異次元の誘拐犯
小石川と橘がいなくなったと聞いた日比野達は必死に辺りを探したが見つからず、仕方なくタイタンホークに戻ってきた。
「先生、舞沢がいなくなったってどういうことですか?」
「私にもわからないわ。トイレに行ったきり戻って来ないからみんなで探したの。でも舞沢さんは見つからなかったわ。」
「小石川と橘に続いて舞沢、そしておそらく今ここにいない星雲寺の四人が失踪したか。」
「でもどういうこと!?タイタンホークの監視カメラを使っても見つからないって!」
「確かにタイタンホークを出てないのは確認した。隠れられそうなところも探した。それでも見つからないとなるといよいよ神隠しを信じたくなってしまうな。」
新庄が汗を流しながら話した。天谷は神隠しに怯え、震えていた。日比野達も信じたくなかったが奇妙な事件に頭を抱えていた。
「小石川と橘もそうだ。あの休憩室はドアは一つでみんなに見える位置にあった。あそこかは二人を連れ出したら確実に誰か見ている。」
連続で起こった失踪事件に捜査は難航を極めた。
「んっ、ん~ん。ここは・・・」
キュアリアスが目を覚ますと知らないところにいた。ここはどこだろうと首を動かすと自分が十字架に拘束されていることに気がついた。
「え?何これ!?」
キュアリアスは必死にもがいていると隣に小石川、橘、舞沢が同じように十字架に拘束されていた。
「嘘でしょ。ねぇ、起きて!起きて、橘さん、小石川さん、舞沢ちゃん!」
「ん~、なんで私だけちゃん呼びなの?」
キュアリアスの呼び掛けに最初に応じたのは舞沢だった。舞沢も周りを見ると自分が十字架に拘束されていることに気付き、二人で小石川と橘を起こした。
「駄目。全然起きない。もしかしてもう。」
「大丈夫よ。二人とも息はしてる。ここは私に任せて。」
すると、舞沢はすぅっと息を吸った後に大声で起こした。
「起きなさい!乳デカ女と金銭感覚バグ女!」
「誰が乳デカ女だ。」
「それは仕方ないことですわ。」
「えっ。それで起きるの!?」
起きた二人が周りを見た後にキュアリアスと舞沢を見て質問した。
「おい、これはどういうことだ?」
「私が分かるわけないでしょ。」
キュアリアスがみんなを見ると舞沢のスカートがずり落ちていてパンツが丸見えだったことに気付いた。
「舞沢ちゃん。えーっと、その~。」
「何よ。」
「パンツが丸見えです。」
「え?」
キュアリアスが顔を赤らめて言ったので下を見ると確かにスカートがずり落ちて水玉模様のパンツが丸見えだった。
「以外と可愛いパンツだな。」
「そ、そうですね。舞沢さんらしくて可愛いです。」
「いやぁ~!」
舞沢は必死にもがいたが拘束が取れることもスカートが上がることもなかった。
「思い出した!確かトイレにいた時に後ろから襲われたんだった!」
「そうだ。私と小石川も休憩室で壁に凭れていた時に後ろから襲われたんだ。」
「はい。その時に手を見たんですが明らかに人の腕ではありませんでした。」
「私も空を飛んでいる時に後ろから口を抑えられてでそれから気付いたらここだった。」
「ってことは連続失踪事件の犯人の仕業ね。」
「その通り。」
舞沢達が推理していると彼女達の前に怪獣が現れた。
その怪獣はケンタウロス型の姿をしており、腰部分には菱形の黄色い発光体と鞭のような2本の尻尾と1本の太い尻尾、背中はトゲだらけで両肩から伸びた触手の先には水晶みたいな発光体、そして牛みたいな顔と大きい角があった。
「あんたが女の子ばっかり誘拐する変態怪獣?」
「トイレで誘拐するんだから変態に決まっている。」
「わははは!最も油断している時に誘拐するのが定石だろ。」
怪獣はゆっくりとキュアリアス達に近づいてくる。
「俺様はイリュテラス。ナンバーズNo.12だ。」
「遂にきたわね。」
「No.12ってナンバーズの中で一番の雑魚じゃん。」
「愚かだな。これは序列ではなくただの組分け。ナンバーズに決まった序列はない。」
そう言ってイリュテラスは指を動かすと十字架はゆっくりとイリュテラスの前にきた。そして、全員がイリュテラスと同じ目線になった。
イリュテラスはキュアリアス、橘、小石川、舞沢の順に顔をじっくり見ている。途中、橘がイリュテラスに向かって唾を吐くが全く気にせずに顔を覗き込んでいる。
「最低の変態ね。」
最後に舞沢がイリュテラスに罵倒したらイリュテラスはニヤリとして彼女の腹を鷲掴みにした。
「がっ、はっ!」
「わはは!歓迎するぜ。魔法を封じられ何も出来ない奴の憐れな抵抗。これぐらい活きがいい奴じゃないと実験中に死ぬからな。」
「実験?」
イリュテラスの発言に疑問を持った橘が質問した。
「何のつもりだ?そもそもここはどこだ?どうやって私達を誘拐した?」
「実験はそのままの意味だ。お前達は俺様の実験動物になってもらう。ここは異次元。俺様の実験室だ。俺様は異次元を操り、好きな時に好きな場所の空間を破壊して連れ去ることができる。」
「なるほど、この気持ち悪い場所を使って誰にもバレずに誘拐できたわけか。」
「そして、今までの誘拐はあんたの身勝手な実験に使うためってところかしら?」
「その通り。怪獣の細胞を埋め込んだ人間はどうなるか?怪獣の体を移植するとどうなるか?実験のネタが尽きることはない。」
「本当に最低ね。」
「お前達人間も同じだろう。新薬の実験にネズミを使うのと何も変わらん。」
「暴論ね。」
「だが、事実だ。」
イリュテラスが舞沢の顔を舐め始めた。イリュテラスに舐められ嫌がる舞沢にキュアリアスが叫んだ。
「やめなさい!」
キュアリアスは自分の叫びに反応し、こっちを向いたイリュテラスに向けて光線を吐いた。光線は見事にイリュテラスに命中した。
「そうだ!星雲寺は今は怪獣だから魔法じゃなくても攻撃できる!」
「やったの!?」
キュアリアス達が見ている中、土煙が晴れるとそこには無傷のイリュテラスがいた。
「嘘、でしょ。」
「わははは!何故、俺様が怪獣であるお前を全く警戒していないのか。それはお前程度では俺様の脅威にならないからだ!お前とあの小僧は俺様の実験に丁度いい。これから俺様の実験材料になってもらうぞ。」
イリュテラスが高らかに笑う中、キュアリアス達は黙って見ることしか出来なかった。