人の魔王様がいらっしゃいましたが怪獣との戦争でその多くがお亡くなりになり今いる魔王様達も後を継いでいる者がほとんどです。」
「そうですか。」
「えぇ。その中にはルギリナ様のお父様であるゲルゼラ様やお兄様のイグロス様もお亡くなりになりました。ですからルギリナ様はウルトラレックス様とキュアリアス様をお認めにならないかと。」
「なるほど、怪獣は家族の仇か。」
「・・・」
日比野達がメシュラから話を聞いているとある城の前に着いた。その城は魔王城と呼ぶに相応しく禍々しい雰囲気を纏い、雷が鳴り続いていた。
「こんなところに住んでいるの、魔王って。」
「いえ、ここは魔王様達が会議を行う場所でございます。ルギリナ様もこちらにいらっしゃいます。」
メシュラに案内されるがまま日比野達が城の中に入って進むと玉座の間に入った。その先には青い髪をした女性が玉座に座っていた。すると、メシュラは彼女のところに行きかがんだ。
「ルギリナ様、WISHをお連れ致しました。」
「ご苦労。」
ウルトラレックス達は驚いた。今、目の前にいる女性こそが魔王だったのだ。ルギリナは日比野達を見渡した後、ウルトラレックスとキュアリアスを見ると険しい表情になった。
「怪獣風情がこの魔界に招待されるとは。」
ルギリナは険しい表情をしたまま立つといきなりウルトラレックスとキュアリアスに向かって炎魔法で攻撃してきた。二人はバリアを張ったが魔法はバリアを突き破り二人に命中した。
「勇輝!?」
「友子ちゃん!?」
「おい、いきなり何してんだてめえ!?」
ぶっ飛ばされる二人を心配する郷田達。飛鳥崎がルギリナに向かって怒鳴ったがルギリナは冷静に返した。
「私は怪獣が大嫌いだ。我が物顔で魔界を荒らし、戦争を仕掛けて多くの命を奪った。そんな怪獣が今、目の前にいるだけで腹立たしい。」
「レックス達は違うぞ。」
「どこが。私から見れば他の怪獣と何ら変わりはない。」
ルギリナは再び二人を攻撃しようとすると郷田から降りたルージュがルギリナの前に出た。
「何じゃ、戦争だの仇だの。それをやったのがこの二人ではないぐらいお主でも分かるじゃろ。」
「だから何?私は全ての怪獣を消すつもりよ。仇がどんな奴かは関係無い。」
「悲しいのぉ。この二人も怪獣の被害者みたいな者じゃ。望んでもないのに怪獣にされてしまったからのぉ。」
「その通りです、ルギリナ様。ゲルゼラ様とイグロス様の仇を討つためにもこの者達の協力は必要かと思います。」
ルージュに続きメシュラもルギリナを説得した。ルギリナはそれを聞き入れたのか攻撃を止めた。
「・・・勝手にしろ。」
ルギリナはそう言うとどこかへ行ってしまった。
「なんだよあいつ。」
「怖かった~。」
「ルージュもまたにはやるじゃん。」
「たまにはは余計じゃ!」
「いてぇ!」
郷田の上に乗ったルージュは再び郷田の頭を噛んだ。その状態の郷田を気にせずに日比野達はメシュラの案内で城の外に出た。
「なんだったんだ、あの魔王。魔王ってのはみんなあんなんなのか?」
「いや、違うさ。」
郷田が文句を言っていると赤い肌をした男が現れた。
「彼女は一度に肉親を二人も失ったんだ。あぁなるさ。」
「グレンバーン様。」
その男を見た瞬間、メシュラは膝を着いた。
「え?」
「自己紹介をしてなかったな。俺はグレンバーン。魔王の一人だ。」
「えぇ~!」
いきなり現れた魔王グレンバーンにウルトラレックス達は姿勢を正した。
「昔はそのように畏怖されていたんだがな。懐かしい。」
グレンバーンはウルトラレックス達に楽にするよう指示すると城を見て話し始めた。
「ゲルゼラは素晴らしい魔王だった。畏怖されるはもちろん全ての魔族からも尊敬される最強の魔王だった。そのゲルゼラが殺されたのだ。魔界に激震が走った。」
グレンバーンはそう話すとウルトラレックス達をあるところに連れて行こうとしていた。
「この話はあいつのいるところで話すべきじゃなかった。それよりも君達に頼みことがある。」
「何ですか?」
「あっちに見えるでけぇ木の調査だ。」
「え?あの木って元から魔界にある木じゃないの!?」
「あぁ、1ヶ月ぐらい前にいきなり現れた。」
「そうなんですか。分かりました。調査しましょう!」
「頼むぞ。」
そう言って日比野達はグレンバーンの案内の元、謎の大樹のところに向かった。そこには一人の日本人の青年が待っていた。