命の冒涜
キュアリアス達が失踪してから1日が経過した。その間も日比野達は一生懸命捜索していた。しかし、キュアリアス達は見つからなかった。
「どうだった?」
「駄目です。ワンダーマリンのどこにもいません。」
ルルナやデライズ、ワンダーマリンの警備団の人達も協力してもらったが結果は変わらなかった。
「どこなんだ、みんな。」
そして、そのまま時間だけが過ぎていった。
次の日、ウルトラレックスが昨日と同じように空からワンダーマリンで捜索していると、下にいた一人の女性の後ろの空間がいきなり割れ、中から人間の手とは思えない手が女性を襲った。
「待て!」
ウルトラレックスは急いでその割れ目の方に飛び、女性を助けるために割れ目に突入した。
ウルトラレックスが割れ目に突入すると中は何もない異常な空間だった。ウルトラレックスが周りを見渡すと後ろの割れ目が消えてしまった。
「!」
ウルトラレックスがあわてて駆け寄るも間に合わず、割れ目は完全に消えた。そして、歪んだ空間がいきなり襲ってきたと思ったら周りの景色がいきなり変わった。
そこはまるで滅んだ都市みたいに瓦礫と砂だけしかなかった。ウルトラレックスがその中を歩いていると目の前に拐われそうになった女性が倒れていた。
「大丈夫ですか!」
ウルトラレックスは駆け寄って女性を抱えた。女性は気絶しているだけのようで外傷はなかった。
「良かった。」
ウルトラレックスがホッとした瞬間、いきなり彼に雷が襲ってきた。ウルトラレックスはとっさにバリアを張って防いだ。すると、どこからともなく笑い声がして砂嵐が二人を襲った。
砂嵐が晴れるとウルトラレックスの前にイリュテラスと十字架に拘束されているキュアリアス達がいた。
「みんな!」
「夢宮君!」
「わははは!来たな、憐れな怪獣。」
「お前は誰だ!」
「俺様はイリュテラス!この異次元を統べるナンバーズNo.12の科学者だ!」
「ナンバーズNo.12。」
ウルトラレックスはいきなり現れたイリュテラスを睨んでいた。すると、イリュテラスは指を動かしてウルトラレックスが抱えている女性を浮かして、後ろに現れた十字架に女性を拘束した。
「!」
「無様だな。守る力がないくせに首を突っ込むからだ。」
「みんなを返せ!」
「本当に助けたいのなら無策で突っ込まずにこのことを報告するべきだ!お前は目の前のことしか考えられないからこそこんな罠に簡単にかかる。」
イリュテラスは笑いながらウルトラレックスを見ている。ウルトラレックスも逃げ道がない状態では助けることができないことを冷静になってから気付いたため、汗を流していた。
「でも、ここでお前を倒せばみんな助けることができるはず。」
「愚かな考えだ。」
すると、イリュテラスは指をパチンッと鳴らした。その瞬間、イリュテラスの周りに十字架やそれに繋がれた女性達、鎖に繋がれた女性、怪獣が現れた。鎖に繋がれた女性に関しては四肢がなかったのだ。
「何、これ。」
「この怪獣は俺様の実験で誕生した怪獣だ。殺せるものなら殺してみろ。」
そう言ってイリュテラスは怪獣に指示を出してウルトラレックスを襲わせた。ウルトラレックスは真っ先に一番近い首の長い怪獣を頭の2本の角から光のカッターで切り裂いた。
「《レックスラッガー》!」
そのカッターはそのまま後ろの怪獣も切り裂いて倒した。
「なんだ。弱いじゃん。」
キュアリアスの発言に一切耳を傾けずにイリュテラスは笑っている。ウルトラレックスは怪獣を全て倒した後、イリュテラスの方に向いた。
「これで、お前の仲間は全員倒したぞ!」
ウルトラレックスがイリュテラスに叫んだ。しかし、イリュテラスは笑ったままだった。
