ジュラシック・パニック 望まれない命
誰も居なくなった研究施設へ突撃した夢宮達。施設内は荒らされ逃げ遅れた人達の肉片が飛び散っていた。夢宮達は臭いを防ぐためにガスマスクを装着し光魔法で照らしながら進む。
「エグいな。」
「女子には見せられない光景だぜ。」
郷田が懐中電灯で辺りを照らす。そこにエルシアナからテレパシーが送られてきた。
(あと1時間で通信基地局の最低限の復旧作業が終わるそうです。)
(分かりました。ありがとうございます。)
「スマホが使えるようになるのはありがたい。」
日比野がスマホを取り出す。今も圏外だ。日比野はスマホを仕舞い再び戦闘態勢に入る。すると、入口が派手に破壊された部屋を見つけた。警戒しながら覗くと何かが通った形跡があった。
「この先にいると思うか?」
「待ち伏せしてる可能性はある。」
夢宮がウルトラレックスに変身する。先頭に立ち形跡を辿る。日比野達も警戒しながら進む。先はだんだん暗くなり光魔法だけでは照らせなくなってきた。ウルトラレックスがレックスブレスから光を放つ。その時、一瞬だが影が見えた。
「あの影…」
「あの先に何かいるのは間違いねぇな。」
恐る恐る進む。すると、暗い地下室に出た。研究していたと思われる恐竜の残骸が散らばっており足の踏み場もない。照明は破壊され落ちているため電気は点かない。
ウルトラレックス達が入ったのを何かが見ている。そうとは知らずに地下室を調べようと光魔法で照らす。その時だった。パキッと何かが折れる音がした。その音がした方向を照らす。しかし、何もいない。
「なんだったんだ…」
「いるのか…」
音がした方向を警戒する。その瞬間、突如暗闇からギガラプトルが出現し佐古水に噛みついた。そのまままた暗闇へと消えて行く。驚いた郷田が暗闇に向けてライフルを乱射する。
「馬鹿野郎!俺達に当たるだろうが!」
「落ち着け!」
「佐古水が居ねぇ!」
パニックになる郷田達。今度はトゲのついた尻尾がウルトラレックスを吹き飛ばした。ギガラプトルの雄叫びが響く。その時、光魔法がギガラプトルを照らした。噛みつかれていた佐古水が光魔法で照らしたのだ。
「そこか!」
すぐに日比野が光の刃を飛ばして攻撃する。しかし、ギガラプトルは俊敏な動きで攻撃を避けた。皇凰院も拳銃を撃つがそれも避ける。
「あの巨体で身軽な奴だな!」
「おい!勇輝は!?」
郷田がウルトラレックスがいないことに気付く。そのウルトラレックスはすぐに瓦礫の中から現れギガラプトルの首にキックした。ギガラプトルはダメージを負い佐古水を吐き出した。
「佐古水!」
郷田達が駆け寄る。佐古水は一応息はしているが腹と背中から大量出血している。ギガラプトルは弱った佐古水を狙い再び襲いかかる。それを見逃さずウルトラレックスは前に立ちレクシウムフィールドを展開した。ウルトラレックスとギガラプトルが日比野達の視界から消える。
「あいつ、まさかレクシウムフィールドを使ったのか。」
「それより今は佐古水の治療が先だ!」
飛鳥崎が佐古水をおんぶする。日比野達はウルトラレックスを心配しながらも佐古水に回復魔法をかけながらその場から離脱した。
ウルトラレックスはギガラプトルの攻撃を躱していた。鋭い牙、鋭い爪、鋭利なトゲのついた尻尾、次々と繰り出してくる攻撃を避けながら下がる。ギガラプトルも狙いをウルトラレックスに絞り攻撃を続ける。
「みんなは大丈夫かな?」
「さぁ、特に佐古水さんは危険ね。咄嗟に魔法で防御していたみたいだけど生きているのが奇跡なレベルよ。」
モルフィナも出て援護する。ギガラプトルの尻尾を避けとうとう施設から出た。飛びながらギガラプトルの動きを見る。すると、ギガラプトルは角から電撃を放った。
「な!!」
ウルトラレックスはイージスラッガーで防御する。
「あれって確か…」
「スカルバーンの攻撃よね?」
「まさか、怪獣の遺伝子も…」
ギガラプトルは電撃でも通用しないと判断すると奥へと消えて行った。ウルトラレックスは追いかけようと施設に近付く。その瞬間、ギガラプトルが助走をつけてジャンプした。
「「!!」」
驚いたウルトラレックスとモルフィナは反応が遅れてしまう。そこにギガラプトルの爪による攻撃を受けてしまった。地面に叩きつけられ血反吐が出る。ギガラプトルがウルトラレックスの前に着地して近付く。
モルフィナも全身の痛みで動けない。ウルトラレックスもなんとか動くがギガラプトルが走り出す。
「動くな!」
その瞬間、ルギリナがギガラプトルを蹴り飛ばした。それに続いてドラゴンになったルージュがギガラプトルに噛み付く。いつの間にかレクシウムフィールドが解かれていたようだ。
