疾風の貴公子
WISHは綾宮市に着いた。綾宮市は面積は高知市とほぼ同じ、人口は約35万人。市民の約8割が日本からの転移者である。
WISHは空港に到着すると必要物資の調達班と例の操縦士を探す班に別れた。
調達班
佐古水、礼崎、姫樹、山瀬、堀垣、エメラナ、小石川、橘、アリス
捜索班
ウルトラレックス、キュアリアス、日比野、空咲、朝比奈、郷田、南、ラフィ
ちなみに、中島先生、天谷、飛鳥崎、舞沢、ベルッドはタイタンホークでお留守番していた。
捜索班はラフィに連れてもらってある飛行場に向かった。
そこには耳の尖っている男が出迎えてくれた。
「あれ、もしかしてエルフか。」
「えぇ、そうですよ。」
「女が良かった。」
「郷田、失礼だろ。」
郷田を叩いた日比野はエルフの男に謝った。エルフの男も笑って許した後、みんなを案内した。案内されていると滑走路に着いた。
「ここにその人がいるの?」
「はい。名前は新庄ジョージ。元F-1レーサーって言ってました。」
空咲の質問にエルフが答えた。すると、滑走路に小さくて肌が緑色の耳の尖った人間型生物が10人ほど現れた。
それに郷田が真っ先に反応した。
「おい、あれってゴブリンじゃねぇか。」
「その通りですよ。」
「嘘!ゴブリンって人を襲うモンスターってゲームに出てたんだけど。」
「しかも、女を集中して襲いエロいことする種族で有名だぞ。」
「なんかいや!」
郷田と一緒に南やキュアリアスもゴブリン達から距離を取った。
「あぁ、昔はそうみたいですけど今は普通に私達と一緒に過ごしていますよ。」
「え?」
郷田達がゴブリンを見ているとゴブリン達は後からきたエルフ達とも仲良くしているみたいだった。
「つまり、変な偏見はやめようってわけだ。」
「そうだな。ここじゃ今までの常識が通用しねぇみたいだしな。」
日比野達が見ていると轟音と共に後ろから戦闘機が通り過ぎた。
「あれって!」
「あれは君達がいた地球の戦闘機。制空戦闘機の後継機として、開発された第5世代ジェット戦闘機に分類される世界初のステルス戦闘機。通称、ラプター。」
「マジか。」
通り過ぎた戦闘機をエルフが説明した。その戦闘機の名前はラプター。かつて、アメリカで開発されステルス性の高さなどから世界最高クラスの戦闘能力を持つとされる戦闘機だ。
「そして、ラプターを操縦しているのが新庄ジョージさんだ。」
エルフの言葉に全員が驚いた。ラプターはアクロバットな飛行を続け、操縦士の腕の高さが伺える。
「凄い。」
「あれに新庄って人が乗っているのか。」
「一体どんな人なんでしょうか。」
「意外とイケてる人よ。」
朝比奈が言っていると後ろから一人の女性がやってきた。その女性はレースクイーンみたいな普通のハイレグと比べてかなりの鋭いラインをした格好をしていた。
「・・・」
女子達は顔を真っ赤にして男子達は顔を背けていた。その中でも郷田は真っ先に挨拶した。
「はじめまして。私は郷田快翔。WISHのメンバーとして活動しています。」
「あら、丁寧な挨拶をありがとう。私は風間美桜奈。元の世界じゃグラビアアイドルとかしてたわ。よろしくお願いね。」
風間は郷田と握手した。その郷田をよく見ると鼻血を出して股間あたりが膨らんでいた。
すると、轟音と共にラプターが滑走路に着陸した。ゴブリン達がラプターを誘導し、ラプターが止まると急いで梯子をかけた。
ラプターのコックピットから降りた男がヘルメットを脱いだ。彼を一言でいうならルックスは悪くはないイケメン。
「あの人が新庄ジョージさん?」
「そうよ。」
ラプターから降りた新庄ジョージはウルトラレックス達に気が付くと近づいてきた。
「なんだい、美桜奈?見たことない怪獣がいるじゃねぇか。」
「あら、この子達はあなたを操縦士として勧誘しに来た私達と同じ日本からの転移者よ。」
「へぇ、そこのお二人さんも同じ人間ってことかい?」
「は、はい!夢宮勇輝と言います!怪獣名はウルトラレックスです!」
「わ、私は星雲寺友子って言います!怪獣名はキュアリアスです。」
「ほぅ、二人ともいい名前じゃん。」
「あ、ありがとうございます。」
新庄に褒められた二人は顔を赤くしていた。
「それで、俺を操縦士として雇いに来たと?」
「はい。どうか、お願いします。」
「俺を雇いにくるのはいい判断だ。だけど、今は考えさせてくれ。とりあえず、イエスという方針で考えておくよ。」
「ありがとうございます。」
お辞儀してお願いする日比野に新庄は軽く答えた。その後、ゴブリンに呼ばれてラプターの格納庫に向かった。
「それにしても凄い技術ですね。」
「えぇ、新庄君は父親が旅客機の機長、兄が航空自衛隊だからああいうのに興味を持ったみたい。元いた世界じゃ疾風の貴公子なんて呼ばれているみたいよ。」
「疾風の貴公子って。」
「風間さんは新庄さんと知り合いなんですか?」
「違うわ。元々、私達は違う地球にいたの。それが偶然にもここで出会った。これも運命ね。」
新庄を見る風間の表情はいかにも恋する乙女だった。それを見た郷田はそーっと離れた。
「何やってるの?」
「いや、俺じゃあの人に勝てないなぁと思ってな。」
空咲に聞かれた郷田は風間の表情を遠い目をして見ながらそう答えた。
「とりあえず、タイタンホークに戻ろう。」
「分かりました。」
こうして、日比野達はタイタンホークに戻った。




