異世界から来た勇者
戦争は続く。開戦からもう数年は経っているとゲリュガが言った。あとどれぐらい続くのか…いつ終わるのか…分からない戦争に多くの人が疲弊していた。マギウスはそんな人達を癒やしている。
「大丈夫ですか?」
「ああ。ありがとう。」
治療やカウンセリングをしているマギウスをゲリュガが窓から覗いていた。そこに兵士が何か報告しに来た。報告を聞いたゲリュガはすぐに大通りに向かった。
一方、マギウスも周りが慌ただしくしている兵士達が気になっていた。おそるおそる兵士の1人に聞いてみる。
「あの、何かあったのですか?」
「勇者カインが戻ってくるんだ。」
「勇者?」
気になったマギウスは兵士達と一緒に大通りに向かう。大通りでは勇者の帰還で賑わっていた。マギウスが民衆の間をぬって顔を出す。すると、兵士達の先頭にいたゲリュガがが若い男と握手していた。どうやら彼が勇者カインらしい。彼の後ろにはいろんな種族の女の子達もいる。ゲリュガがカイン達を連れて城に戻っていく。マギウスも後を着けて城に向かう。
城に戻りしばらくするとゲリュガと会うことが出来た。マギウスは気になっていたのでカインのことをゲリュガに聞く。
「あいつはカイン•ライラー。グランバレス帝国有数の貴族の7男で確か日本という国から転生したとか言っていたな。」
日本…初めて聞く国にマギウスはワクワクしている。それと同時に夢宮は自分と同じ転生者がこの世界にもいたことに驚いていた。
ゲリュガがカインのことをマギウスに話しているとゲリュガの後ろから彼を呼ぶ声が聞こえた。ゲリュガが振り向きマギウスが覗くとカインとその仲間達がいた。
「ゲリュガさん、その人は?」
「マギウス•フィナーレ。徴兵された優しい少年だ。」
「マ、マギウス•フィナーレです!よろしくお願いします!」
「カイン•ライラーだ。彼女は…」
「聖女アンヌ•レベリオンです。」
「武闘家のミコット•ミケロだよ!」
「魔導師リーベリー•トライオンよ。」
「ハルスタシア•マイクロウト。」
カインに続き金髪のアンヌ、熊耳のミコット、眼鏡をかけたリーベリー、弓矢を持っているエルフのハルスタシアが自己紹介してくれた。マギウスはみんなにお辞儀する。
「ゲリュガさん、次の遠征には俺達も同行します。」
「そうか。」
ゲリュガは頷くとカイン達に別れを言ってどこかへと去っていく。マギウスはカインのことが気になっていろいろと質問していた。
「日本ってどんな国ですか?」
「そうだなぁ…魔法はないけど技術がある国。魔法無しで遠くの人とも会話できるし空も飛べる。」
「凄い…」
「そして、こういうのもある。」
カインはそう言って何かを取り出してマギウスに見せた。
「それは?」
「拳銃と言うんだ。この世界には存在しない武器さ。」
カインは拳銃を仕舞う。
「カインさんって日本から来たって言ってましたけどどうやって来たんですか?」
「確か…トラックに轢かれて気付いたら女神と契約してカインという名前でこの世界に転生したんだ。」
カインに言われてもよく分からない。
「日本では勝地誠太郎って名前で高校生をしていた。」
やっぱり分からない。だからこそもっと知りたい。もっと日本を知りたいという感情、知識欲が出てきた。もっともっと質問しようとした時、兵士の1人がやってきた。
「カイン様、明日シゲリア平原へ遠征することになりました。」
「分かった。」
カインはマギウスにお別れを言って兵士と一緒に会議室へと向かって行った。
会議室では明日の遠征に向けて作戦会議が行われている。そこではカインが他の将軍達と一緒に作戦を立てている。その場にはゲリュガもいる。
「ここはこのように広い平野となっています。しかも、両脇には隠れやすい森もあり奇襲される恐れがあります。」
地図を開き状況を説明する。
「では、ここを囮部隊が突っ切り襲ってきた敵兵を両脇に潜めていた奇襲部隊で挟み撃ちにする作戦はどうでしょう。」
「おぉー!」
「さすが勇者。」
「思い付きませんでした。」
(思い付け。)
カインの作戦に感嘆する将軍達を見てゲリュガが呆れる。
(勝ち続けるとこうも思考力が衰えるものなのか。)
ゲリュガが呆れている間も作戦会議は続く。
「問題はその囮部隊を誰が引き受けるのか?」
「私も部隊では力不足でしょう。」
「私も奇襲を得意としているので役に立てるかどうか。」
「なら俺が行く。」
屁っ放り腰の将軍達にため息をついたゲリュガが前に出て申し出た。
「おぉ!」
「ゲリュガ将軍なら安心ですな。」
「是非頼みますぞ。」
(保身しか考えてないな。)
ゲリュガが頷く。そこからもカイン主導で作戦会議が進み明日に備えて休むことになった。ゲリュガは一休みする前にマギウスに会いに行く。マギウスの部屋に行く途中で偶然マギウスと会えた。
「ゲリュガさん!」
「マギウス、丁度いい。明日、君も来てくれ。」
「は、はい。」
マギウスは頷いて了承する。
そして、翌日…