「み、みんな…」
「大丈夫か?」
ウルトラレックスの前に飛鳥崎が立つ。瓦礫撤去や救助していたメンバーも集まってきた。ギガラプトルは電撃でルージュを退かせる。そこに今度はキュアリアスが来て竜巻を起こした。
「夢宮を早く安全は場所に!」
「僕は大丈夫です!」
ウルトラレックスが立ち上がる。モルフィナを胸に戻すと夢宮に戻った。それにキュアリアス達は驚いた。
「いきなりどうしたの!?」
「僕…やっぱりギガラプトルを救いたい。」
「救う?」
「望まれてない産まれ方をされて生き方も分からないなんて悲しすぎる。」
夢宮は迷っていた。グランウィザードにされたマギウスと似た境遇のギガラプトルをどうすればいいのか?しかし、ギガラプトルも既に多くの犠牲を出していた。
なんとかして救いたいと思っているとルージュの炎が命中したギガラプトルはフラフラとしながら倒れた。倒したと思ったルージュは少女になる。そこに神永達がやってきてギガラプトルの遺体を運ぼうと準備した。
「これでいいのかな?」
「仕方ないよ。悲しいけど…」
夢宮達がギガラプトルを悲しい目で見る。運ぶ準備の手伝いをしていた橘がチラッとギガラプトルを見る。すると、死んでいると思っていたギガラプトルがニヤリと口角を上げて笑った。
(まさか…)
「待て!逃げろ!」
橘が叫ぶ。準備していた人達がその声に反応した瞬間、ギガラプトルが起き上がり近くにいた人に噛み付き飲み込んだ。
「死んでない!?」
「死んだふりか!」
逃げ惑う人達を尻尾で薙ぎ払うと攻撃する郷田達に目もくれず避難している人達がいる港へと走り出した。
「ヤバい!あそこには怪我人がいる!」
ルギリナがジャンプして上から闇魔法のダークボールを放つ。ギガラプトルはそれを避けながら逃げ遅れた人を掴むとルギリナの前に投げた。ルギリナがその人をキャッチするとギガラプトルがジャンプしてルギリナに噛みついた。幸い右足の義足だったためルギリナはその場から離れることが出来た。
「あの野郎〜、姑息な戦法とりやがって。」
飛鳥崎が炎の拳を飛ばして攻撃する。ギガラプトルはそれを尻尾で振り払うと電撃で攻撃してきた。そのまま港へと走る。
「このままじゃ被害はデカくなるぞ!」
神永が走りながら叫ぶ。すると、夢宮がギガラプトルの前に立ち塞がった。ギガラプトルも足を止め警戒する。すると、夢宮はレボリュートルナウェーブをギガラプトルに放った。ギガラプトルは最初は爪で振り払うもだんだん大人しくなった。
「これで…」
ギガラプトルが大人しくなったのでキュアリアスは星雲寺に戻って夢宮に駆け寄る。その時、ギガラプトルが口から長い舌を伸ばし星雲寺を貫いた。
「え…」
そのまま星雲寺を巻取り食べようとする。それを夢宮が星雲寺の手を取り防ぐ。その一瞬が功を奏した。日比野がギガラプトルの舌を切った。夢宮はすぐに舌を剥がして星雲寺を助ける。
「星雲寺さん!」
「だ、大丈夫…」
「あのヤロー!」
夢宮の前に立った郷田と橘がギガラプトルに向けて連射する。ギガラプトルは冷静に避けながら電撃を放つ。
「大人しいフリまでしやがって!」
「ごめん…」
「勇輝が謝ることねぇ!」
夢宮は星雲寺を2人に任せると再びギガラプトルの前に立った。
「ごめんね。君を助けたい。けど…」
夢宮が憐れむ目でギガラプトルを見る。ギガラプトルはルージュを振り払うと夢宮に突進した。夢宮もそれに合わせて走り出す。そして、すれ違った一瞬で夢宮が手刀でギガラプトルに致命傷を負わせた。
《夢宮流霞斬り》
ギガラプトルは吐血しとうとう演技ではない倒れ方をする。日比野達はまた演技じゃないかと疑うも夢宮は近づいてギガラプトルの両目を閉じた。
「ごめん…」
夢宮が悲しそうな声で謝る。こうして、ギガラプトルによって起きた事件は幕を下ろした。夢宮にとってなんとも言えない虚しさを残す結果となって…
今回倒した怪獣
怪獣名 ギガラプトル
別名 遺伝子合成恐竜
身長 12.5m
体重 2t
特徴
神永がラプトルを元に様々な恐竜や生物の遺伝子を組み込んだ結果産まれた生物。神永達が新生命の研究と称して作った。
ティラノサウルスの牙、トリケラトプスの角、アンキロサウルスの尻尾の他にコウモリやイルカの超音波、蛇の赤外線感知、さらにはスカルバーンの電撃などを備えている。
人間の脳も移植しているため知能も高く騙しや待ち伏せ、不意打ち、演技などもこなす。
性格は獰猛で狡猾。弱い相手から狙うという狩りの基本を本能で理解している。