「何が可笑しい!?」
「いや、お前も怪獣らしくなったな。」
「何!?」
「スパンダーやその部下から聞いたぞ。お前は怪獣に対しても慈悲があり殺すのを躊躇っていたとな。それが今や何の躊躇もなく殺している。例え、そいつらが元人間であってもな。」
「え?」
イリュテラスに言われて倒した怪獣を見ると怪獣の中には所々に髪の毛や皮膚など人間の一部が見られた。
「まさか、実験!」
「そうだ!こいつらが怪獣の細胞を埋め込んだ元人間達だ!」
「そ、そんな。」
ウルトラレックスが倒れている怪獣に触った。しかし、もう死んでいるため冷たかった。イリュテラスは笑いながら追い討ちをかけた。
「俺様が言った殺せるものなら殺してみろは物理的にではない。お前に殺す覚悟があるのかという意味だ!しかし、お前は今、後悔している。覚悟がまだ未熟だからだな。」
イリュテラスは笑いながら新しい怪獣を出した。その怪獣は全身に人間の手足が付いていた。
「何だ、その気持ち悪い怪獣。」
「こいつは四散して死んだ人間の手足を怪獣に移植した怪獣だ。名前はハンドザンドと今名付けた。」
橘の発言に反応したイリュテラスが怪獣の説明をした後にウルトラレックスを襲うように指示した。
ハンドザンドは人の叫び、嘆き、苦しみを表したかのような悲しい鳴き声をあげながらウルトラレックスに襲ってきた。その手足を伸ばして攻撃するハンドザンドにウルトラレックスは防戦一方だった。
「どうした!急に縮こまったか!?さっきまでの威勢はどうした!」
「ひどい。人をあんな風にするなんて。」
ハンドザンドは胸元にある頭骨から光線を放ってきた。ウルトラレックスはバリアで防いだ。このままウルトラレックスの防戦が続く中、四肢の無い鬼の女性が弱々しく喋り始めた。
「・・・お願いだ。そいつを、みんなを眠らしてやってくれ。」
「え?」
「お、起きたか。」
イリュテラスはその鬼の女性の髪を引っ張った。
「さすが、鬼だな。俺様の実験にちゃんと耐えてくれた。」
イリュテラスが笑っているとウルトラレックスは立ち上がった。
「僕、あなたみたいな奴が一番嫌いです。笑って命を弄ぶような奴に好きにはさせない。」
そう言ってウルトラレックスはハンドザンドにレクシウム光線を放った。レクシウム光線はハンドザンドに命中して爆発した。そして、そこから白いモヤみたいなモノが飛び立っていくのが見えたような気がした。
「ほぅ、結局殺したか。」
ウルトラレックスはそのままレクシウム光線をイリュテラスにも放った。レクシウム光線はイリュテラスにも命中して爆発したが土煙が晴れると無傷のイリュテラスが立っていた。
「え?」
「わははは!無駄な足掻きだ!お前じゃあ俺様に勝てるわけないのだ!」
笑っているイリュテラスにウルトラレックスはそのまま近づいてパンチしようとした。
「やはり愚かだ。」
その瞬間、イリュテラスは掌を見せた。すると、掌にギョロっとした目が現れた。ウルトラレックスはその目を見てしまった。すると、いきなりイリュテラスを怖がり後退りした。
「え、何をしたの!?」
「夢宮君!」
キュアリアスの声は届かず、ウルトラレックスは怯えるように暴れ出した。
「このまま、お前の仲間に殺されるがいい。安心しろ。死体はちゃんと俺様の実験材料にしてやる。」
そう言ってイリュテラスは指をパチンッと鳴らした。その瞬間、ウルトラレックスの下の空間が突如として割れてしまいウルトラレックスはそこから落ちてしまった。
「夢宮!」
「夢宮くーん!」
異次元の中ではキュアリアス橘の叫び声とイリュテラスの笑い声が響いていた。