ワガママなドラゴン
ルージュ山脈からグリシアに戻る途中のタイタンホーク内部
「・・・」
「・・・ねぇ、本当にこの子が伝説のドラゴンなの?」
「そのはずなんだけど。」
朝比奈が怪しんで日比野に聞いている。それもそのはずルージュは今、郷田の頭を噛っているのだ。
「こいつ、なんとかなんないか?さっきから地味に痛いんだが。」
「我慢しろ郷田。」
「嘘だろ?」
郷田はルージュを剥がそうとしている頃、飛鳥崎は風呂に入っていた。
「あんなのに付き合ってられっかよ。」
飛鳥崎が一人で入っていると後ろから足音が聞こえてきた。飛鳥崎が後ろを向くとバスタオル1枚の皇凰院が立っていた。
「うおっ!」
「隣、いいですか?」
「お、おぅ。」
飛鳥崎が視線を反らすと皇凰院は隣に入ってきた。
「い、いい匂いがするなぁ。」
「はい、さっきアロマの香りがするシャンプーを使いました。」
「そ、そうか。」
皇凰院を直に見れない飛鳥崎はどぎまぎしながら話しかけた。
「そういえば、前の恋人ってどんなやつなんだ?」
「カッコいい人でした。最後まで僕を守ってくれる人でした。」
哀しそうに語る皇凰院に飛鳥崎は頭を掻きながら寄りかかり話し始めた。
「そいつの代わりになれるかどうかは分からねぇがその哀しみが晴れるまで付き合ってやるよ。」
「あ、ありがとうございます!」
皇凰院は喜びながら飛鳥崎に抱き付いた。その時、股間にある物が当たる感触がした。
「ん?」
「どうしました?」
「お前って性別どっち?」
「あ、いい忘れてました。僕は皇凰院豪毅、男です!」
「・・・」
しばらくして、食堂の机を俯せている飛鳥崎がいた。その後ろには笑いながらバカにしている郷田と姫樹がいた。ちなみに、郷田の頭にはまだルージュが噛みついている。
「スゲー落ち込んでる!」
「今まで俺を女と蔑んできた報いだ!」
「うわー、あの二人楽しそう。」
空咲が笑っている二人を見ているといつの間にか近づいてきた飛鳥崎が二人の顔を鷲掴みした。飛鳥崎はそのまま二人を投げ飛ばした。その間もルージュは郷田の頭を噛っている。
「え~、俺達WISHは今からこちらにいるルージュさんと一緒に捜査することになりました。」
オペレーションルームで日比野がみんなに改めて説明しているが歯切れが悪い。それもそのはず、当のルージュはまだ郷田の頭に噛みついているのだ。
「それ、なんとかなんない?」
「話が頭に入ってこない。」
舞沢達がそう言うので日比野はルージュにお願いした。
「ルージュさん、そろそろ離れてもらっていいですか?」
「やだ。」
「これ、完全に幼稚園児だぞ。」
「うるさい!」
「いてぇ!」
ルージュは郷田に噛みついたまま離れようとしない。仕方なく日比野達はいろいろと試した。
力任せ
「痛い、痛い、痛い、痛い!」
失敗
諭す
「ルージュ様、そんな汚らわしいものに噛んではお体に障ります。」
「・・・」
「汚らわしいってなんだ!?」
失敗
郷田の頭を切り離す
「止めろ!誰だ、これ考えたの!?」
出来ず
日比野達がなんとかしようとしていると礼崎がルージュにある物を見せた。
「・・・なんじゃそれは?」
「これはチョコレートっていうんだよ。」
すると、ルージュは郷田の頭から離れチョコレートを口にした。その瞬間、ルージュの目がキラキラと光り出した。
「これは!なんという甘さ!何百年生きてきて初めて食べたぞ!お主、これもっとワシに頂戴!」
「う、うん。」
郷田から離れたルージュはそのままチョコレートを食べ始めた。
「これでなんとか話を進められる。」
「痛かった~。」
「快翔君、ちょっとハゲてる。」
「マジかよ!?」
ルージュが離れたことで日比野は再び話を始めた。
「これからグリシアに戻って事件の捜査をする。もし彼女の偽物が現れた場合はすぐに倒す。簡単に纏めたがこんなもんだろ。みんな、頼んだぞ。」
「了解。」
「あ、倒すのはワシがやる。ワシをコケにしてただでは済まさんぞ。」
すると、ルージュが口いっぱいにチョコレートを頬張って話し始めた。
「なんかハムスターみたいでかわいい。」
「やっぱり幼稚園児じゃねぇか。」
「お主らはさっさと偽物を探してワシに報せろ。」
「ワガママだな。」
こんな状態のルージュを連れてタイタンホークはグリシアに向かっていた。




