紅竜の光と影
グリシアに到着したWISHはすぐに捜査を開始した。念のためにルージュのことは街の人達には内緒していて、郷田と礼崎がルージュの見張りというよりお世話役としてタイタンホークに待機している。
「それで今までどこが襲われたんだ?」
「数日前から毎晩、この辺りの街が襲撃されています。襲われた街はこちらです。」
皇凰院が地図を広げ、襲撃にあった街を差した。よく見ると襲撃された街は地図上だとある規則に乗っていた。
「これだと次に狙われるのはここか。」
日比野は地図上にある街を指差した。そこはグリシアの南西にあるタクマックという街だった。
「よし、今からタクマックに向かう。襲撃されるのはいつも夜だということはわかった。ここなら十分間に合う。行くぞ。」
「了解。」
日比野が指示するとウルトラレックス達はすぐにタイタンホークに乗ってタクマックに向かった。
タクマックに着くと既に避難誘導が行われていた。
「行動が早いな。」
「さすがだね。」
避難誘導している人達をよく見ると腕が翼になっていて鳥みたいな人達がいた。
「あれって?」
「初めて見るか。あの種族はハーピィだ。」
「まだまだ見たことない種族がいっぱいいそうだな。」
日比野達がハーピィを見ているとそのうちの一人が日比野達に近づいた。
「あなた達誰?」
「あ、はじめまして、WISHのリーダーを務めています。日比野宏幸です。」
「あぁ、君達がギガヒュドラを倒した異世界転移者達なのね。」
「え、そこまで知っているんですか?」
「えぇ、もう報道されているよ。」
日比野は驚いていた。いつの間にかギガヒュドラの件までテレビで知られていたのだ。
「私はハルア。ナイトサーガから来たのよ。よろしくね。」
「ナイトサーガ?」
「ここから北西にかなり離れたところにある国のことだよ。」
ハルアの自己紹介の後、日比野達も急いで避難誘導を手伝った。そして、夕方には避難は完了して街にはWISHと兵士達だけになった。
「大丈夫かなぁ。」
「予測が正しければ愈々ルージュの偽者が現れるはずだ。」
ウルトラレックス達が待っていると暗くなった空に1頭のドラゴンが現れた。その姿はまさにルージュと同じだった。
「来た!」
「総員、戦闘態勢!」
兵士の一人が叫んだ瞬間、ドラゴンは街に攻撃を始めた。兵士達は防御魔法で防いだ後、一斉に攻撃を始めた。
その様子を本物のルージュはタイタンホークから見ていた。
「あれがワシの偽者じゃな。」
「とりあえず、俺の頭から離れてくれ。」
「おのれ、ワシの姿で好き勝手しおってからに。許さん!」
ルージュは郷田の頭の上に乗ってドラゴンを見ていた。すると、ルージュは飛び降りると同時にドラゴンの姿へと戻っていった。そのままルージュはドラゴンの方へ飛んで行った。
ドラゴンは地上に降りて兵士達を凪払っている。ドラゴンは倒れている兵士を踏み潰そうとした。そこにルージュが現れ、体当たりして吹っ飛ばした。
「ドラゴンが2体!?」
「ルージュ!」
「お主らは手を出すな!こいつはワシが倒す!」
ルージュはそう言ってドラゴンに向かって炎を吐いた。ドラゴンも炎を吐いて辺り一面が火の海になった。
「日比野さん、あのドラゴンは何ですか!?」
「あっちは本物のルージュ。今までルージュ山脈でひっそりと暮らしていたドラゴンです。」
「じゃあ、あっちは?」
「あっちが今まで街を襲撃していた偽者のルージュです。」
日比野はハルアに説明しているとルージュはドラゴンを尻尾で吹っ飛ばした後、口から光線を放った。その光線はドラゴンに当たると大爆発を起こした。
「やったか!?」
兵士の一人が叫んだがドラゴンは炎の中から現れた。
「しつこいのぉ。」
ルージュは空を飛んで上から光線を放って攻撃した。ドラゴンはそれを避け飛び立ち、ルージュに向けて光線を放った。
2体のドラゴンは空中で光線の撃ち合いを始めた。そこにウルトラレックス達も行こうとするがドラゴン同士の撃ち合いに巻き込まれそうになった。
「ルージュさん!下に被害出てる!」
「僕達も手伝います!」
「邪魔じゃ!」
ルージュは周りを気にせずに攻撃を続けている。ウルトラレックスは光線が街にいかないようにバリアを張って防いだ。キュアリアス達も街に被害が出ないように光線で相殺したりしていた。
「これじゃあ、被害がでかくなる一方だぞ。」
タイタンホークから見ていた郷田が心配そうに言っている。新庄もその意見に同感らしく、呆れ顔をしながらタイタンホークを操縦してルージュ達に近づいた。
「ルージュ、少しは周りの被害を考えろ!」
「うるさい!」
新庄が注意するもルージュは一向に聞かず攻撃を止めることはなかった。
「考えなかったらチョコはお預けだ。」
「!」
新庄がそう言った瞬間、ルージュの攻撃が止んだ。ドラゴンはその隙をつこうと光線を放ったがウルトラレックスとキュアリアスが防いだ。
「何じゃと。」
「ちゃんと周りのことも考えて行動しないとチョコはあげないぞ。」
「そ、それは嫌じゃ!」
「なら自分がやるべきことは分かるな?ちゃんとレックス達と一緒にあの偽者を倒すぞ。」
「う、うむ!」
ルージュは頷いた後、無闇に光線を放つことなくドラゴンに炎などで攻撃していた。
「なぁ、これって完全に駄々っ子に対する叱り方じゃねぇか。」
「まさか、ここまで効果があるとは思わなかった。」
郷田も新庄のルージュの変わりように少し引いていた。一方のルージュはチョコのお預けがかなり効いたようでちゃんとウルトラレックス達と共闘してドラゴンと戦っていた。
「ねぇ、あれ完全に幼稚園児よね?」
「今は何も聞かなかったことにしましょう。」
ウルトラレックスとキュアリアスはドラゴンの下からおもいっきりドラゴンを殴って上に飛ばした。
「ルージュ!これなら街に被害はこないわ!」
「行ってください!」
「おぅ!サンキューじゃ!」
ルージュは二人にお礼を言うと口から今までとは違う光線を放った。
「《ルージュブラスター》!」
ルージュは口から真っ赤な螺旋状の光線を放った。その光線は見事ドラゴンに命中しドラゴンは爆発四散した。