分岐点
ゲリュガから離れドーバと行動を共にするマギウス。ゲリュガと違い怖い感じのするドーバが苦手だった。何も言わずに進軍する。
「あ、あの…」
「•••」
どこに行くのか聞こうとしても反応すらしない。マギウスは早くゲリュガのところに戻りたいと思った。そんな時、ドーバ達が足を止めた。マギウスも足を止めて前を見る。すると、敵軍がこちらに進行してきているのが見えた。かなりの大軍だ。こちらの何倍もいるだろう。
「来たか。」
ドーバがフッと笑う。そして、初めてこちらを見た。
「マギウス、最大魔法で皆殺しにしろ。」
「え…」
「さっさと殺れ。」
ドーバの無慈悲な命令にマギウスは震える。刻一刻と敵軍が近付いてくる。
「殺れ!」
ドーバに命令されマギウスは巨大な火球を作り出す。敵軍は進行と止め慄く。ドーバがニヤリと笑う。しかし、いつまで経ってもマギウスは火球を撃とうとはしなかった。
「どうした?」
「や、やっぱり僕には無理です。」
「殺らなければ死ぬだけだぞ。」
ドーバが命令するも怖くて動けない。人を殺せない。どうすればいいのか分からず震えている。その時、敵軍の攻撃がマギウスの火球に命中した。
「あ…」
火球は暴発しマギウス達を巻き込んだ。敵軍は一気に進行してくる。なんとか暴発から免れた兵士達がマギウス達を担いで退却した。
進行は失敗。多くの被害を出し敗走した報せを聞いたゲリュガは急いで進行を止め戻った。戻ると負傷した兵士達がベッドに横たわっていた。
「これは…」
ゲリュガとカインが驚いているとザドリノフ王とドーバが来た。
「マギウスが命令を無視し攻撃を行わなかったため起きた悲劇だ。」
「ふざけるな!元々マギウスは戦争すら知らない少年だ!軍人でもない彼に殺せなど命令したのか!」
ゲリュガがドーバに詰め寄る。襟を掴むもドーバはすぐに払った。
「お前のやり方じゃいつまで経っても戦争は終わらない。戦争を終わらせるには圧倒的な力を見せつけるのが最速で1番被害が出ないのだ。」
「その結果がこれだろうが!」
「これはその力を持ちながら一切使おうとしないマギウスの責任だ。」
その言葉にキレたゲリュガはドーバを殴り飛ばした。さらに追撃しようとするゲリュガを他の兵士達が止めた。
「落ち着いてください!」
「マギウスはどこだ!」
「彼は重体だ。今、異世界の最新医療技術で治療している。」
「今すぐ合わせろ!」
「それは無理だ。」
ザドリノフ王はドーバを連れてその場を去る。2人は城の地下に続く階段を降りる。その先に扉がある。ザドリノフ王が扉を開けると研究施設みたいな設備がズラリと並べられていた。その奥に眠っているマギウスがいた。液体が満たされたカプセルの中に入っていて全身に管が繋がれている。
「カイン殿の世界には面白い物がありますな。」
「そうだ。今のマギウスは役に立たない。ならばあらゆるモンスターを合わせ強固な身体にする。さらに、問題の優しさを洗脳で消せば私に忠実な無慈悲で最強の戦士が産まれる。」
「さすがですザドリノフ王。」
2人は不気味に笑う。夢宮は2人を見て唖然とする。すると、眠っているマギウスの身体に異変が起きた。




