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怪奇シリーズ 雪女は恋をする

 ここはジャンバラ大陸の南にあるリゾート地セイシュン。そこは常夏の街でいつも観光客で賑わっている…はずだった。

「あ、あれ?」

 ホテルから外を見ていた堀垣、天谷、エルシアナは吹雪に見舞われているセイシュンに呆然としていた。

 タイタンホークの修理中、エルシアナが行きたいと言うので着いて行ったら突然吹雪が襲ってきたのだ。

「な、ななな…何故ですか!?何故いきなり南国がこんなことになっているのですか!?」

 期待していた分凄いがっかりしてしまったエルシアナはロビーでへたり込んでしまった。他の人達も同じようでがっかりしている。

「もしかして、これも怪獣の仕業…とか?」

 天谷がボソッ喋る。その言葉を聞いたエルシアナはゆっくり立ち上がると目をメラメラ燃やし握り拳を作った。

「そうです!きっとそうですよ!許せません!」

「エルシアナさんってもっと落ち着いた女性だと思っていたんですが…」

 エルシアナに若干引いている堀垣と天谷を連れてエルシアナは怪獣捜索に向かった。しかし、猛吹雪で前が見えないうえに凄く寒い。エルシアナが寒さ耐性を上げる魔法を付与してくれたがそれでも寒い。エルシアナが索敵魔法をしているが吹雪が邪魔で見つからない。

「あ、あの…闇雲に探しても見つからないといいますか私達が遭難しそうなんですけど。」

「そ、そうよね。探し方変えましょ。」

「こういうのって吹雪の中心に怪獣がいるのが定石かと…」

「それよ!」

 エルシアナは2人を連れて風魔法で空へ飛ぶ。吹雪から抜け出すと台風のようになっているのが確認出来た。その中心を見つけるとそこに突撃した。そこには洞窟があった。レジャースポットにもなっているようで案内板があるが倒れていた。3人はおそるおそる中へ入る。エルシアナが索敵魔法を使うと奥に誰かいるのが分かった。そのまま進む。すると、奥から女性の泣き声が聞こえてきた。

「だ、誰か泣いてますよ。」

「こ、怖くてこれ以上無理です。」

「で、でも怪獣に襲われている人かもしれないから…」

 3人は震えながら進む。すると、広い場所の一番奥に着物姿の怪獣がいた。怪獣の前には凍った男性の死体がある。3人は怖がって止まってしまうがエルシアナが意を決して飛び出した。

「あなたね!街を吹雪で覆ったのは!」

 怪獣がこちらを向く。キュアリアスに似たタイプで怪獣だけど凄い美人だというのが分かる。その怪獣が泣いていた。なんか気まずいと思ったエルシアナは言葉に詰まる。

「な、何かあったのかな?」

「•••私は何故このような姿になったのでしょうか?」

「え?」

「私は何故幸男さんを殺してしまったのでしょうか?」

 怪獣は泣きながら質問してきた。

「も、もしかして日本人?」

 後ろから堀垣が聞くと怪獣は頷いた。

「ねぇ、もしかしてあの人もグランウィザードに連れて来られ怪獣化した人なのかも。」

 天谷が2人に考察を話す。2人はそれに納得した。

「大丈夫よ。それなら私達が…」

「いや、来ないで…」

「え?」

「幸男さんの居ない世界なんていや!」

 怪獣は威嚇するように口から青い光線を吐いた。光線は命中したところから凍らせていく。

「落ち着いて!」

「いや!愛した幸男さんを殺してしまったの!もう私は私がいや!」

「それはあなたが悪いんじゃない!全部グランウィザードのせいなんだ!」

「全然分からない!」

 怪獣は暴れ周りに冷凍光線を放ちまくる。そこに堀垣が土魔法で壁を作りながら近付いた。

「僕の友達も怪獣になった!だけど諦めず頑張ったら人間になれたんだ!」

「え…」

「きっと大丈夫!僕達が君をなんとかして見せる!それにそんなことしても多分その幸男さん…は悲しむだけだよ。」

 堀垣の説得で怪獣は攻撃を止めた。それと同時に泣くのも止めた。ウルウルした目で堀垣を見る。堀垣が手を差し伸べる。怪獣がその手を掴んだ瞬間、洞窟に警官隊が突入した。

「動くな!」

 ビックリした3人が振り返る。

「お前達か。セイシュンを吹雪で襲ったのは?」

「違います!」

「私達はWISHという対怪獣組織です。」

 エルシアナがWISHの名刺カードを警官隊のリーダーに見せる。リーダーも納得してくれたようでエルシアナ達にライフルを向けないようにしたが怪獣にライフルを向けた。

「じゃあその怪獣は?」

「こ、この怪獣は…」

 エルシアナが口を噤む。事実、セイシュンを覆っていた吹雪は彼女が出したのもだ。しかし、悪意があるわけではない。それを全て正直に言うべきかどうか悩んでいた。

「彼女は僕達と同じようにこの世界に召喚され怪獣にされてしまった人です。」

 すると、堀垣が答えた。それから堀垣が正直に話した。

「なるほど。言いたいことは分かった。が、その怪獣が起こした吹雪でセイシュンはかなりの経済ダメージを負った。その責任はとってもらう。」

「そんな…」

 堀垣は警官隊に対して強く反発出来なかった。実際彼女が起こした吹雪でセイシュンはかなりの被害を受けた。警官隊が彼女を捕らえようとする。すると、天谷が警官隊の前にきた。

「で、では私達がその責任を代わりに持つというのはどうでしょう!?」

「ん?君達が?」

「は、はい。私達は怪獣保護もしています。なので彼女を見るとホッとなくて…」

「それはいい案ね。」

 天谷に続いてエルシアナもやってきた。

「彼女は怪獣化された被害者。さっきの吹雪だって悪意があってやっていたわけじゃない。それを知ったらこのまま処罰なんて可哀想じゃない。だから、彼女の責任は保護する私達が持つでどうかしら?」

 リーダーは少し考えるとスマホを取り出してどこかに電話した。電話が終わると再びこちらに来た。

「君達の案を採用する。」

「本当ですか!?」

「但しあの怪獣はこちらで収容する。正式な処罰が決まり次第WISHに連絡しよう。」

 そう言ってリーダーは怪獣を連れて行く。不安そうな怪獣にエルシアナが肩を掴んで励ます。

「大丈夫よ。私達が必ずあなたを元に戻すわ。」

「あ、ありがとう。」

「そういえば名前まだだったわね。私はエルシアナ。彼女は天谷マドカちゃんで彼が堀垣哲平君よ。」

「コユキ、姫凪恋雪。」

「恋雪ちゃんね。あ、彼もお願いできるかしら?恋雪ちゃんの彼氏なの。」

「分かった。」

 警官隊はコユキと幸男の死体を洞窟の外へと運んで行く。3人も後から洞窟を出るともう雪すら残ってなく常夏のリゾート地になっていた。

「まだグランウィザードの実験は続いているのね。」

「早く止めないと。」

 心に固く誓う3人であった。

今回恋した怪獣


怪獣名 コユキ

別名 悲恋怪獣

全長 1.6m

体重 60kg

特徴

 日本から召喚された姫凪恋雪という女性が怪獣化した姿。着物姿に艶やかな黒髪と大和撫子を彷彿とさせる美人怪獣。

 錯乱した際に恋人である中山幸男を殺してしまった罪悪感で泣き続けている。泣いている間は広範囲に猛吹雪を発生させる。口から吐く冷気光線《絶対零度凍結咆》が武器。

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