トゥルディス教
クラスメート達がラッセル議長の案内で城の隣の研究所に来てみるとある部屋の一番奥のガラス部屋に勇輝と友子がいるのを目撃した。
「ちょっと、どういうことですか!?」
「その質問には私が答えよう。」
中島先生はラッセル議長に問い質し始めた。すると、ラッセル議長の後ろから女性が歩いてきた。
「私の名はテレサ・アミアス。MDMのメンバーでここ、ディファインダーラボラトリーの護衛隊長だ。こいつらを収容している理由は簡単だ。こいつらが怪獣だからだ。」
「そんな・・・」
「ごめん。私も尽力したけどダメだった。」
テレサの後ろにはしょぼんとしているアリスがいた。
「怪獣だからって。今はうちの生徒です!」
「お前達も見ただろ。その生徒が怪獣になり、自我を失い、暴れたところを。一度怪獣になれば変身で人の体になったとしても怪獣のままだ。ならば、駆除するしかない。今回はアリスに免じて収容にしたが本来はその場で駆除するところだ。アリスに感謝するんだな。」
そう言ってテレサはこの場を去った。
「何よ、あいつ。」
麗奈は去っていくテレサにあっかんべーをした。
「アリスさん、ありがとうございます。」
「いや、私も彼らが危険な怪獣に見えないんだ。けど、いつ自我を失い暴れるのかはわからない。」
「そういえば、あの人は変身で人の体になったと言ってましたがそんなことできるんですか?」
「あぁ、できる。実際に人間に変身する怪獣は確認されている。」
「え?だったらもし怪獣が人間に化けてここに来たらまずいんじゃないですか?」
「いや、そこは大丈夫。私達は君達にも渡したこの証明カードがある。もし怪獣が誰かに化けて侵入してもこれで分かる。もし奪ったとしてもあらかじめカードに込めた魔力で本人確認ができる。現に今まで人間に化けた怪獣は全て倒している。」
そう言ってアリスはカードを宏幸達に見せた。
「へぇ~。」
「便利だな。」
快翔達が感心してカードを見ているとアリスは勇輝の方に向かった。
「勇輝君、友子さん。もう少しの辛抱です。すぐに出します。」
「あ、ありがとうございます。」
アリスはそう言って研究所を後にした。
「アリスさんっていい人ね。怪獣になった二人対しても優しいし。」
「それは彼女がトゥルディス教信者だからだろう。」
「え、トゥルディス教?」
麗奈の質問にラッセル議長は答えた。
「トゥルディス教はこの世界唯一の宗教。簡単に言えば人間と怪獣の共存を望んでいる宗教だ。」
「人間と怪獣の共存。」
「詳しく知りたいのなら資料室にいくといい。私はこれで失礼する。」
ラッセル議長もそのまま研究所を後にした。
「俺達もここを離れよう。」
「分かりました。」
「じゃあ、またな!」
クラスメート達もそのまま研究所を後にした。勇輝達もクラスメート達に手を振っていた。
昼森はそんな二人を見てニヤリと笑っていた。
(怪獣は悪、か。いいこと聞いた。)
資料室
「トゥルディス教。100年以上前からある宗教で教祖はフィディス。人間、魔族、怪獣との共存を謳い、絶大な人気を誇る、か。」
日比野はトゥルディス教について調べていた。今、資料室には日比野、中島先生、溝霧、朝比奈、佐古水、小石川、郷田、舞沢だけだった。
「凄いですね。人間や怪獣が仲良くする世界を作りたいなんて。」
「でもね、溝霧君。こういうのが一番胡散臭いのよ。事実、教祖のフィディスもずっとこの宗教の教祖をしているのよ。いくらなんでも長生き過ぎだと思わない?」
「確かに、教祖に関してはエルフだとかそのハーフとか怪獣だとか言われてますからね。」
「でも、みんな仲良く出来たらいいのに。」
「それが簡単に出来たら苦労はせんな。」
溝霧や朝比奈達も日比野と一緒に調べていると佐古水が何かを持ってきた。
「佐古水、何持ってきたの?」
「資料だ。見たら分かる。」
佐古水が持ってきたのは過去のフィディスの演説の映像だった。日比野達はフィディスの演説の映像をじっくり見た。
「意外とイケメンだな。なんかむかつく。」
「真面目に見なさい。」
映像を見ても特に怪しいところはなかった。
「仕方ない。トゥルディス教は後だ。まずは勇輝君達を元に戻す方法を探す。俺はもう少しここに残る。」
「俺も残る。気になることがある。」
「私も残るわ。」
「わかった。とりあえず、ここで解散しよう。」
こうして、資料室には日比野、中島先生、朝比奈、佐古水だけが残った。
ディファインダーラボラトリー内
日比野達が資料室で調べ事をしている間
勇輝達が入っているガラスに昼森、堤、原田、大多喜、加藤の五人がいた。勇輝が気になって見ていると昼森はボタンを押した。その瞬間、ガラス内に電流が流れて二人を襲った。
「すげえ!まじで出た。」
「ちょっと、何するのよ!」
「何って怪獣退治に決まってんだろ。」
「はぁ!」
「怪獣は悪。この世界の常識なんだろ。だったら、俺達がやっているのは正義だろ。」
「意味わかんない!」
「何でいきなりこんなことを!?」
勇輝の問いかけに答えることなく昼森達はいろんなボタンを押して勇輝達を苦しめた。
「最高だな!勧善懲悪だろ!俺達、正義はお前達をどんだけ苦しめようが殺そうが罰せられることはない!」
昼森達が楽しむように笑いながら二人を拷問していると二人は気絶していた。それでも、拷問を続けていると誰かが部屋に入ってきた。
「ん?なんだ、お前か。どうだ、お前もやるか?楽しいぞ。」
昼森はその人物に笑いながら誘った。
しばらくして勇輝が目を覚ました。
「うーん。えーと、どうなってたんだっけ?」
勇輝が辺りを見回すとガラスの扉が開いていた。すると、友子も目を覚ました。
「いった~い。あいつら、絶対に許さないんだから。」
「あの、星雲寺さん。扉が開いてます。」
「え?ホントだ!?なんで?」
友子はおそるおそる外に出た瞬間、青い顔して倒れ込んだ。勇輝が出るて友子に駆け寄った後、周りを見た瞬間、言葉を失った。
そこには昼森達五人の惨殺死体があった。