疑惑の怪獣
勇輝は言葉を失っていた。目の前に昼森達の惨殺死体があったのだ。
勇輝は何故こうなったのか考えていると扉の向こうから足音がした。そして、扉が開いて研究所の所長らしき人やテレサ、さらに日比野、空咲、佐古水、中島先生までもいた。全員、惨劇を見た後、悲鳴を出したりただ唖然としていた。
「貴様!とうとう本性をさらけ出したな!」
テレサが持っていたライフルを勇輝に向けた。
「ま、待ってください!僕じゃないです!」
「どういうことだ、夢宮?」
「分かりません。気が付いたらこんなことに。」
「そうよ!私達じゃない!」
「そんな言い訳が通用すると思うか!」
そう言ってテレサはライフルから光線を発射した。勇輝は目を瞑って両手を前に出した瞬間、バリアが張られ光線を弾いた。
「何!」
テレサが驚いていると弾かれた光線は一体の怪獣が収容されているガラスに命中した。
すると、中にいた怪獣が目を覚ました。怪獣は辺りを見ると甲高い声を発した。この場にいた全員があまりの五月蝿さに耳を防いだ。
そして、怪獣を収容していたガラスが割れた。その直後、勇輝達が収容されていたガラスも含め、全てのガラスが割られ中から怪獣が出てきた。
「まずい!怪獣が暴れ出した!」
甲高い声を発した怪獣はそのまま翼を広げ、口からレーザー光線を発射して天井に穴を空けた。そして、そのまま飛んで逃走した。
「しまった!怪獣が逃げた!」
所長らしき人が研究所内に緊急警報を発令した。警報が鳴り響く中、一体の怪獣が目を覚ました。その怪獣は茶色い体躯に平べったく大きい両手をしていた。
怪獣は起きるとすぐに口から火球を放ち暴れた。テレサは所長を守るようにしながら下がった。日比野達も臨戦態勢をとるが初めての実戦に体が動いてくれなかった。
怪獣は日比野達に狙いを定め火球を放とうとした瞬間、勇輝が怪獣に体当たりした。怪獣は倒れ火球は日比野達に当たることはなかった。
「みんな!早く逃げて!」
勇輝は怪獣を抑え込もうとしているがあっさり怪獣に投げ飛ばされた。起き上がった怪獣は勇輝に尻尾で攻撃した。勇輝はそのままぶっ飛ばされて友子の隣に倒れた。
友子は怪獣を見て怯え、体が動かなくなっていた。勇輝は友子を助けるように前に立ち、怪獣にタックルした。その姿を見て友子は立ち上がった。そして、友子も怪獣に体当たりをした。二人は怪獣に挑むも鋭い爪が生えた手に切られ、二人ともふっ飛んだ。
「星雲寺さんは早く逃げて!」
「でも、それだと夢宮君が!」
「僕は大丈夫!」
友子は周りを見ると所長を逃がしたテレサが兵士を連れてライフルを撃ってきた。友子はとっさに隠れたが逃げ場がなく辺りを見ると天井に穴が空いていた。
友子は穴を見たまま飛びたいと思った瞬間、彼女の背中に翼が生えた。
「なんだと!」
「え、これってどういうこと!?」
友子は戸惑っているがテレサ達の銃撃から逃げたい一心でジャンプすると翼が思った通りに動いた。そして、友子は穴から脱出した。
(夢宮君、後で助けるから!)
テレサ達は友子に向かって発砲するが友子に逃げられた。その間、勇輝は怪獣を抑えていた。怪獣は勇輝を壁に投げ、ぶつけるとそのまま突進してきた。勇輝は両手でガードするも怪獣の体当たりで壁が崩れた。そのまま怪獣は突進を続けてついに研究所の外壁を破壊して外に出た。
外は緊急避難警報で一般人はおらず、兵士やクラスメート達がいた。怪獣はそのまま勇輝を撥ね飛ばし、火球を乱射し始めた。
勇輝は避けようとしたが後ろに人がいるのを確認した。そして、逃げることなく両手を前に出した。すると、さっきと同じようにバリアが張られ火球を弾いた。
しかし、勇輝は怪獣に近づけず後ろから兵士達が勇輝と怪獣に向けて発砲している。そして、バリアが火球に耐えきれず破壊され勇輝に火球が襲った。
火球攻撃に倒れる勇輝。兵士達は怪獣に向けて発砲しているが怪獣の外皮が厚くて硬いのかあまり効いていない。すると、怪獣は鋭い爪を使って地面を掘り始めた。
兵士達はロケットランチャーを怪獣に撃ち込むが少しよろけるだけだった。テレサや兵士達、クラスメート達が怪獣を攻撃している中、勇輝がゆっくり立ち上がった。
すると、怪獣は掘るのを止め勇輝に火球攻撃をし始めた。勇輝はバリアを張らずに火球攻撃に耐えながら大きく口を開いた。
そして、口からオレンジ色の光線を放った。その光線は火球を払いながら怪獣に命中した。
怪獣はそのまま倒れ、爆発四散した。
無我夢中で放った攻撃で怪獣を倒した勇輝はそのまま立ち尽くしていた。そして、振り返ると日比野が剣をこちらに向けていた。
今回倒した怪獣
怪獣名 グラドラス
身長 2.5m
体重 200㎏
特徴
土竜のような両手と全身に生えた硬い鱗
口から放つ火球が主な武器